途上国農村と日本の地域が持続的に発展するモデルとは-技能実習×農業×ODAの連携を考えるフォーラム開催-

2019年7月19日

概要

会議名:「農業分野の外国人材の受け入れ×ODA」を考えるフォーラム
開催日:2019年7月19日(金)
主催:JICA
後援:外務省、農林水産省
協力:国際農業者交流協会(JAEC)、全国農業協同組合中央会(JA全中)、日本国際交流センター(JCIE)(五十音順)
場所:東京・JICA市ヶ谷ビル国際会議場(テレビ会議接続により20ヵ所以上の国内・海外のサブ会場でも開催)

主な参加者

毛受 敏浩(日本国際交流センター執行理事)
吉川 浩史(くろしお農業振興協同組合代表理事)
近藤 隆(ファーマーズ協同組合理事長)
清水 利広(国際農業者交流協会部長)
田谷 徹(株式会社農園たや代表取締役)
越川 和彦(JICA副理事長)
山田 英也(JICA上級審議役)
宍戸 健一(JICA 農村開発部長)
参加者 約100名(本会場のみ)

背景・目的

日本では農業分野の労働力不足が懸念されていますが、2019年4月から「特定技能」資格での外国人材受入れが可能になることから、外国人材受入れの進展が農業分野でも想定されます。一方、持続的に外国人材を確保し、受入れていくためには、日本での技能実習環境改善などの課題の解決が重要です。

国連・持続可能な開発目標(SDGs)のゴール2「飢餓を終わらせ、食糧安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」への貢献のため、開発途上国で農業分野の事業を展開するJICAは、外国人材の円滑な受入れを側面から支援し、途上国の農村と日本の地域が共に持続的に発展する取組みのため、事業をより戦略的に展開する必要がある、と考えています。

このような経緯を踏まえ、JICAは『「技能実習生等を送り出す途上国の農村」と「技能実習生等を受け入れる日本の地域」が共存するモデル』の構築に向け、有識者及び技能実習生受入れ関係者が一同に会し、アプローチや取り組むべき課題を議論することを目的として、このフォーラムを開催しました。

内容

フォーラム冒頭、JICA越川副理事長は、技能実習生制度を巡る課題に触れたうえ、外国人材受入れに関しODAを活用する、という観点でできるところから取組む、とのJICAの姿勢を表明。

日本国際交流センター毛受執行理事は、基調講演で、日本の人口減少と在留外国人の増加を具体的データで示したうえ、一過性ではなく地域社会を担う可能性ある人材として外国人材を受入れる日本・途上国・事業参加者3者の「トリプルウィン農村事業」を提唱。事業推進へのJICAの役割に期待を示しました。

引き続き、自らの青年海外協力隊派遣の縁からフィリピン・ベンゲット州と高知県をつなぎ、農業分野外国人実習生の人材育成・交流に長年取組む、くろしお農業振興協同組合の吉川浩史代表理事、ラオス等複数国から外国人材を受入れ、実習生の戦略的登用、来日前準備の効果的実施、現地での産地形成・栽培試作に取組む香川県ファーマーズ協同組合近藤隆理事長が事例紹介を行いました。

パネルディスカッションでは、日本で技能実習生受入れを継続する上での課題、実習生とODAとの連携におけるJICAへの期待などについて議論しました。

JICA宍戸農村開発部長は、外国人人材におけるJICA事業の活用方針・先行事例・今後の取組みの説明の中で、技能実習と農業、ODAの連携による途上国農村と日本の地域の共存モデルについて、第一号パイロット事業となるラオスにおけるファーマーズ協同組合とJICAの連携事業構想を紹介。「今後、ラオス政府も含めた合意文書に署名し事業を開始したい」、「色々な支援ツールを活用し、途上国の人々の生計を向上したい、と考える方々との連携を深めていきたい」と語りました。基調講演・事例紹介を行った3名に加え、国内外の農業人材の育成に取組む国際農業者交流協会の清水部長、インドネシア農業高校卒業生を技能実習生として受入れ農園を経営する株式会社たやの田谷代表取締役がディスカッションに加わり、取組みを紹介しました。

フォーラムは、日本の高齢化・人口減少などの課題を多く抱える状況をチャンスと捉え、若い世代のアイディアも積極的に取込みポジティブに取組むことが必要、外国人材が日本の地域で定住できる仕組みを考え、外国人材の考え方、文化を受け入れることが重要、といったメッセージが共有され、終了しました。参加した国内各地の農業・自治体関係者・関係機関、開発コンサルタント、JICA役職員等は終始熱心に耳を傾けていました。

このフォーラムは、SDGsゴール2の達成に向け、関係機関が情報共有・連携促進することを目的に設立された「食と農の協働プラットフォーム(JiPFA)」の活動の一環であり、フォーラムの議論はJiPFAで継続検討される予定です。JICAはこれからも、日本と途上国がともに持続的に発展しSDGs達成に貢献するインパクトある事業を展開していきます。

資料

関連リンク

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技能実習生を送り出す途上国・受入れる日本の地域が共に繁栄するためのJICAの貢献への決意を語る越川JICA副理事長

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日本・途上国・事業参加者3者の「トリプルウィン農村事業」を提言する毛受氏

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青年海外協力隊任地の縁から、フィリピン・ベンゲット州からの実習生受入れに携わる吉川氏

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途上国の技能実習生送り出し側から円滑な受入までを一気通貫で整備し、途上国での農業技術指導も行う近藤氏

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途上国農村と日本の地域が共に発展するモデル、JICAに期待することなどを活発に議論するパネルディスカッションの様子