米国アフリカ女性起業家プログラムに日米開発協力の一環として参加

2014年8月27日

JICAは、8月4日から6日にかけて米国ワシントンDCで、米アフリカリーダーズサミット(US-Africa Leaders Summit)に合わせて米国国務省が実施した「米国アフリカ女性起業家プログラム(The U.S. African Women’s Entrepreneurship Program: AWEP)」に、日米開発協力の一環として参加した。

アフリカの女性起業家を日米連携で支援

この連携は、今年4月に来日したバラク・オバマ米国大統領が安倍晋三首相と会談した際にまとめられた「ファクトシート:日米のグローバル及び地域協力 」にも記載されているもので、アフリカの女性起業家を、日米で連携して支援する取り組みの一つだ。

日米両国は、これまでアフリカにおける貿易や投資、開発促進の鍵となるアフリカ女性起業家への支援を強化してきており、今年1月26日〜2月6日に、JICAがアフリカ7ヵ国から14人の女性起業家やその支援を担う政府関係者を招いて実施した「アフリカ女性起業家支援セミナー」では、公開シンポジウムでキャロライン・ケネディ駐日米国大使が基調講演を行うといった日米連携が実現した。今回は、これに続く具体的な成果となる。

「5S・カイゼン」のワークショップ

会場にはアフリカ女性起業家をはじめ多くの関係者が集結

JICAは8月5日、AWEPに参加した女性起業家を対象に「JICAセッション」を開催した。プログラムの第1部では、かつてシニア海外ボランティアとしてヨルダンとエジプトで中小企業の育成に携わった家木(いえき)幸一氏が、品質・生産性向上のための日本型の理念、手法である「5S・カイゼン」に関する体験型ワークショップを行い、日本の知見・経験の共有を図った。

ワークショップでモデレーターを務めたJICAアフリカ部の内藤康司審議役は、冒頭、今年1月に、安倍首相がエチオピアのアディスアベバで行った「アフリカ政策スピーチ」で「カイゼン」を取り上げ、「一人ひとり」の内なる動機に基づく努力を大切にすること、命令などなくても努力する人間「一人ひとり」を、最も貴重な資源と見なすことが日本企業の考え方であり、そうした考えに基づく「カイゼン」が、アフリカの産業開発を通して経済成長の質を高めることに寄与するはずだと述べた。

日本流のやり方そのままではなく、相手目線に立って現地に合った指導を行ってきた家木氏

まず、「カイゼン」の基礎となる「5S」(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の考え方を中心に、家木氏のレクチャーが行われた。その中で家木氏は、自身が考案した「self-grading evaluation table」を紹介。この手法は、作業員がチームを組んで、業務環境改善のための目標を自ら策定し、その達成のための方策を自発的に考えることを促すもので、ヨルダンやエジプトの中小企業の業務環境と生産効率に劇的な変化をもたらした。聴講したアフリカ女性起業家の一人は、「従業員が日常的な改善指示をなかなか行動に移してくれないことが悩みの種。この手法は、どうやって改善していくかを自身で考えて、モニタリングすることを習慣化するものであり、自分の会社でもすぐにでも導入したい」と述べた。

ゲームとはいえ、参加した女性らの表情は真剣そのもの

後半は、家木氏が考案した、ブロック玩具を使った「5S」のシミュレーションゲームを行った。これは、ブロックを資材に見立てて、作業効率を上げるための倉庫のレイアウトをチームで考えるゲーム。5Sをいかに現場に導入するか、どういった工夫が5Sの徹底に役立つかを体験的に学ぶことができる。女性起業家たちは、真剣なまなざしでブロックと向き合い、効率的な在庫管理方法を模索し、チームメイト同士の議論も白熱。会場はにぎやかさを増した。

「ハイ、カイゼーン」の掛け声に笑顔がはじける

こうした具体的な手法の紹介と参加型のゲームによって、参加者たちは、家木氏のメインメッセージである「知識より実践が重要!(It is important to know, but it is more important to practice!)」を、身をもって学んだ一日となった。最後に行われた集合写真撮影の際には、「ハイチーズ」ではなく、「ハイ、カイゼーン」という掛け声まで飛び出した 。

