初等教育施設改善計画(第1次〜第4次)

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モンゴルの純就学率は初等教育で92.7%、前期中等課程を含む基礎教育全体で89.9%に達しています(2007年)。しかし、市場経済化の進展に伴う急速な都市への人口移動や就学年限の拡張による生徒数の増加に対して教育施設の整備は遅れており、教育環境の悪化が深刻化しています。

特に、人口のほぼ4割が集中する首都ウランバートルでは地方からの人口流入によって2000〜2007年の間に人口が約1.3倍となり、普通教育生徒数が2.2万人増加したほか、政府の積極的な土地分与策もあって周辺部での市街地の拡張が急速に進んでいます。このため、通学圏内に学校がなく児童が遠距離通学や寄宿による就学を強いられる地区が増えており、人口急増地区を担当学区とする学校では1クラス50人を超える過密状態や3部制での授業を余儀なくされている学校もあるほか、ほとんどの学校で特別教室や廊下・ホール等を一般教室に転用して教室不足を補う状況にあります。また、2008年には初等教育入学年齢が6歳に引下げられて前年を9%上回る児童が入学(ウランバートル市教育局、暫定集計値)しており、これに対応する施設拡充が喫緊の課題となっています。

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新しい校舎で授業を受ける生徒たち

こうした状況に対し、モンゴル国政府はマスタープランの中で制度改革に伴う生徒数増に対応するとともに地域間の格差解消に配慮した教育施設の量的整備を主要施策の一つに掲げ、2015年までに全国で6.9万席分の教育整備が必要として、教育分野の投資予算を大幅に増加させ、ドナー資金による計画も含めた年度実施計画を策定して施設整備を本格化しています。日本政府も1999年以降ウランバートル市、ダルハン市、エルデネット市において第1次〜第3次初等教育施設整備計画を実施し、ウランバートル市で33校、ダルハン市・エルデネット市で10校の施設整備を行うことで、上記状況の一定の改善に寄与してきました(第1次、3次はウランバートル市、第2次はダルハン市、エルデネット市が対象)。しかしながら、モンゴルでは、その後も増え続ける人口増加や学制改革による生徒数増に見合った規模の施設を自国の財源のみで整備することが依然として困難な状況にあることから、第4次初等教育施設整備計画として2010年から2013年にかけてウランバートル市で新築5校及び増築7校の学校建設に取り組んでいます。