人吉での3ヶ月を忘れずに世界で活躍できる人材になりたい

【写真】中村信駿:2021年3次隊 ウガンダ 野菜栽培 (2021年6月掲載)人吉球磨地域振興局配属 特別派遣前訓練生
中村信駿:2021年3次隊 ウガンダ 野菜栽培 (2021年6月掲載)

【訓練開始前】

球磨川と夕日(1)

1.特別派遣前訓練までの心境
 私は2020年2次隊野菜栽培隊員としてベナン共和国(今は派遣国はウガンダに変更となりました)に派遣される予定でした。しかし、去年の3月頃に派遣が1年間延期になることが決定しました。当時は、派遣が無事再開されるのか、今後国際協力を仕事とすることは可能な世界になるのかなど不安が嫌でも浮かんできて何度か心が折れそうにもなりました。そのような状況下においても諦めずに待ち続けた結果、熊本県人吉市にて活動が始まると決定しました。そのとき初めて、1年間の待機期間は無駄ではなかったこと、小さな一歩ですが、アフリカへの道を歩み始めることができると前向きな気持ちで特別派遣前訓練に臨みました。

2.特別派遣前訓練にむけて準備したこと
 人吉市に関しては、鹿児島で働いていたときからずっと気になっていた場所であったため、基本情報はある程度知っていました。しかし、水害後の状況は全く知らなかったため、動画配信サイト等を見て事前勉強をしました。ただ、あまり準備はしていませんでした。自分が、実際に現地で見て感じたことを大切にしているため、なるべく情報は入れずに特別派遣前訓練に臨もうと思いました。

【訓練や現在の生活】

球磨川と夕日(2)

1.実際の活動内容
 私の活動内容は主に農業や肉体労働が中心です。水害を受けた農家の方の稲作のお手伝いや酒造会社の災害ゴミの撤去のお手伝いなどです。人吉市は水害から一年が経つのですが、コロナの影響とくま川鉄道が被災したため陸の孤島となっており、ボランティアが入ることができずに復興が遅れています。そのため、少しでも復興に向けてのお手伝いができるようにと日々汗を流しています。他の活動としては、実は前職が教師であったため、教育活動に何か携わりたいと考えたため、南陵高校での農業実習への参加と人吉市の学校支援ボランティアに登録して、人吉市内における小中学校の授業のお手伝いなどを行っています。具体的に挙げると、小学一年生の生活課の授業の一環で「公園で遊ぼう」の応援や水生生物調査の応援(子供達より騒いでいましたが…)などを行っています。公園で遊ぼうの際は小学一年生の生命力に圧倒され本当に倒れそうになりましたが、20代のお兄さんとしては、まだキッズたちには負けられないと感じたため、人間メリーゴーランドとなって子供達を圧倒させました。どの活動先も常に笑顔が絶えない所ばかりで、自己免疫は常に高い状態を保てていると実感しています。

2.現在の生活の様子
 派遣された当初よりも肌が焼けたなと思います。私はデスクワークが苦手なため、基本屋外で作業を行っているため、毎日心地よい疲労に襲われ快眠です。ホテルでの長期間の生活は初めてでしたが、持ち前の適応能力で日々快適に過ごしています。食事に関しては、地元の食堂やスーパーの安いフルーツを買い占めて1週間フルーツ生活などをして食のマンネリ化を防いでいます。活動を通して肉体的・精神的に疲れたと感じた日は、思い切ってその日はオフにして温泉やヨガなどを通して心身ともに健康を心がけています。私は人吉市にて温泉を巡る湯活を個人的に企画しており、日々人吉市内の温泉を巡っています。
また、ストレスを溜めないコツは現地の人と話して大笑いすることであると感じました。