貴重なマッチングの機会を最大限に活用すべき

瀬谷氏は、自身の経験から、日本企業のアフリカ進出事情を紹介した

続いて第2部では、「日本とアフリカのビジネスパートナーシップ強化」をテーマに、日本とアフリカの女性起業家をパネリストとして招き、パネルディスカッションが行われた。

ソマリアやケニアなどで平和構築活動に取り組みながら、日本企業の海外展開コンサルティングを行っている瀬谷ルミ子氏(JCCP M株式会社取締役、特定非営利活動法人日本紛争予防センター理事長)が、自身の経験や分析に基づき、日本企業のアフリカ進出事情を紹介。日本企業の特長は、単なる取り引きだけではなく、知見・技術の共有や人材育成に熱心であること、そしてアフリカから学ぼうという姿勢にあるとの瀬谷氏の言葉に、女性起業家たちの日本への関心と期待はますます高まった。

カリ氏は、2月に行われた「アフリカ女性起業家支援セミナー」にも参加。2008年に、南アフリカ全国女性農業大賞を最年少で受賞するなど、女性起業家として象徴的な存在だ

南アフリカ共和国の女性起業家で、養鶏業を営むボンギウェ・カリ氏は、日本とアフリカのビジネスパートナーシップの好例として、今年2月に日本で開催された「アフリカ女性起業家支援セミナー」に参加し、帰国後、同セミナーで交流した株式会社サカタのタネと、JICAの民間連携スキーム「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」(注1)を活用し、同社が実施している「生産指導と経営指導研修を通じた小規模野菜農家のインキュベーション事業準備調査」内で連携を開始した自身の経験を共有(注2)。日本で多くの企業や起業家と交流する中で、ビジネスに利潤以外の「意義」を見出していたのが印象的だったと語った。さらに、日本企業は、アフリカが必要とする技術や知見を持ち合わせていると同時に、土地や資源など日本にはないものをアフリカに求めているとした上で、互いに、相手が持っている機会についてもっと知ることが第一のステップであると述べた。

モデレーターを務めたJICAの内藤審議役

両パネリストからは、日本・アフリカ間のパートナー探しの難しさが課題の一つとして挙げられ、参加者の間で、日米政府が展開している交流プログラムが提供する貴重なマッチングの機会を最大限に活用することが重要であるという認識が一層高まった。モデレーターを務めたJICAの内藤審議役は、今後の方向性としてアフリカの女性起業家の能力強化は、アフリカの貿易、投資、そして開発を活性化させる鍵となるという確信に基づき、日本と米国は引き続きこの分野での連携を活発化させていく旨を述べた。

遠くまで歩きたいのであれば一緒に行こう

8月6日には、米国国務省主催にて開催された「AWEP Business-to-Business Showcase & Reception」に、JICA関係者が招待された。アフリカ女性起業家たちが自らの商品や事業を紹介するブースが設置され、参加者たちの熱心なプレゼンテーションが会場をにぎわせた。

米国のヘザー・ヒギンボトム国務副長官は、スピーチの中で、オバマ大統領が安倍首相と合意した通り、日米両国で協力してアフリカの女性起業家の人材育成を進めていく方向性を強調し、この連携を「早く歩きたければ一人で行け、しかし、遠くまで歩きたいのであれば一緒に行こう」というアフリカのことわざ通りであると表現した。

佐々江賢一郎駐米日本大使は、安倍首相は女性の社会進出支援を大変重視していることに言及した上で、世界のODAの4割を占める日本と米国の開発協力には、大きなポテンシャルがあると述べた。また、日本も「日アフリカビジネスウーマン交流プログラム(BWEP)」(注3)を実施しており、米国のAWEPとの協力をしていくことをあらためて表明した。

今回のプログラムへの参加を通じて、女性の社会進出は日米両国の最優先課題であることが確認されるとともに、プログラム自体が日本、米国、アフリカが相互に学び合う重要な機会であることが確認された。


(注1)企業などが行うBOP(Base of the Pyramid)ビジネスとの連携を促進するため、事前調査を支援する枠組み。
(注2)連携主体はカリ氏が役員を務める「東ケープ州地方開発機構(ECRDA:Eastern Cape Rural Development Agency)」。
(注3)2014年1月26日〜2月6日に、JICAが横浜市と共に開催した「アフリカ女性起業家支援セミナー」はBWEP第一弾として実施。2015年初旬には、第二弾が計画されている。