所長あいさつ

2023年3月18日にJICAガーナ事務所に着任しました。

ガーナに来て数週間が経ちましたが、この間、日本語を流ちょうに話すガーナ人に会う機会が多く大変驚きました。彼らの多くは30年以上前に日本に留学経験のあるガーナ人です。また、縁あって参加した日本語スピーチコンテストでは日本に行ったこともない中学生たちが、一生懸命日本語でスピーチをしている姿に感動しました。他方で、ガーナのために何かやりたい等と高い志を持って日本から来られる若者にもお会いしました。

草の根レベルでの日本とガーナのつながりを感じた瞬間です。アフリカの中でも日本から最も距離の遠い西アフリカに位置するにもかかわらず、これだけ草の根レベルで日本との交流があることに新鮮な驚きと嬉しさを感じました。

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この活発な交流の基盤となっているのは、両国の長年の交流から生まれる強固な信頼関係、そしてもうガーナのお国柄ではないかと思います。

最も知られている日本とガーナの最初の接点は千円札の肖像にもなっている野口英世が黄熱病の研究のためにガーナに来た1927年。実に96年前からガーナ(当時、英領黄金海岸)にて日本人が活躍していたのです。その後1957年3月、ガーナはアフリカで最初に独立を勝ち取り、日本は独立と同時に国交を樹立しています。1962年に経済協力協定が締結されて以降、JICAは60年以上にわたってガーナの国造りを支援し、両国の信頼関係の強化に貢献しています。

ガーナのお国柄として感じることは、1)多様な文化に対する受容力が高いこと、2)民主主義が人々の中に定着していること、3)平和で安定していることです。ガーナの人たちは、外国人に対してアクワバ(ツィ語で「ようこそ」という意味)と温かく迎えてくれます。また、1992年以降自由で公正な選挙が行われ、平和裏な政権交代が実現されています。ガーナは民主主義、自由主義、法の支配という普遍的な価値観を共有する国でもあります。そして、何よりも平和な国です。ガーナは異なる言語を話す民族が70以上存在する多民族国家ですが、民族対立などはあまり聞かれず、異なる民族が共存・調和して存在しています。

そんなガーナを魅力に感じて、多くの日本人が来るのも不思議ではありません。

他方、世界的に感染が広がった新型コロナウィルス、ウクライナ情勢、気候変動等の複合的な危機の影響はガーナでも顕著に表れ、同国の財政状況は悪化し、現在国際通貨基金(IMF)等と債務再編に向けて協議を続けています。また、直近では物価上昇率が昨年比で50%を超え市民の生活にも影響を与えています。

これらの複合的な危機に立ち向かうためには、これまでの伝統的なアプローチだけではなく、民間セクターの力なども取り込み、他の開発機関とも連携しながら、よりイノベーティブなアプローチも活用していく必要があります。

約100年前に野口英世という一人の日本人がガーナの大地を踏み、以降、先人たちがガーナと日本の関係を強化してきました。JICAの活動が100年後のガーナと日本の関係の礎となるよう、先人たちが育んできた信頼関係がより強固なものになるよう、様々な関係者と連携し、知恵を出し合いながら、インパクトのある事業を展開していきたいと考えています。

皆様のご支援・ご協力を賜れれば幸いです。

2023年4月5日
JICAガーナ事務所長 鈴木桃子