「包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)」関係者が来日

−日本の関係者を招いてセミナーを開催−

2014年10月9日

アフリカ連合(AU)が設けたアフリカにおける農業開発の枠組み「包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)」(注1)の実施機関である「アフリカ開発のための新パートナーシップ計画調整庁(NEPAD Planning and Coordinating Agency)(注2)の担当官の来日に合わせて、JICAは9月16日、「CAADPと日本のアフリカ支援」をテーマにオープンセミナーを東京で開催した(セミナー発表資料は下述を参照)。

JICAは6月11日、NEPAD計画調整庁と業務協力協定(MOU)を締結し、国境を越えた農業開発などのアフリカ大陸全体の課題に対する日本の協力を深めるための枠組みに合意した。このMOU締結を受けた連携の第一弾として、JICAはNEPAD計画調整庁のCAADP担当官二人を日本に招いた。

セミナーは、CAADPの担当官と日本のODA関係者との相互理解を促進するために開催され、日本の関係省庁やアフリカの農業開発を専門とする大学関係者、開発コンサルタントなどが集まった。

CAADPを指針とした支援

セミナーではまず、JICAアフリカ部の吉澤啓企画役が、「第5回アフリカ開発会議(TICAD V)」(注3)で発表された日本の支援策を軸としたJICAのアフリカ支援の全体像を紹介した。吉澤企画役はTICAD Vの成果文書「横浜行動計画2013-2017」の中で、農業が、向こう5年間のアフリカ開発の指針として示された六つの重点分野の一つとなっていると述べ、農業開発がJICAのアフリカ支援方針の中でも重要度が高いことを紹介した。

また「横浜行動計画2013-2017」で、CAADPが掲げる「農業セクターにおける成長率6パーセントの達成」が農業分野の成果目標の柱として位置付けられているだけでなく、TICAD V参加者の合意文書「横浜宣言2013」でも、大陸全体の課題を支援することが基本指針として掲げられており、日本政府としてもCAADPをアフリカの農業分野協力の指針としてみなしていることを強調した。

アフリカ各国政府の政策づくりと利害調整能力の強化に重点

次に、来日したNEPAD計画調整庁のプログラム実施責任者であるモハメッド・アブディッサラム氏が、同庁の組織概要とビジョンを説明した。その上で「2003年に採択されたCAADPは発足から10年たち、プロセス重視から成果・インパクト重視へ移行する時期に差し掛かっている」と述べ、今後、一層、JICAをはじめとするパートナーとの連携を深めていきたいとの意向を示した。

続いて、プログラムオフィサーのウナミ・テレッサ・ムポフ氏が、CAADPの歴史からアフリカ各国における実施の仕組みまで、包括的な概要を説明した。CAADP誕生の経緯として、ミレニアム開発目標(注4)などの国際的潮流により、教育や保健などの保健セクターに開発の取り組みが集中していたことから、アフリカ各国首脳が、農業の優先順位を再浮上させようという決意表明としてCAADPを立ち上げ、年間少なくとも6パーセントの農業生産性向上と、各国予算の10パーセント以上を農業部門に振り向けるなどの数値的目標が掲げられたという背景が紹介された。

CAADPは、このような背景からアフリカ各国政府自身による政策づくりと利害調整能力の強化に重点を置いている。具体的には、各国政府が国家政策に農業開発戦略を確実に反映させ、農業分野に対する投資計画を策定するための、実施・モニタリング・評価に関する技術的ガイドラインを、NEPAD計画調整庁のCAADPチームが各国政府に提供している。

日本のアフリカ農業分野への協力

アフリカにおける「緑の革命」について発表する大塚特別教授(左奥)

セミナーの後半では、日本のアフリカ農業分野への協力について理解を深めてもらうために、TICAD Vでも日本の農業支援の柱と位置付けられている「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」(注5)と「小規模園芸農民組織強化計画(SHEP)」(注6)アプローチを説明した。

政策研究大学院大学の大塚啓二郎特別教授は、JICAのCARDへの取り組みの一環として実施されたアフリカにおける稲作の「緑の革命」(注7)の実現可能性についての研究の成果を発表し、担当官と活発に議論を交わした。

