所長あいさつ

JICAベナン支所長 青木 利道 挨拶

ベナン共和国は西アフリカのギニア湾に面し、東は1.9億の人口を擁すナイジェリア、北はニジェールとブルキナファソ、西はトーゴに隣接する縦に長い国です。面積は日本の約3分の1、人口は1149万人(2018年世銀)、フランス語を公用語とし、国民一人当たりのGNIは1,250USドル(2019年世銀)、人間開発指標は世界189カ国中163位(2019年UNDP)の開発途上国です。

主な産業は農業と港湾サービス業で、農業は綿花やカシューナッツの栽培が主力ですが、いずれも国内加工率が少ないため付加価値を享受できていません。港湾サービス業は国内向けよりもコトヌ港を介した中継貿易の形態が主流となっており、主な再輸出先は隣接するニジェール及びナイジェリアで、域内市場への物流のチャネルとして重要な位置を占めています。

【画像】

他方、ベナンは不安定な国が多い西アフリカにおいて、1991年以降、民主的な大統領選挙により平和裏に政権交代が行われており、民主化のモデル国としての評価を得ています。また、誠実で温和な国民が多く、日本の外交政策を支持する親日国でもあります。

2016年3月に当選した実業家のタロン大統領は、同年10月、今後5年間の政府方針として「政府行動計画(PAG:2016~2021年)」を発表。「民主主義・法の支配・グッドガバナンスの定着」、「経済の構造改革」、「国民の生活環境の改善」を3本柱とする政策を掲げ、その後矢継ぎ早に、開発の基礎となる汚職対策、行財政改革、ビジネス環境整備に係る施策を打ち出すとともに、同行動計画の具現化を積極的に進めてきました。同大統領は2021年4月に再選され、これら施策の継続とともに道路など公共インフラの整備、都市開発、保健医療、エネルギー開発、安全な水などを重点課題とするとし、「発展は目の前に」を標語としています、

このような状況の中、JICAは1980年以降、保健医療、教育、安全な水、農水産業分野を中心に協力してきており、教育については累計1,060教室の建設、安全な水については累計1,500本に及ぶ飲料水用深井戸を建設するなどの実績があり、先方政府から高い評価を得てきました。タロン政権誕生後は「政府行動計画」に整合する形で、新たに経済インフラ分野についても支援の柱に据えて取り組んでいます。また、2019年8月のTICAD7の日ベナン首脳会談でタロン大統領から、日本企業からの投資促進及び職業訓練を含む教育分野における協力への期待が示されたことを受け、同年11月に日本企業の西アフリカ二か国(トーゴ、ベナン)投資環境視察ミッションを受け入れ、引き続き日本企業のベナン進出を側面支援するとともに、産業人材育成分野の協力を立ち上げつつあります。さらに、2005年に始まった青年海外協力隊員も累計で約330名、ベナンの人々と共に草の根ベースでの活動を続けてきており、日本とは異なる環境下にも関わらず、真摯に活動する姿はベナンの各層から評価されています。

2020年3月からベナンでも新型コロナウィルスの感染拡大が始まり、専門家や青年海外協力隊員が全員一時帰国している状況ではありますが、コロナ禍においてもICT技術を活用した遠隔での協力等の事業継続の工夫を行い、引き続き、最大限の成果を発揮し、ベナンの発展に貢献できるよう努めてまいりますので、よろしくお願いいたします。

JICAベナン支所長
青木 利道