所長あいさつ

アフリカ大陸の南西部に位置するナミビア共和国。

西側に大西洋を眺み、南アフリカ・ボツワナ・ザンビア・アンゴラの4か国に隣接している国です。ナミビア共和国の年間の降雨量は平均400mm程度、また南極付近から回流する冷たいベンゲラ海流の影響で、国土の大半は乾燥した砂漠と冷涼な高原で占められています。日本ではまだ馴染みの少ない国ですが、世界最古と言われる美しい「ナミブ砂漠」、そしてそこに1000年以上も自生するとされる奇妙な植物「ウエルウイッチア」(和名「奇想天外」)など、この国ならではの観光資源に恵まれています。野生動物や豊かな自然を楽しめる自然公園もあり、海外から毎年多くの観光客が訪れます。

ナミビア共和国は、1990年に南アフリカ共和国から独立しました。ダイヤモンドやウランという地下資源に恵まれ、牛肉や水産物等の輸出で外貨を稼ぎ、国民一人当たり所得は5000ドルを超える高中所得国に位置付けられています。独立後に民主的な政治、健全なマクロ経済が営まれてきたこともあり、平均余命、所得、教育といった人間開発指数に大きな改善が見られました。国内では人種・民族間の対立は見られず、穏健で融和的な政権運営が行われています。しかし、ジニ係数が世界1~2位と言われるほど少数の豊かな層と多数の貧しい層に二極化しており、平均で30%、若者層(16~35歳)は40%近い高い失業率という厳しい現実に直面しています。

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前列左が洲崎支所長

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ナミブ砂漠にある絶景、デッドフレイ

ナミビア政府は2021年に貧困・経済格差削減促進計画(Harambee Prosperity PlanII:HPPII)、2017年には第5次国家開発計画(NDP-5:2017/18~2021/22)を発表し、貧困撲滅、汚職撲滅といったスローガンのもとに安定的な民主国家、経済発展、経済格差の是正を優先課題に取り組んでいます。2017年に我が国の対ナミビア開発協力方針の改定を行い、HPPII,NDP-5を踏まえ、「持続的な経済成長を支える産業基盤整備」、「地方農村部における貧困削減・生計向上への貢献」を重点分野とする方針としています。

JICAは2005年12月にナミビア共和国に現地事務所を開設しました。これまでに小学校教育、PCインストラクター・コンピューター技術、建築・土木、稲作栽培、服飾といった分野で計146名のJICA海外協力隊員を派遣しています。新型コロナウイルスの影響で2020年には全ての協力隊員が帰国を余儀なくされましたが、現在は任地の医療状況等を慎重に判断しながら隊員派遣を再開しています。また、専門家による技術協力を通して地方農村部の生活向上支援と共に、経済成長のためのインフラ整備支援を実施しています。2015年1月に新設された在ナミビア日本国大使館とも引き続き密接に連携し、今後もナミビア共和国の開発課題に対する支援を推進していきます。

JICAナミビア支所長 洲崎毅浩