所長あいさつ

アルゼンチンは、日本から地理的には遠い国ですが、実質的な二国間関係は、必ずしもそうではありません。130年以上にも及ぶ日本人移住の歴史を背景に中南米第3位の規模とされる日系社会が形成されており、日系人の方々は、農業、商業他、様々な分野でご活躍されています。日系社会による「日本文化の発信」は、当国での対日理解をより深めたばかりか、先人の方々は、「日本に対する信頼感の定着」という何ものにも代えがたい素晴らしい功績を残されました。

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当国でのJICAの協力においても、その関係の深さを感じざるを得ません。例えば、日本人移住者への技術支援を目的に1977年に設置されたJICAの旧園芸総合試験場は、役割を終えた2004年にアルゼンチン政府に移管され、現在では、本邦企業とも連携しながら国立農牧技術院(INTA)花卉研究所として育種開発や生物多様性への取り組みをけん引しています。

また、JICAも参画して当国での養殖技術を確立した「日亜友好の魚:ぺへレイ」は、現在もチャスコムスの国立技術研究所が核となり、研究を深化させており、今日に至るまで我が国の大学と協力関係が維持されています。

国立ラプラタ大学獣医学部や国立工業技術院(INTI)は、30年以上に亘るJICAとの協力関係をベースにしつつ、前者は、新型コロナウイルス感染症とも関係の深い人獣共通感染症対策、後者は、「KAIZEN」に代表される経営管理手法の普及における地域の拠点となっています。そしてこれまでの協力成果は、日亜パートナーシップ・プログラムを通じた近隣諸国の人材育成という形で還元されています。最近では、「一村一品プロジェクト」による地方経済の活性化でも関係機関により熱心な取り組みが行われています。

この他、新たに始まる「JICAチェア」と称する国立ラプラタ大学における日本研究講座の拡充支援や当国での新型コロナウイルス対応支援等についても、私たちは積極的に取り組んでいるところです。
今日の日系社会に目を転ずれば、従来の支援に加え、ビジネス界での若手日系人材の活躍や周辺国とのネットワーク拡充、日系バイリンガル校における日本文化専修の短大部設立等、日本との連携強化という点で新たな可能性がさらに広がっています。
ボランティアについても、各機関からこれまでも高い評価をいただいており、対ア協力においても重要な役割を果たしてきました。現在は、厳しい状況にありますが、活動環境が改善次第、再派遣を検討したいと考えます。

私にとってアルゼンチンという国は、過去に在勤経験があり、非常になじみのある国ですが、新たな環境で再度様々なことに挑戦する機会を戴いたことを非常に有難く思います。今日、私たちは、コロナ禍で大変困難な状況下にありますが、皆様のお知恵、お力をお借りしながら、事務所員、関係者一丸となってこの状況を乗り越え、日本とアルゼンチンの絆をさらに強くして参りたいと思います。皆様のご支援とご理解を何卒よろしくお願いします。

アルゼンチン支所
支所長 武田 浩幸