九州エコ通信2016年2月号

世界の水環境改善に貢献!福岡市の節水型都市づくり

JICA九州 研修業務課
多久和 さやか

JICA九州国際センターは、急速な人口増加や都市化による水環境の悪化が深刻な課題となりつつある開発途上国の水環境改善に取り組むため、福岡市の協力のもと上水道無収水量管理対策研修(委託先:福岡市水道局)と下水道システム維持管理研修(委託先:福岡市道路下水道局)を実施しました。

福岡市は昭和53年に経験した異常渇水を契機に、市民の"水を大切に使う"節水への理解と協力を得ながら、"限りある水資源の有効かつ合理的な利用"に向け、節水型都市づくりに取り組んでいます。これまで高度な下水処理や処理水の再利用・包括的な浸水対策によって水質汚濁・浸水・渇水等の問題を克服しており、上下水道・環境分野において高い技術と豊富な知識を有しています。

研修ではそれらの実績を生かし研修参加国の課題解決のために技術的な支援を行っていただきましたが、その中でも福岡市の節水型都市づくりの取り組みは自国の課題解決に貢献しうる知見として研修員から多くの関心が寄せられました。今回はその節水型都市づくりの取り組みの中で研修員が特に関心を示したものをご紹介します。

水道水の効率的供給

福岡市は浄水場からじゃ口までの水の流れや水圧を水管理センターでリアルタイムに集中制御し、配水管内の水圧が必要以上に高くならないようにコントロールしています。また漏水防止対策や古くなった管の取替を計画的に行っており、2014年度の有効率は97.5%、漏水率は2.3%(世界トップレベル)となっています。研修参加国では高い漏水率と供給水量不足が課題となっており、水道管の老朽化や適切な維持管理が行われないことが主な原因としてあげられていたため、研修では市が培ってきた漏水修理や適切な水道管の接合方法など配水管維持管理の技術を指導していただきました。研修員はひとつひとつの工程を丁寧に行う福岡市のシステム化された技術を見習いたいとし、正しく施工することや職員の能力強化が効率的な水道水の供給と安定した経営に繋がることを実感していました。

【画像】

配水管の漏水修理実習の様子

【画像】

適切な水道管の接合方法を学ぶ様子

下水処理水の再利用

福岡市は下水処理水を再利用する再生水事業を日本で初めて開始し、再生水をトイレの洗浄用水と公園・街路等への散水用水として利用しています。再生水の供給施設数・供給面積ともに日本トップクラスの実績を誇っており、その高度な政策や技術的手法について研修員から質問が相次ぎました。実際に中部水処理センターの再生処理施設を見学し、具体的な再生処理フローや施設管理に関して細かな説明をしていただきました。研修参加国の都市部における水環境問題の根本的な解決のためには下水処理施設の整備が優先されますが、下水処理水を貴重な水資源としてとらえ、将来的には福岡市のような再生処理施設を導入したいとの意見がありました。

【画像】

中部再生処理施設視察の様子

【画像】

処理場の管理について説明を受ける様子

節水意識の高揚への広報活動

福岡市では市民の節水意識を高めるために、小中学校での節水教育の導入や、HPでの情報提供・広報誌配布・出前講座等を積極的に行っています。研修参加国の共通の課題としてあげられたのが、節水の意識の低さと国民への情報発信不足でした。実習の一環として研修員は8月23日に開催された「下水道フェア福岡2015」へ参加し、体験コーナーや授業ステージ等による市民への情報共有・理解促進を促す広報活動を目の当たりにしたことで、地域社会の意識改革の重要性や、情報発信のあり方、キャラクター・再生水シールの活用等の工夫点を学び、これらを自国でも取り入れたいとの声が多く聞かれました。

【画像】

下水道フェアで水質実験コーナーを体験

【画像】

下水道展示コーナーを見学(ぽんプラザ)

現在、福岡市にはJICAの研修員の受入に加え、長期専門家派遣や草の根技術協力にもご協力いただき、ミャンマー・ヤンゴン市やフィジーなどの都市問題を抱える地域や国に技術的な支援を行っていただいています。今後も福岡市と共に開発途上国の水事業改善のために取り組んでいきます。