3.派遣先の地域自慢など
 何と言っても、人吉市内外を横断する球磨川です。地元の人に10人聞いたら10人の方が人吉の自慢するところは球磨川と答えると思います。本当に大きくて、綺麗です。ホテルの近くに球磨川が流れているのでよく眺めています。他には、都市部のように高い建物がないため、空が広いです。朝日が綺麗なことはもちろん、球磨川と夕日、球磨川と月のコラボレーションはとても風情があり、人吉ならではのものです。また、球磨川上流に行けば信じられないほど綺麗な川があります。さらに、それらの川にひっそりとかかる石で組まれた橋も見ることができます。水害前には、球磨川中流では川下り、上流ではラフティング、激流サップ、岩肌でのロッククライミング、川のほとりでキャンプなどもできていました。最後に歴史のある球磨焼酎です。球磨焼酎は芋ではなく米が原料のお酒です。米焼酎は芋独特の風味ではなく、どちらかといえば日本酒に近いものがあります。人吉市内から車で30分ほど湯前町の方へ移動すれば、面白い酒蔵がたくさんあります。人吉市には27蔵ほど球磨焼酎の蔵があるため、お酒好きの人であれば見逃せないポイントです。都会の雑踏に疲れた方がいれば人吉市は時間がゆっくりと流れるため、ぜひ球磨川や球磨焼酎など探せばまだたくさん魅力のある人吉に足をお運びください。

大柿地区でにて大柿さんと

4.一番大変だったこと
 私は日々楽しく活動をしているため、これといって大変なことはありません。もし、強いて一つ挙げるとすれば、活動先を見つけることが大変だったと感じます。私は派遣当初、水害を受けたまちを元気にしたい!人々の悩みを吸い上げて課題を発見し、町の復興のきっかけになりたいという目標を掲げていました。しかし、何もできないことに気づきました。私はJICAの看板を背負って被災地にきて、何かしたいと思っていましたが、何もできませんでした。そこで、理想と現実の壁に悩みました。しかし、日々活動をこなしているうちに、困っている人のために職種を問わずに汗を流したいと考え方が変わりました。そこからは、短い3ヶ月の期間悩むより楽しみながら悩んで、わからなかったら受け入れてくださった方と話して解決の糸口を見つけていけば良いのだと。おそらく、この経験はウガンダに派遣された際にも起こることなので、あまり深く考え過ぎずに真摯に活動をして行こうと思います。

5.一番うれしかったこと
 私は自分の活動が新聞に載ったりテレビで報道されることには興味はありませんが、活動先の方がメディアで紹介されたりすることはとても嬉しく思います。また、自分がお手伝いしたことにより、これからも少しでも復興に向けて前向きになっていただけたらと考えます。

6.活動への意気込み・目標
 私は、活動先ではあくまで黒子役であると考えています。あくまで、復興の主人公は現地の方であり、現地の方が復興に向けて歩む道を少しでも応援することが私の役割であると考えます。そして、学校支援ボランティアで交流した子供達がより良い学校生活を送れるように微力ではありますが活動を行っていきたいと考えています。

【今後に向けて】

川と橋

1.隊員活動に活かしたい経験
 大柿地区でお世話になっている方から、竹細工をいま教えていただいているので、職種は野菜栽培でありますが、マスターして現地の子供達に手工業の楽しさを伝えたいです。また、農業高校の農業実習に参加させていただいているため、そこで学んだ野菜栽培の技術を存分に現地においても発揮していきたいと考えています。

2.特別派遣前訓練に今後参加される方へのメッセージ
 海外派遣に向けて語学が中心となってくるのは当たり前のことですが、自分自身が自国の地方の魅力を知っておくことも大切だと思います。特別派遣前訓練は地方の魅力を知ることはもちろん、地方の課題発見や、今自分に何ができるか再度見つめ直す良い機会となるため、悩んでいる方がいれば、参加をお勧めします。地方の子供たちの笑顔や農家の方々のお話は本当に癒され、心が軽くなります。都市部の方は特におすすめです。

3.受け入れ自治体の方々へ
 何もできない自分を快く受け入れてくださったことに心から感謝いたします。いきなり、球磨地域振興局に農業高校の野菜を持って押しかけた際にも快く販売を承諾くださった時は本当に嬉しかったです。今後も人吉での3ヶ月を忘れずに世界で活躍できる人材になりたいと思います。本当にありがとうございました。