所長あいさつ

マラウイはアフリカ南部の内陸国で、日本のおよそ3分の一の国土に、約1,900万人の人々が暮らしています。国土の20%以上を占めるマラウイ湖は固有種が豊富なことで知られており、世界遺産にも登録されています。日本では馴染みの薄い国かもしれませんが、これまでに日本から派遣された海外協力隊員の数は、世界一。国の玄関口であるカムズ国際空港は、日本の協力によって開港、整備されてきました。JICAのプログラムにより日本での研修に参加した人の数は、累計3,000人に上ります。これまでの様々な分野における協力・交流の歴史から、日本や日本の協力に対して大きな信頼と好感が持たれています。

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マラウイは1964年の独立以来、内戦を経験しておらず、穏やかな国民性もあいまって「アフリカの温かい心(The Warm Heart of Africa)」とも呼ばれています。2019年6月に行われた大統領選挙では、選挙の不正を訴える抗議行動が激化しましたが、憲法裁判所による判決に基づき再選挙が行われ、野党候補の逆転勝利が実現し、ラザルス・チャクウェラ大統領が誕生しました。平和裏に歴史を重ねてきた国ですが、経済・社会開発は遅れており、世界で最も貧しい国の一つです。人口の8割以上が農業に従事していますが、大部分が小規模農家であり、天候不良や価格変動などに対して極めて脆弱で、主要輸出作物であるタバコへの依存からの脱却や農業生産性の向上、高度化が不可欠です。運輸・交通、電力、給水等のインフラ整備や維持管理も、未だ立ち遅れています。教育、保健医療の水準も低く、課題は山積しています。これらの課題に対し、JICAでは「農業の産業化の促進」、「自律的な成長を担う人材の育成」、「気候変動や都市化を念頭においた成長の基盤整備」を三本柱として、技術協力・海外協力隊派遣等を通じた人づくりや資金協力を通じたインフラ整備等による協力を展開しています。

私自身は2021年6月、コロナ禍の最中に着任しました。上述のとおり世界の最貧国の一つであり、課題は山積ですが、人々は穏やかで、人口の約半数が18歳以下という潜在的な活力のある国でもあります。コロナ禍は人々の生活に様々な影響を及ぼし、そのインパクトは今後も続くでしょう。現場に現れる様々なニーズ、変化を捉えつつ、マラウイがコロナ禍を乗り越え、発展していくための協力を推進していきます。

マラウイ事務所
所長 丹原 一広