国際協力機構年報 2008
2008年前半は、5月に第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)、7月にG8北海道洞爺湖サミットの2つの重要な国際会議が日本で開催され、アフリカ支援や気候変動問題、原油・食料価格高騰などの国際社会が共同して対処しなければならない課題が話し合われました。
アフリカは近年5%を超える経済成長の一方で、依然として貧困問題や、HIV/エイズ、マラリア等の感染症、教育や保健衛生、水へのアクセスなど深刻な課題を抱えています。
2015年までに世界の貧困削減などをめざす国際社会の共通目標「ミレニアム開発目標(MDGs)」は、今年その中間年にあたりますが、妊産婦死亡率や感染症の蔓延など目標達成が危ぶまれ、アフリカ諸国自身のオーナーシップと国際社会のパートナーシップのもと、一層の取り組み強化が必要とされています。
「元気なアフリカ」をいかに発展させていくか。JICAは、経済成長を支える広域インフラへの支援、科学技術分野の人材育成、米をはじめとする農業生産性の向上、民間セクターの大きな役割に注目した官民連携の促進とともに、「人間の安全保障」の視点からのコミュニティ開発と人々の能力向上のため、教育、保健衛生、水の確保などを包括的に捉えたクロスセクトラルなアプローチを重視し、紛争の予防、復興・開発から成長の加速化まで切れ目のない支援を目指していきます。
洞爺湖サミットで主要なテーマとなった気候変動に代表される地球環境問題は、21世紀に私たちが直面する最大の課題のひとつです。開発途上国の人々にとって、わずかな環境の変化も深刻な脅威となります。
JICAは、2007年12月に「気候変動対策室」を立ち上げ、温室効果ガスの削減と持続可能な開発とを両立させる「緩和策」、そして、避けられない気候変動の影響に対処していくための「適応策」について途上国支援を強化していくこととしています。
優れた日本の技術、制度、環境への高い意識といった日本が持つ優位性を最大限に活用し、自然環境保全、必要な制度の構築や人材育成など包括的な協力で途上国の社会造りに貢献していきたいと考えています。
今年5月、未曾有の被害をもたらしたミャンマーのサイクロンや中国四川大地震に対してJICAは援助物資の供与と国際緊急援助隊を派遣しました。このような世界各地で起こる大規模自然災害への支援もJICAの重要な任務です。引き続き迅速な援助とともに、我が国の防災対策に関する豊富な経験の蓄積を活用した協力に取り組んでいきます。
2008年は、JICAにとって、そして日本のODAの歴史にとって重要な意味をもつ年です。国際協力機構法の改正を受け、いよいよ今年10月1日には新JICAとして生まれ変わることとなりました。
これまで実施してきた技術協力に加え、無償資金協力の一部、円借款事業を一体的に担うこととなり、二国間援助機関としては世界有数規模の実施機関となります。
開発途上国にとっては援助の相談窓口がひとつになるとともに、新JICAとしては在外事務所による現地ニーズの把握に基づき、国毎の中期的な協力方針、事業展開計画を作成し、より迅速にかつ包括的に3つの援助手法の相乗効果を発現・展開させていくことが可能になります。
また、本来業務となった研究活動を推進し、紛争予防、アジアの成長経験、アフリカ開発戦略などについて、これまでの開発協力の現場の経験もふまえた研究と発信を強化していく予定です。
新JICAは、現場のニーズに対応した不断の改革を行いながら、世界第2位の経済大国にふさわしい国際貢献の一翼を担う存在として、国際社会からの期待に十分応え、すべての人々が恩恵を受けるダイナミックな開発を進める努力をしていく所存です。
本書は2007年度の活動内容をまとめたものです。2007年度も多様化する開発途上国のニーズに応えながら幅広い開発課題に取り組み、並行して新JICA設立の準備を一丸となって進めてきた年でした。ハンガリー、ポーランドがJICAの協力を卒業した一方、スーダンやコンゴ民主共和国へ事務所を開設するなど現場の実施体制を強化し、リベリアへの援助も再開しました。青年海外協力隊員の派遣が累計で3万人を突破し、シニア海外ボランティア事業への関心も高まっています。
相互依存関係が一層深まっている今日、開発途上国の問題は私たちの生活にも直結する問題でもあります。次代を担う若い世代が積極的に国際協力に参加し、また熟年世代が培った豊富な経験を途上国の開発に活用していく、そのような国民参加型の国際協力を皆様のご理解、ご協力をいただきながら促進し、開発途上地域の人々がよりよい生活を送れるよう平和で豊かな世界の実現に向けた取り組みを続けてまいります。
本書を通じて、JICA事業に対する皆様のご理解がさらに深まることを願っております。
2008年9月
独立行政法人 国際協力機構(JICA)
理事長
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