「保健分野支援」

内戦終結後、政府の自助努力、国際社会の支援によって人々への医療保健サービスが向上してきていますが、医師や施設、資機材の不足、施設の運営管理、サービスの提供方法などの課題がいまだ多くあります。特に、妊産婦死亡率は10万人中800人近く(日本は6人)で、リベリアは世界でも最も多くの割合で女性が妊娠・出産の際に亡くなる国の1つです。このような状況に対して以下のような協力を行っています。

1)母子病院施設機能の復旧・強化

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母子病院の外観

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専門家による職員対象ワークショップ(5S)

我が国が1982年(紛争前)に無償資金協力によって建設したリベリアの最重要拠点母子病院である「日本・リベリア友好母子病院」は紛争中の破壊や老朽化により、母子病院としての本来の機能を十分に果たすことができなくなりました。同病院は紛争中には一般患者も受け入れる拠点病院として活用されており、紛争後、人口が急増する首都圏において同病院に対する需要は引き続き高くなっています。同病院は、これまでUNFPAなどの国際機関の支援を受けながらも、自助努力で外壁・内壁や天井の破損部分に対する簡単な措置を行っていますが、十分な機能を取り戻せていない状況にありました。

このような現状を踏まえ、我が国としては、急増する人口により高まる同病院へのニーズに対応し、母子病院としての本来の機能を復旧するために、ハード面(施設補修、最低限必要とする機材の供与等)とソフト面(研修等を通じた職員能力向上支援)の両面から協力を行いました。2010年12月に同病院は再開業し、他国に比べて小規模ながら、ベッド数約150、月間外来診療件数約1,600、月間分娩件数約350、月間入院件数約800、月間救急外来件数約500の最高位周産期医療施設として稼働しています。同病院の機能・サービスを向上させるため、ソフト面の協力として医療機材保守管理・病院管理(5S)・母子保健(日本赤十字社と協力)の3分野で専門家を延べ4人派遣しました。

2)研修

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赤ちゃんへの予防接種の改善のためのワークショップで担当者に説明する帰国研修員

JICAが内戦終了後に協力を再開して以来、2007年以降に70人を超える政府・NGO関係者が日本や他の途上国で母子保健、院内感染予防、病院管理、啓発などの分野で研修を受けました。帰国した研修員は研修で学んだ成果を業務やサービスの改善に生かしています。また、JICAはこうした研修員が学んだことを同僚や部下などに伝えて、一緒に業務・サービス改善を図るためのワークショップ開催などを支援し、日本での研修の成果を広めています。

3)首都圏保健情報システム強化支援

首都圏の保健サービス向上への協力として、州保健社会福祉局に対する専門家を通じた職員の能力向上を支援しました。州保健社会福祉局は医療保健施設の活動状況をモニタリングし、その改善に向けた支援を行っていますが、これに対して、モニタリングの強化のためのチェックリスト改訂支援などを実施しました。