九州エコ通信2017年10月号

マレーシア・フレーザーヒルでの廃棄物管理改善プロジェクト−JICA草の根技術協力事業を使って食品系廃棄物排出ゼロを目指す−

北九州市環境局アジア低炭素化センター 岡田義広
(公財)北九州国際技術協力協会 竹内眞介

はじめに

北九州市と(公財)北九州国際技術協力協会(KITA)は、市内企業等((公財)北九州市環境整備協会、楽しい(株)、ひびき灘開発(株))と連携して、マレーシア・フレーザーヒルにおいてJICA草の根技術協力事業(2014年〜2016年)を実施し、食品系廃棄物(以下生ごみ)の分別収集及び収集された生ごみの堆肥化を核とした廃棄物管理改善事業を行いました。

フレーザーヒルの紹介

マレーシア・パハン州のフレーザーヒルは、同国の首都であるクアラルンプールから北へ車で2時間ほどの山岳地帯にあり、標高がおよそ1,300メートルと高く、年間を通して涼しいこと(ホテルには冷房設備無し)、自然がそのまま残っていることなどから、避暑やバードウォッチングなどの自然観察を目的とした観光客が年間約12万人訪れています。
一方、現地の廃棄物処理を見てみると、本プロジェクトを開始前は、一日に約1トンのごみが出ており、週2回の頻度でごみを収集し、フレーザーヒルから山裾にある最終処分場へ約2時間かけて運んでいる状況でした。

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フレーザーヒルの位置

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最終処分場の状況

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観光地フレーザーヒルのシンボルである時計台

生ごみの分別収集と堆肥化

プロジェクトでは、まず生ごみを排出するホテルやレストランなどを訪問して、生ごみの分別排出への協力をお願いしました(2015年8月)。次に分別した生ごみを、腐敗する前に堆肥化する必要があるため、生ごみの収集頻度を従来の週2回から週3回に増やす分別収集体制を構築しました。そして収集した生ごみは、堆肥化設備(コンポストマシン)で堆肥化を行いました。
堆肥化設備は、楽しい(株)が日本国内で販売・設置・運営しているものを2015年11月に現地へ輸出し、マレーシア政府が新たに建設するコンポストセンターに設置して、2015年12月から生ごみの堆肥化を開始しました。
このシステムは、プロジェクトが終了した現在も順調に稼働しており、1カ月当たりの生ごみの収集量は約2トンで、そこから約100キログラムの良質の堆肥が作られ、花壇やゴルフ場などで利用されています。

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生ごみの分別説明

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分別された生ごみ

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分別収集用三輪車

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堆肥化設備・試運転見学会

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出来上った完熟堆肥

現地スタッフとの関係

プロジェクトを進める過程で、良質な堆肥の作成や、堆肥化設備から出る排水の処理に苦戦し、たびたび問題が発生しましたが、その度にカウンターパートであるSWCorp(マレーシア固形廃棄物公共清掃管理公社)の担当者が責任を持って問題解決にあたってくれました。
また、カウンターパートとの関係強化のため、SWCorpと北九州市が相互協力に関する覚書を締結し(2015年8月)、一体となってプロジェクトを推進しました。

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覚書締結式の様子

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現地スタッフとの記念撮影
(現地での最終活動報告会終了後)

その後の展開

楽しい(株)は、本プロジェクトの経験をもとに、引き続きSWCorpをカウンターパートに野菜栽培の盛んなマレーシア・キャメロンハイランドにおいて、野菜残渣の堆肥化事業に取り組みたいと考え、2017年度 第1回中小企業海外展開支援事業−案件化調査−に応募しました。このたび同プロジェクトの採択を受け、現在契約に向けた業務を行っており、2017年11月下旬から調査を開始する予定です。
また、北九州市では、今後もJICA事業などを活用し、東南アジアなど途上国の開発課題解決に貢献したいと考えており、その一環として、フィリピン共和国ダバオ市において、草の根技術協力事業(2016年4月公示分)を実施中であり、本プロジェクトの経験をもとに現地の廃棄物管理の向上に向けた活動を行っています。