2015年　ネパール地震

大規模な被害に対して救助、医療など様々な緊急援助を実施

2015年4月25日、ネパールにおいてマグニチュード7.8の地震が発生し、首都カトマンズを含む広い地域で甚大な被害が生じました。JICAは、発災直後から様々な形で緊急援助を行いました。

発災当日に国際緊急援助隊救助チームの派遣が決定し、総勢70名の隊員と救助犬4頭が翌26日に経由地のバンコクへ向けて成田空港を出発。大地震後の混乱により、カトマンズの国際空港はパンク状態で、カトマンズへ向かう多くの飛行機が遅延、欠航、引き返すなどの対応をせざるを得ませんでした。救助チームを乗せた飛行機も何度も着陸を試みましたが、空港混雑のためなかなか着陸許可が得られず、28日にようやく着陸することができました。

現地に到着した救助チームは、すぐにネパール政府や国際機関等と調整の上、まずカトマンズ市内中心部のハヌマン・ドカ（旧王宮）にて捜索救助活動を行いました。30日からは、カトマンズ市東部の地域を割り当てられ、生存者確認のための捜索活動を実施。5月3日には国際救助フェーズの終了が宣言されましたが、その後もネパール武装警察の依頼に基づき、カトマンズ市北部のゴンガブ地区にて、倒壊した建物の中で要救助者の捜索活動を行いました。

また、JICAは国連人道問題調整事務所（UNOCHA）が招集する国連災害評価調整チーム（UNDAC）にもメンバーを1名派遣。現地到着後は、カトマンズの空港にて海外から続々と到着する支援チームの登録、管理、情報提供等を担当し、国際的な支援調整において、大きく貢献しました。

現地では、建物の倒壊により大けがをした人、避難中に体調を崩した人など、医療支援を待つ人々も多く存在しました。日本は、救助チームに引き続き、4月27日に医療チームの派遣も決定。今回の地震では、骨折などの重症患者に対応するため、通常の医療チームの外来診療機能に加えて、手術、透析といった高度な医療ニーズに対応できる機能拡充チームとして派遣されました。機能拡充チームは、今回のチームが日本として初めての派遣となりました。

4月29日に現地に到着した医療チームは、まずカトマンズの病院で手術支援を実施しました。その後、ネパール政府や国際機関等と調整の上、カトマンズから北東方向に車で3時間ほどのバラビセ村にて活動を行うことになりました。バラビセ村は、山間部の小さな村で、普段から医療支援が届きにくい地域です。そのような村で唯一手術が行える病院が被災してしまったため、地震によりケガをした村人達は、日本チームが診療を開始した際には長蛇の列を作り診察の順番を待ちました。

日本の医療チームは、倒壊した瓦礫により右腕を骨折したある男の子の手術を実施。放っておけば一生腕が使えなくなる危険性があり、日本の医療チームが手術を行わなければ、彼の一生が大きく変わったかもしれません。重症患者が多く生じ、医療へのアクセスが非常に限られていた同地域において、日本のチームはとても大きな役割を担いました。

5月12日にはマグニチュード7.3の最大余震が発生し、更なる被害が生じました。医療チームが活動していたバラビセ村でも、家屋が倒壊したり、斜面が崩れたりするなどの被害が発生したため、チームは隊員の安全確保を最優先とし、余震後はカトマンズ近郊の病院において手術支援などを行いました。

バラビセ村での活動と、カトマンズ市内及び近郊の病院支援を含め、日本の医療チームは約3週間の活動を通して987人を診療、22件の手術を行いました。

加えて、日本は自衛隊部隊も派遣し、カトマンズ市内及び近傍の計5ヵ所において、約2,860名の診療を行いました。

また、地震により住居をなくした人々が多く生じていたため、JICAはテントと毛布を供与しました。それらの物資はカトマンズに到着後特に被害の大きな地域に配布されています。

このように、特に大規模な被害に対し、JICAは様々な形で緊急援助を実施しました。さらに、JICAは緊急援助と並行してその後の復旧・復興、さらには平時の防災対策までを見据えた支援を開始しています。過去の災害に学び、二度と同じ悲劇を繰り返さないよう、JICAはネパール政府と協力して引き続き様々な支援を行っていきます。