続いて、JICAの相川次郎国際協力専門員が、安倍晋三首相がTICAD Vの開会式スピーチで日本が力点を置く協力として紹介したSHEPアプローチのこれまでの成果や具体的手法、アフリカでの広域展開の展望について説明した。CAADPでは、次の10年に向けての重点テーマとして「市場志向型農業」が挙げられている。農家が市場を意識したビジネスとしての農業を実践するためのモチベーションとスキルの向上を通じ、「作ってから売る」から「売るために作る」への変革を目指すSHEPアプローチは、CAADPの方向性とも親和性が高い。

最後は、JICA農村開発部の天目石(あまめいし)慎二郎農業・農村開発第二グループ第四チーム長が「知識共有と意見交換を通じ、CAADP担当官と日本のアフリカ農業開発関係者との相互理解が高まった。これを踏まえて今後もコミュニケーションを密にしていく必要性がある」と述べ、セミナーをしめくくった。

大潟村でゼロから近代農業に至る過程を視察

地域を中心にした経済発展などについて、大潟村の高橋浩人村長(前列中央)と意見を交換したCAADPのアブディッサラム氏(左)とムポフ氏(右)

大潟村の農地も視察

セミナーの翌日、アフリカから来日した両氏は秋田県大潟村を訪れ、秋田県農業試験場、農家や大潟村農業協同組合(JA大潟村)の視察などを通じ、日本のアフリカ農業分野への支援の土台となっている日本の農業政策や農業開発の歩みについて学んだ。大潟村は50年前に干拓地として開拓された日本の中でも特殊な土地だが、ゼロから近代農業に至るまでの過程を見るには最適な視察地。両氏は「実際に農家を訪問することで、アフリカの農村部の開発に向けて、多くのヒントを得た」と語った。

CAADPは、アフリカ大陸全体の農業政策の指針ともいえる枠組みであり、アフリカ各国政府、各アフリカ地域経済共同体(注8)の開発計画との整合が図られているほか、アフリカの農業支援にかかわるすべてのドナーはCAADPの計画に沿って支援することが求められている。

JICAが推進するアフリカにおける農業・農村開発事業は、これまでもCAADPの下で行ってきたが、TICAD Vであらためてその重要性が確認されたことなどを受け、より一層戦略的に国境を越えた農業開発支援を展開するため、今回の招へい事業をきっかけに、NEPAD計画調整庁や各地域経済共同体との連携を強化していく。


(注1)Comprehensive Africa Agriculture Development Programme。AUが設けたアフリカ自身によるアフリカ開発のためのイニシアチブ「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD: The New Partnership for Africa's Development)」のプログラムの一つ。食料安全保障および栄養の改善、農業所得向上を目的とし、年間6パーセントの農業生産性向上と、各国予算の10パーセント以上を農業部門に振り向け、これらの目標達成を目指している。
(注2)NEPAD は、2010年1月のAU総会で「NEPAD計画調整庁」として改組され、AUの実施機関となった。
(注3)Tokyo International Conference on African Development。日本のリーダーシップで1993年の初開催以降、5年に1度開催される、アフリカ政府、国際機関、市民社会が参加するアフリカの開発をテーマとする国際会議。その5回目が2013年6月、横浜で開催された。
(注4)貧困削減、教育、ジェンダー平等、母子保健、感染症、環境などについて、国際社会が2015年までに達成すべき八つの目標のこと。
(注5) Coalition for African Rice Development。 JICAが2008年に他ドナーとともに立ち上げた、アフリカにおけるコメ生産拡大に向けた自助努力を支援するイニシアチブ。10年間でアフリカのコメ生産を2倍にする目標を掲げている。
(注6)Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion Approach。JICAのケニアでの技術協力プロジェクトから生まれ、アフリカで広域展開されている農業開発手法。
(注7)高収量の改良品種が開発途上国に導入された結果、1960年代以降、米や麦などの農業生産が大幅に増加した現象のこと。アジアの多くの国で米の自給が達成された。
(注8)アフリカ域内の経済統合を目的に組織されている地域経済共同体。AUが承認している共同体は、南部アフリカ開発共同体(SADC)、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、サヘル・サハラ諸国国家共同体(CEN-SAD)、中部アフリカ諸国経済共同体(ECCAS)、東アフリカ共同体(EAC)、東・南アフリカ市場共同体(COMESA)、 アラブ・マグレブ連合(AMU)、政府間開発機構(IGAD)の八つ。