ジャマイカの小学校で防災教育ージャマイカ帰国研修員からの報告

~防災クラブでジャマイカの子供たちが楽しく防災について学んでいます。~

【画像】所属先:ジャマイカ 消防庁
名前:Ms. Heather Williams(ヘザー ウィリアムズ)
研修コース名:コミュニティ防災
研修実施機関:神戸市消防局、公益財団法人 神戸国際協力交流センター
研修期間:2015年6月22日から8月1日まで

Ms. Heather Williams(以下、ヘザーさん)は、2015年「コミュニティ防災」研修に参加し、帰国後、JICA研修の成果を活かして学校防災教育分野で積極的に活動しています。ヘザーさんの帰国後の活動を知らせる報告が届きましたので、ここにご紹介します。

消防クラブ設立の背景

消防クラブの指導者

消防クラブメンバー

 私は、2015年にJICA関西が実施するコミュニティ防災コースの研修に参加しました。その研修で作成した行動計画を帰国後実行して「小学校災害リスク軽減教育プロジェクト」を2016年6月から正式に開始しています。
 JICAジャマイカ事務所がフォローアップ協力プログラムを通じて、防災教育プロジェクトを実施するための主な資金を提供してくれました。 また、ジャマイカエネルギー会社(Jamaica Energy Partners)とポートモア市からも更なる支援が得られました。そして、ジャマイカ政府教育省と第6地区の協力を得て、防災教育プロジェクトが教育省に正式に承認されました。
 このプロジェクトは、消防庁防火・広報部が担当し、セントキャサリン地区の6つの小学校から始まりました。
 まず、パイロット学校として選ばれた6つの小学校の教師20人に対して基本的な救急法・応急手当の講習を実施し、防災訓練を効果的に行う方法について指導者の研修をしました。 そして、個々の学校の実践的な防災計画を作り、危機管理システムについて教育しました。指導者研修は、ポートモア市の災害コーディネーターの支援を受けて消防庁防火・広報部が実施しました。この講習会の後、防災計画の策定や既存の防災計画の改訂をしました。また、講習会に参加した教師が、それぞれの学校で防災訓練を実施し、学んだことが活用されることを確認しました。

防災エキスポ

ジャマイカ消防クラブのマーク
ワニのCrox(クロックス)

ワニの人形で被災者を運ぶ訓練

 2016年10月、セントキャサリン地区の20の小学校から約220人の生徒が、「災害リスク削減がレジリエンスを高める」というテーマでポートモア市消防署にて開催された2日間の防災エキスポに参加しました。 防災エキスポでは、消火器の使用方法、被災者の救助と搬送方法、バケツリレーによる消火活動、災害時のロープの使用方法、ロープ結び方など様々な消防や救急の知識を紹介しました。
 さらに、公募によって防災教育プログラムで使用するキャラクターのデザインを選ぶために、小学校からデザインを応募してもらいました。選考の結果、McCook小学校がデザインしたワニのキャラクターが選ばれました。ワニには、Crox(クロックス)という愛称が付けられ、クラブの記章のデザインになりました。また、神戸で防災教育にカエルのキャラクターを使用しているアイデアをジャマイカ消防庁でも取り入れました。 神戸ではカエルの人形で被災者の救助や搬送方法を教えているので、ジャマイカでは、ワニの人形を作って、被災者救助の訓練をしています。

消防クラブ

被災者搬送訓練

 消防クラブはジャマイカの小学校で行われている防災教育のための課外活動プログラムです。その目的は、災害時に命を守るため、災害に備えて、災害からの復旧・復興をするための正しい知識と技術を習得した子供たちを教育することです。消防クラブのビジョンは、自然災害に対するジャマイカの防災力を高めるため、家庭や地域社会における災害リスク軽減の防災文化を育むことです。 クラブミーティングは通常、各学校で1週間に1回開催されます。クラブ活動の内容は、救助技術、基本的な応急処置、ボランティア活動や募金活動、消防訓練など防災に関することです。
 クラブには制服があり、リーダーへの昇進や、優れた活動などに対する表彰制度もあります。 小学校の教師がクラブの顧問になって、生徒を指導しています。
 2017年4月の設立以来、約600名の生徒が様々な防災関連の講座や活動に参加しており、現在プログラムに参加している学校は合計13校です。

ロープ結び方を学んでいる子供たち

防災の勉強をしている小学生

 「明日の災害のために今日準備する、“Prepare today…for disasters tomorrow”」というクラブ目標を掲げて、生徒が災害に備え、命と財産を守ることができるようになるために消防庁はジャマイカ政府教育省の支援を受けて、消防クラブをより多くの小学校に広めています。

編集後記

2018年度コミュニティ防災の研修員11人、講師の永田氏とカエル(防災教育に使用されているカエルの人形)

 ヘザーさんは、神戸市消防局や特定非営利活動法人プラス・アーツの永田氏から学んだ防災教育の知識を活用してアクションプランを作成し、ジャマイカの小学校で防災教育を実行しています。神戸発の防災教育「イザ!カエルキャラバン!」のアイデアや神戸市消防局、コミュニティ防災研修の講師や見学先の方々から学んだ知識がジャマイカや世界に広がっています。防災教育のキャラクターは、日本ではカエルですが、ジャマイカではワニ、インドネシアでは小鹿、トルコやモンゴルではクマになっているそうです。日本で使われている教材をそのまま使うのではなく、その国の文化や状況に適した形になった防災教育やコミュニティ防災活動が帰国研修員の国々で発展・継続されることを期待します。


(JICA関西 業務第一課 松野)