自然の恵みを備えたウール
 |
| ヒツジの毛刈り |
ヒツジといえば、ふわふわの毛糸玉、暖かいセーターに、ウールのコート…。乳は牛乳より栄養に富み、バターやチーズの原料になる。その上、羊肉は世界中でもっともポピュラーな食材なのだ。
ヒツジの価値は、何よりもその羊毛である。羊毛を加工したウールは、冬は暖かく、夏は涼しい。水をはじき、汚れにくい。形くずれしにくく、シワになりにくい。そもそも羊毛はヒツジの皮膚が変形してできたもので、生物としての免疫効果があり、抗菌消臭効果が高く、火にも強い。生きている繊維ならではの不思議な特性を備えているのだ。
現在、ヒツジの種類は3000種を超える。主な生産国は、オーストラリアを筆頭に、ロシア、ニュージーランド、中 国、アルゼンチンと続く。日本は、毎年およそ羊毛20万トン、羊肉15万トンを輸入する世界一の輸入国である。
 |
 |
 |
|
糸に紡がれた羊毛は、織ったり、編んだりすることでさまざまな製品に生まれ変わる。直接肌に触れる肌着やセーター、毛布や敷布などの寝具、カーペットにもぴったり
(c) 佐藤浩治
 |
|
 |
|
 |
 |
 |
 |
|
遊牧民は皮で作った袋を水入れやチーズ作りに利用。皮を丸ごと使った浮き袋は中国の黄河を渡るイカダとしても活躍してきた。バグパイプなどの楽器や紙としても使われている
(c) 佐藤浩治
 |
|
 |
|
 |
 |
 |
 |
|
熱帯地方の羊は毛が少なく革製品に向いている。皮は薄く軽いため機能性が高く、様々な製品に姿を変える。人工じん帯に使うことも研究されている

|
|
 |
|
 |
 |
 |
 |
|
羊肉料理の種類は多い。肉だけでなく、腸は羊腸ウィンナーやヨーロッパの伝統的プディングの入れ物にもなる。楽器の弦、テニスラケットのガット、外科手術の縫合糸としても使われてきた

|
|
 |
|
 |
|
|
歴史を変えたヒツジ
 |
| トルコ絨毯を織る女性 |
人間がヒツジを飼いはじめたのは紀元前6500年頃のことらしい。場所は古代メソポタミア文明発祥の地、現在のイラク北部であった。
その後、パレスチナを経てアジア、ヨーロッパ、アフリカに伝わり、15世紀の大航海時代に現在のアメリカやオーストラリアに伝えられた。日本に入ってきたのは江戸時代末期の頃だ。ヒツジにまつわる言い伝えも各地に残っている。ヒツジをめぐる紛争で歴史が変えられたことも珍しくはなかった。
ヒツジに関する歴史的大事件というと、イギリスの繊維産業が産業革命の発端となったことだ。その結果として資本主義が誕生することになった。「資本」という英語のcapitalはラテン語で頭数を意味するcaputが語源である。ヒツジは富を生み、資本や投資家を誕生させ、世界初の銀行を作った立役者でもあるのだ。
 |
 |
 |
|
刈り上げた羊毛(上)は、石鹸とソーダで脂と汚れを取り除く(中)。回収した脂はグリースやラノリンに精製され、潤滑油や化粧品に使われる。
表皮はウロコのようなスケール(下)で覆われ水をはじくが、湿気が高くなるとスケールが開いて湿気を吸収してムレを防ぐ |
|
 |
|
 |
 |
 |
 |
|
フェルトになる羊毛の性質を利用し、マジックのペン先やパッキンとして、またビリヤード台のクロスやピアノの弦をたたくハンマークロスにも使われている

|
|
 |
|
 |
 |
 |
 |
|
天然繊維のため燃え広がることも、熱で溶けることもないので、消防用の防火服にも使われる
|
|
 |
|
 |
羊肉の食べ方いろいろ
 |
| 肉と野菜を何重にも重ねたかたまりを回しながら焼くドネルカバブ。削ぎ切りにして出してくれる |
羊肉でも生後1年未満のラムはやわらかくクセがない。フランス料理では高級食材だ。2歳以上になるとマトン。マトンを使うジンギスカンは、中国料理の「コウヤンロウ(鍋羊肉)」がルーツで、日本独特の食べ方だ。蒙古の武将チンギス・ハーンが食べたというのが由来である。
牛や豚を食べることを禁じるイスラム教やヒンズー教の国では、羊肉は日常的な食べ物だ。料理の種類も多い。よく知られているのはトルコの代表的な料理のカバブ。カバブは焼くということで、串刺しを意味するシシがつくとシシカバブ、回すという意味のドネルがつくとドネルカバブだ。どちらにしても、焼いた肉なら羊肉をさすのだ。
協力:日本毛織(株)、(株)パシ、(株)日本ホームスパン、トルコ共和国大使館 広報参事官室 |