【教師海外研修 派遣後研修】ラオスでの学びを教室でどう活かすか

2019年9月13日

海外研修を通じて改めて考える「開発教育」

「開発教育」とはなにか、改めて考える

グループディスカッションの報告をする参加教員

日時:2019年8月31日(土)から9月1日(日)
場所:岡山県国際交流センター 会議室 

 ラオスでの現地研修を終えて2週間後のこの日、教師海外研修に参加した12名の先生を対象に派遣後研修を実施しました。帰国後すぐに慌ただしい日常に戻った先生方に、もう一度ラオスで抱いた想いや考えたことを整理してもらい、改めて開発教育や参加型学習の意義を学び直し、意見交換を行いながら今後の授業計画や指導案を作ってもらうことが、この2日間の大きなねらいです。
 1日目の始めは、ラオスにもご同行頂いた川崎医療福祉大学の山中信幸教授の進行によるアクティビティ「部屋の四隅」からスタート。「現地に行ってJICA事業について印象が変わったか」という問いに、「すごく変わった」「少し変わった」「あまり変わらなかった」「全く印象は変わらない」の4つの回答ごとに部屋の四隅に分かれました。印象が変わった先生からは「現地に行く前はJICAや国際協力は『してあげている』というイメージが強かったが、『一緒にやっている』んだと知った」「青年海外協力隊員をはじめ、現地で活動する当事者が困難にぶつかって克服しようともがいていることが出発前には想像できなかった」といったコメントが出されました。
 その後、6月の派遣前研修でも考えた「開発教育」について、ラオスでの学びをふまえて再度考えていきました。派遣前研修時に作成した模造紙を見直し、参加者自身の中で起こった変容や国際協力の現場で感じた様々なことから、改めて開発教育とはなにか、現地で学んだことを日本の学校現場で還元することの意味やねらいについて議論していきました。今年度参加の先生方は地域はもちろん、校種や担当教科も多様で、教員経験も2年目の方から教育行政を経験したベテランまで幅広く、参加者の間で学ぶものもとても大きいようです。活発な意見が飛び交い、議論は尽きませんでした。

過年度参加者と考える「授業案」と「教材」

2018年度教師海外研修参加の川上典剛先生

2017年度教師海外研修参加の越智由香先生

 午後には教師海外研修の過年度参加教員2名が、自身の授業実践やその後の活動について発表を行いました。山口県下関市立江浦小学校の川上典剛教諭は、2018年度の研修でスリランカを訪問し、自分が体験したコミュニケーションの難しさとそれを克服した喜びについて授業を行いました。実際に作成した掲示物を示しながら、授業計画を考える上で苦労した点、迷ったこと、実際の子どもの反応や課題などを分かりやすく話してくれました。愛媛県立土居高等学校の越智由香教諭は、授業のみならず、帰国後に生徒とともに行った様々な取り組みや継続的に開催している勉強会、立ち上げにも関わった四国の教員ネットワークについても紹介してくれました。発表内容の素晴らしさはもちろん、なにより教員自らが楽しみながら授業や活動を展開している様子が、12名の先生方に元気を与えてくれたようでした。

 2日目には「豊かさ」を考えるワークショップを体験しながら、開発途上国と先進国、貧困と発展などについて考えていきました。ラオスで目の当たりにした経済成長とゴミ問題、ラオスののんびりした空気や穏やかな国民性と多国籍企業の進出など、多様なテーマが今も先生方をモヤモヤと悩ませています。たくさんのキーワードや学びの中から、子どもたちに何をどう伝えるのか、何を一緒に考えていきたいのか。ワークショップを通じて日本の暮らしを見直し、私たち自身の価値観を整理しながら、授業で扱うテーマを絞り込んでいきました。
 本研修の最後のふり返りで、ある先生が言いました。「指導案作成はいつも、どんな指摘を受けるだろうと緊張して、決して楽しい作業ではない。ラオス出発前も授業実践のことを考えると正直気が重かった。けれど今は、ラオスでの学びをどうやったら子どもたちに伝えられるか、子どもがどんな反応を示すか、ワクワク感が止まらない。教材や授業をこんなに楽しく考えることができるなんて、教員としてなんて幸せなんだろう」。
 現地研修で感じた想いと国内研修で学んだ理論や手法を、授業と指導案に落とし込んで、先生方は今後たくさんの学びを地域に還元していきます。持続可能な未来を担う日本の子どもたちは、12名の先生たちの成果をどんな表情で受け止めてくれるでしょうか。