日本企業にイラクのビジネス環境調査の結果を報告

2013年7月2日

4月の中間報告と同様、100人近くが参加した

JICAは、6月19日、一般財団法人中東協力センター(JCCME)、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)との共催で、東京都内で日本企業を対象にイラクのビジネス環境を紹介するワークショップを開催した。

2003年のイラク戦争終結以降、同国は社会インフラの復旧に努めるとともに、投資法を制定するなど、国内外からの投資誘致に積極的に取り組んできた。高い経済成長率、若年層をターゲットとした消費市場の拡大、膨大なインフラ需要などを背景に、近年では隣国トルコや欧米の企業のみならず、中国企業、韓国企業の進出も目覚ましい。

他方で、流動的で不安定な政治・治安状況、各種制度の未整備などにより、同国への投資リスクは低いとはいいきれない。そのため、海外からの投資は十分ではなく、日本企業の進出に至っては、イラクで商業活動を行う外国企業のわずか1〜2パーセントにとどまっている。イラクの経済基盤の発展と日本企業を含む海外からの投資環境拡充のためには、ビジネスにかかわるリスクを取り除くことが急務となっている。

こうした状況を受け、JICAは2012年12月から、イラクのビジネス環境の課題を明らかにし、その改善に資する新たな支援策の検討を目的とした調査を実施した。今回は、4月に開催した中間報告に続く2度目のワークショップとなる。最終報告と位置づけた今回も、前回同様、メーカー、銀行、コンサルタントなど、幅広い業種の日本企業から100人近くの出席があり、イラクビジネスへの関心の高さがうかがえた。

改善途上にあるビジネス環境

開会のあいさつをする肥沼部長

冒頭、JICA中東・欧州部の肥沼光彦部長があいさつに立ち、「イラクに渡航する日本人の数は2010年から2013年の3年間で10倍近くに増えており、その後押しのためにもビジネス環境の改善が急務となっている。ワークショップ参加者の皆さまからいただくご意見・ご要望を踏まえながら、今後JICAはイラクの投資環境拡充のためにインフラ整備、技術協力などの支援に取り組んでいく」と述べた。

続いて、ジェトロの機械・環境産業部インフラ・プラントビジネス支援課の村上義課長が、インフラ・プラントビジネス支援、イラク関連事業など、同機構の日本企業の海外展開支援の概要を説明した。

その後調査の報告に移った。調査団員が「戦争前の実績から、日本人の仕事はイラクで高く評価されている。イラク側からは、『今すぐ、日本人に戻ってきてほしい。5年後に戻ろうとしてもすでに市場は押さえられてしまう』と言われている」と、イラク側の期待を伝えた上で、イラクの社会・経済状況や法制度、銀行システムについて、調査の結果を報告した。

特に法制度と行政については、一定のフレームワークや制度が確立しているものの、頻繁に法令が変更されること、そうした情報の社会への周知が徹底していないこと、システム化が遅延していることなど、その実効性や人材の能力不足が問題となっていることを指摘した。銀行システムに関しては、資産の約8割を国営銀行が保有している実態や、そうした状況下でも銀行セクターの再編が進んでいることなどを紹介した。そして、総合的にイラクのビジネス環境は改善途上にあり、今後は組織強化や人材育成などの分野で国際社会の支援が必要であると結論づけた。

中小企業が市場参入するための方策も紹介

調査団は、これらの調査報告だけでなく、特別講演として、イラクの一般消費財市場や日常品の市場などの分析結果に加え、日本の技術・製品への高い期待と日本が比較優位性を持つ分野などを紹介し、中小企業が市場参入していくための方策などを提示した。

イラクの文化や人々の人間性にも注目してほしいと述べるアル・バンダル書記官

調査報告を受け、在京イラク大使館のバンダル・アル・バンダル経済担当書記官が「詳細な調査結果は大変興味深く、感銘を受けた」と述べ、さらに「データには表れにくいイラク社会の文化やビジネスパートナーである個々のイラク人の人間性にも注目しながら、ビジネスを進めてほしい」と日本企業への期待を伝えた。

最後に、JICAの市川雅一理事が、「最近北部の治安について報じられているとおり、イラク国内の治安情勢はいまだ流動的ではあるが、イラクが有望な新興市場であることに変わりはなく、JICAはビジネス環境の改善に取り組みながら日本企業のイラク進出を後押ししていく。ワークショップで提供した情報とネットワークを、今後のビジネス展開に生かしていただくことを期待している」と述べ、ワークショップを締めくくった。

【問い合わせ先】JICA中東・欧州部中東第二課 電話:03-5226-6866

【ワークショップ発表資料】