所長あいさつ

JICAエジプト事務所長の加藤 健(かとうけん)です。2022年3月にJICAエジプト事務所長として着任いたしました。

「ナイルの水を飲んだものは再びナイルに戻る」との言葉どおり、2000年代初頭に当地で風力発電事業等のインフラストラクチャー整備支援に携わって以来、約20年ぶりに再びエジプト向け支援に参画できることを大変うれしく思います。

日本政府は、従来、中東・アフリカ・ヨーロッパを結ぶ地政学的な要衝に位置するエジプトとの関係を、当該地域の外交上の軸として、政治・経済・文化交流などを通じて、強い絆を築いてきました。

2011年以降、アラブの春に連動した民主化運動に伴い、政情不安や経済停滞といった状況に直面しましたが、2015年、2016年と双方の首脳が往来し、経済・社会発展に加え、教育や人材・文化交流の分野においても協力を深めています。

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JICAによるエジプトへの協力の歴史は同国向けに技術協力を開始した1954年まで遡ります。

これまでの協力の例としては、インフラストラクチャー分野では、スエズ運河橋建設、ザファラーナ風力発電所、アシュート火力発電所建設、カイロ大学小児病院建設、ギザ県やファイユーム県の浄水施設の他、最近では、大エジプト博物館、カイロ地下鉄4号線、ボルグエルアラブ国際空港、ナイル川灌漑水路への灌漑堰建設が挙げられます。

また、教育分野においては、エジプト日本科学技術大学(E-JUST)の設立支援や、エジプト・日本学校(EJS)を中心に日本の「特別活動」の知見を基軸とした教育の質の向上など、基礎教育から技術教育・高等教育に至る広い範囲での協力を行うエジプト日本教育パートナーシップ(EJEP)を推進しています。その他、気候変動や直近の国内食糧生産に向けた農業支援や、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現するための保健・医療分野など様々な分野で協力を進めております。

更には、アフリカや中東諸国を対象に、エジプト政府による当該地域向けの知的協力と協働する形で、第三国研修にも取り組んでいます。

2022年は、エジプトが気候変動枠組条約第27回締約国会議のホストを務める年です。今後もJICAはエジプト政府と協議しながら、気候変動等のグローバル・アジェンダに積極的に取り組み、包摂的・持続的な成長の実現、貧困削減・生活水準の向上、人材育成・公的セクター改革などを通じた協力の深化に努め、エジプトの発展に貢献していきたいと考えておりますので、皆さまのご協力・ご支援を賜りたくよろしくお願い申し上げます。

JICAエジプト事務所長 加藤 健