JICAの取り組み

JICAの基本方針

農業・農村開発の協力は、農村部と都市部双方の住民への食料供給の安定と農村貧困の削減、それらを通じた国や地域の経済発展を目的としており、MDGsおよびSDGsの達成に貢献するものです。

このため、JICAでは具体的な協力目標として、次の3点に取り組んでいます。

1. 持続可能な農業生産

近年の食料供給に関するリスクは、天候不順による不作やこれらを契機とした投機などの短期的要因と、新興国の人口増と需要構造の変化、土地や水といった生産資源の制約、気候変動に対する脆弱性、バイオ燃料需要拡大と食料の競合などの長期的要因が複雑に絡み合うなかで発生しています。対処にあたっては、地域ごとに異なる状況を踏まえ、それぞれの原因に即した対応を検討する必要があり、JICAは持続可能な農業生産を目指しています。

持続可能な農業生産に向けたアプローチとして、対象国の農業セクター全体の特徴に即した農業政策の立案を支援しています。この政策に基づき、灌漑施設などの生産基盤の整備・維持・保全・管理、種子・肥料などの農業生産資材の確保と利用の改善、穀物や家畜などの生産技術の確立と普及、組織強化などの農業経営の改善、生産から加工・流通・販売を含めたバリューチェーン全体を視野に入れた協力に取り組んでいます。

また、持続的な土地利用の促進、適正技術の開発・研究、民間セクターの参入促進、食料生産と競合しない第二世代バイオマスエネルギーの開発、備蓄体制・農業統計・天候保険の活用など、気候変動に対する強靭性強化への支援も行っています。

例えば、ミャンマーでは、農家の生産性・収益性の向上のために、円借款による灌漑整備を行うとともに、灌漑農業振興のための政策・制度の整備、灌漑用水を利用した主要作物の生産技術の改善、農業機械・農業資材の適切な導入と運用、民間セクターとの連携促進に関する包括的な協力を実施するべく準備中です。

さらには、途上国の国民の所得の向上に伴って、高付加価値の農産物、畜産製品の需要の拡大、食料の品質や安全への関心の高まりなどがあり、これらへの対応も期待されています。

2. 安定した食料供給

国民への安定した食料供給のためには、持続可能な生産を前提として、国際的な食料安全保障を視野に入れた国全体の食料需給政策の策定と、輸入体制の整備、援助食料の適正な利用などを図る必要があります。

アフリカは、世界でも栄養不足に苦しむ人々の割合が最も高く(2011年時点で栄養不足人口の割合が35%)、食料増産の必要性が極めて高い地域です。コメはアフリカで消費量が急増していることに加え、今後の持続可能な生産増が期待でき、アフリカの食料不足解消の鍵となるものと考えられています。

JICAは2008年に「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」イニシアティブを他ドナーと共に立ち上げました。食料安全保障に貢献するべく、10年後の2018年までにアフリカのコメ生産を1,400万トンから2,800万トンに倍増する目標の達成に向けて、CARD参加国(23カ国)の国家稲作振興戦略の策定を支援し、各国の戦略に沿ってコメの増産支援を行っています。CARD参加国を含むサブサハラ・アフリカ全体では、1,400万トン(基準年)から2,223万トン(2013年)と59%の増産を達成しました。

3. 活力ある農村の振興

【画像】

農家自身による市場調査の様子(ケニア)

貧困問題に向けた農村開発では、農業生産の拡大や食料の安定した供給を基盤として、農村経済の発展と人々の生活レベル向上の観点から、農村社会の変化、農村の振興を目指すことが重要です。このためには、生産性向上だけでなく、食料の流通販売の改善、農産品加工業の振興、輸出促進策の強化、農外所得の向上などの農家経営の改善が必要です。

さらに、地方行政機能の強化、生活道路や飲料水確保など、農村生活インフラの整備、農村生活環境の改善、住民の保健・教育水準の向上、参加型農村開発、ジェンダーなど、多様な分野での支援を組み合わせることが必要となります。

また、紛争後の復興を目指す国では農業・農村開発が重要な場合が多く、優先的に取り組んでいます。

JICAでは、農村振興の取り組みとして、地方行政機関が農村住民の参加を得ながら開発計画を策定していく仕組みづくりへの支援や、農村コミュニティが収入向上や生活改善の取り組みを行うための実施体制の構築、農産物の加工・流通と販売の改善などを通じた農家の生計向上を支援しています。

例えば、小農への生計向上支援として、ケニアで実施した技術協力プロジェクト「小規模園芸農民組織強化計画(SHEP)」(2006〜2009)およびその後継案件(SHEP UP、2010〜2015)では、換金作物の導入を図る農家に「作ってから売る」から、「売るために作る」というビジネスとしての農業への意識変革を起こしました。農家自らが市場志向型農業を実践するための各種支援活動(SHEPアプローチ)を行った結果、対象農家の園芸所得向上という成果が上がっています。このSHEPアプローチの有効性は米国国際開発庁(USAID)などの他ドナーからも認められ、2013年の第5回アフリカ開発会議(TICADV)開会式において安倍首相のスピーチでも取り上げられました。これを受け、JICAはこのアプローチのアフリカ地域での面的な展開を優先課題として取り組んでいます(2015年6月現在、18カ国に展開中)。なお、ケニアでは、2015年3月より第3フェーズが開始され、地方分権化という国内体制の変更を踏まえたSHEPアプローチの改善と推進、SHEPアプローチのアフリカ広域展開への支援を行っています。