草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。
今回は、パレスチナで環境保全型節水農業に基づいたオリーブ製品の品質向上と地域社会安定のための支援に取り組む、社団法人 日本国際民間協力会(NICCO)の吉田真由美さんに筆を執っていただきました。
はじめまして。パレスチナで活動している、NICCOの吉田です。歴史的にオリーブ栽培が行われているパレスチナの中でも、特に水不足に苦しみ、貧困層農家が多く、イスラエル占領下において物流や市場確保の困難などの問題を抱えるトバス県の6つの村で活動しています。パレスチナにおいては身近な存在であるがために、現状では「食用油」のレベルに留まっているオリーブオイルですが、農家や搾油工場への技術指導や協働システムを構築することでオリーブオイルの中でも高品質である「エキストラバージン」のレベルに引上げ、市場付加価値を付し、国内及び国際市場に進出することを目指しています。
トバス事務所でメールをチェック
それでは早速、私のある1日をご紹介いたしましょう。
今日は対象農家のオリーブを搾油する第四日目で、4件の農家の搾油を実施します。農家が前日から収穫し、収穫箱に収納したオリーブの実を効率よく搾油工場まで運び込みます。搾油工場の繁忙期である現在、工場側に負担をかけないよう、スピーディーに作業を行うことが重要です。概して、生活ペースが緩やかで、時間厳守を重視しないアラブ気質の農家との調整は根気が要りますが、効率重視で調整に励もうと思います。
起床、身支度。
住居から徒歩数分のトバス事務所に出勤。まずはスタッフ一同で一日の予定の流れや、それぞれの担当業務について整理します。
メールの整理や事務作業を終えて一息ついたところで、今日オリーブの回収を行うアッカーバ村の連絡委員会メンバーを通じて、各農家の収穫状況や回収可能時間について、電話で最終確認を行います。
オリーブオイルを貯蔵するステンレス製容器とサプライヤー
NICCO職員3名で、搾油を行う隣県ジェニンの工場に到着。工場管理者と今日の予定について確認します。絞られたオイルを収納するステンレス製缶容器や、分析用のサンプルを収納する容器等の準備をして、農家の到着を待ちます。
工場の労働者と一緒に、ホブズ(現地で一般的なピタパンのようなパン)とホンモス(ひよこマメをすりつぶしたものを、ヨーグルトと和えた食べ物)、ピクルスなどの簡単なランチをとります。とれたてのオリーブオイルをかけて食するホンモスは格別に美味です。
採れたてのオリーブの酸度を分析中
各農家が、オリーブ収穫箱をトラクターに積んで到着します。まずは農業エンジニアである現地スタッフがオリーブの実の品質を目視チェック。オイルの劣化を防ぐために温度を30度以下に抑えて搾油する「コールドプレス」という方法で搾油を開始します。その後エキストラバージンが出来上がったことを確認するために、現場で酸度の簡易分析を行います。分析結果によると、今日も4名の農家全員が、無事にエキストラバージンを製造できたようです!
全作業が終了。各スタッフが帰途につきます。
自宅に到着後、シャワーを浴びてリフレッシュ。その後近所にお茶を飲みにでかけ、家族のような暖かい人々に囲まれて、一日の疲れを癒します。
自宅で再びパソコンに向かい、今日の搾油データの取り纏めをしたり、今後の予定を考えたりして、ゆっくりと頭の整理をします。
就寝
過去3回実施した搾油作業の立会いでは、参加農家数が多い日は23時まで作業が続いたりしましたが、今日は順調に作業が進行し満足でした。搾油そのものは全農家分を終了して、計28農家がエキストラバージンオイルを製造しましたが、せっかく出来上がった高品質のオイルが台無しにならないよう、バイヤーに引き渡すまでの間、適切な環境下で貯蔵することが重要です。今後展示会や販促活動を通じて、トバスオリーブオイルが国際マーケットを開拓していくことに地元農家も大きな期待を抱いています。
時には農家同士で口論が始まります
収穫シーズンには、収穫したてのオリーブを少しでも早く搾って、新鮮なオイルを家族で楽しもうと、農家が家族ぐるみで搾油工場に詰めかけます。大抵の農家は収穫を昼間に終えて、夕方以降に搾油工場にオリーブを運搬し、自分のオイルが搾られるまで、お茶を飲んだりおしゃべりしたりして時間をつぶします。しかし時には搾油の順番をめぐって争いになることもあり、NICCOの裨益農家が激しい口論を始めた時には、対応に戸惑ってしまいました。しかしアラブ人の素晴らしいところは、事態が収束した後は何事もなかったように口論の当事者達が笑顔で黙々と働き、互いに冗談を言い合いながら、いつの間にかけろっと仲直りしてしまう陽気さと寛容さだと思います。このように大きな心と逞しさの両方を持ち合わせたアラブ人と一緒に仕事をしていると、自分もちょっとした障害や問題があってもめげない精神力が蓄えられるような気がします。また、アラブ人が時間にルーズであっても、困っている人のために立ち止まったり、時間に囚われずに物事を楽しんだりする心の余裕があるからこそだと肯定的に解釈することにより、あまり神経質にならないよう努めています。
NICCOは1979年の設立以来、地球規模の視野に立ち、途上国の人々の経済的・精神的な自立を図るため、途上国の現場でともに生活しながら、パーマカルチャー(持続可能な環境デザイン手法)に基づく村落開発、職業訓練、緊急災害支援、難民支援等の分野でプロジェクトを展開してきました。現在マラウィ、パレスチナ、ヨルダン、イラン、アフガニスタン、中国四川省において活動中です。今後も特定の宗教や政治的立場には一切関与せず、人種と国境を越えて人道主義に基づく支援活動を展開して行きます。
次号(第45号)は、ネパールで社会的弱者の生計向上の支援を行いながら災害に強い地域づくりに取り組む特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会の藤封カ子さんの1日をご紹介します。2009年1月15日に掲載予定です。お楽しみに!