ミャンマー連邦共和国向け円借款契約の調印

−インフラ整備を通じて、国民の生活向上と経済活動を支援−

2013年6月7日

国際協力機構(JICA)は、6月7日、ミャンマー連邦共和国の首都ネピドーにて同国政府との間で、総額510億5,200万円(計3件)を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

ウィン・シェイン財務歳入大臣(右から2人目)と荒川博人JICA理事同席の下、マウン・マウン・ウィン財務歳入省予算局局長(右端)と田中雅彦JICA所長が署名。

2011年3月に発足したテイン・セイン政権は、民主化・法の支配の強化・国民和解に向けた取り組みに加え、管理変動相場制導入や貿易自由化推進等の経済改革を続けています。このようなミャンマー政府の努力に対し、わが国は延滞債務の解消のための措置を行い、ミャンマーの国際社会への復帰を支援しています。さらに、ミャンマーの持続的な発展のため、同国が抱える以下の課題に対して、25年ぶりに新規円借款を供与します。

現政権下では、地方開発・貧困削減が重要方針に掲げられ、全国の貧困率を現状の26パーセントから、2015年までに16パーセントに削減する方針を示しました。ミャンマー全体の開発・貧困削減の促進のためには、ヤンゴン等の大都市のみならず、貧困層が多く居住する地方部(少数民族地域含む)への支援が不可欠であり、地方部の発展の妨げとなっている生活基盤のインフラ整備が課題となっています。

経済面においては、欧米による経済制裁解除や、ミャンマー国内の経済改革への期待による投資・貿易促進などにより、経済成長率は2012年に6.2パーセントを達成、2013年も6.3パーセントの成長が予測されています。しかしながら、ミャンマーのインフラ整備の現状は、他のアセアン諸国と比べて低い水準にとどまっており、さらなる経済成長や投資のボトルネックとなっています。特に、経済都市であるヤンゴン地域は、今後、ますますの経済活動の活発化が予測されるところ、企業や国民の経済活動を支える安定的な電力供給や物流インフラの整備が急務となっています。

このような状況を踏まえ、今回、貸付契約を調印した3件の円借款の特徴は、以下の通りです。

(1)少数民族地域を含めたミャンマー全国で、生活基盤インフラを整備

ミャンマーでは新政権の下、国民和解に向けた改革努力が進められており、例えば2012年1月にはミャンマー政府と、カレン民族同盟との間で63年ぶりに停戦合意が結ばれるに至りました。こうした国民和解に向けた改革を後押しするためにも、地方部における経済開発および貧困削減が進められる必要があります。

「貧困削減地方開発事業(フェーズ1)」は、ミャンマー全国7地域および7州において、緊急性の高い生活基盤インフラ(道路、電力、給水)を新設・改修することにより、地方部の住民の生活向上と貧困削減に貢献します。

(2) 電力の安定供給で経済活動と国民生活を支援

ミャンマーでは、電力不足が深刻な問題で、特に、乾期(3月〜5月)には恒常的に停電が行われ、生活や経済活動の障害となっています。特に、最大の電力需要地であるヤンゴン地域は、今後、さらに経済活動が活発化することが予測されるところ、電力不足への対応が急務です。そのため、ミャンマー政府は、短期的な電力政策として、既設の電力設備改修等による停電の解消を重点項目に挙げています。

「インフラ緊急復旧改善事業(フェーズ1)」では、ミャンマーのヤンゴン地域の主要発電所や変電所を改修することにより、電力の安定供給を進め、特にヤンゴン地域の生活の改善と、経済活動の発展に貢献します。また、本事業は、ヤンゴン地域の経済中心地区にある主要電力設備を対象とした改修であり、同地域で活動する本邦企業への裨益も期待されます。

(3) 経済特別区が計画されているティラワ地区のインフラ整備を支援

ミャンマーは低廉で豊富な労働力やマーケットとしての有望性を見込まれていますが、脆弱なインフラ整備が外資誘致のボトルネックとなっています。

また、直接投資の拡大やさらなる貿易拡大等による雇用創出・経済発展を目指し、ヤンゴン圏ではティラワ経済特別区(SEZ)を含むティラワ地区の開発が進められています。今後急速な発展が見込まれるティラワ地区を含めたヤンゴン圏における、企業の経済活動や市民生活を支える物流インフラの整備や安定的な電力供給が課題となっています。

具体的には、経済成長に伴う輸出入の増加により貨物輸送量は急増し、現存するヤンゴン港では将来の貨物需要を充たすことが困難であり、南東部に位置するティラワ地区港の拡張が求められています。また、安定した市民生活や企業活動には電力の供給が欠かせませんが、ティラワ地区の電力設備はヤンゴン地域の中心エリアよりも遅れており、今後の経済活動の活発化を踏まえ、早急な対応が必要です。

「ティラワ地区インフラ開発事業(フェーズ1)」では、港湾ターミナルの設備および電力関連施設を整備することにより、同地区の経済活動や市民生活の向上・発展に貢献します。

2013年5月、安部総理大臣が日本の首相として36年ぶりにミャンマーを公式訪問しました。日本・ミャンマー首脳会談では、テイン・セイン大統領は、民主化、法の支配の強化、経済の改革、国民和解といった諸課題の解決に向け今後とも全力をあげて取り組んでいくことを確認し、安倍総理大臣は官民を挙げてこれらの取り組みを支援することを改めて表明しました。

JICAは今後とも、円借款、技術協力や無償資金協力などの多様なODAスキームを一体的に運用しながら、ミャンマーの抱える諸課題の解決に向け、機動的に取り組んでいきます。

(参考)

借款金額および条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利
(%/年)
償還期間(年) 据置期間(年) 調達条件
本体 コンサルティング・サービス
(1)貧困削減地方開発事業 (フェーズ1) 17,000 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド
(2)インフラ緊急復旧改善事業(フェーズ1) 14,052 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド
(3)ティラワ地区インフラ開発事業 (フェーズ1) 20,000 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド

(1)貧困削減地方開発事業(フェーズ1)
Regional Development Project for Poverty Reduction Phase I

(事業の背景と必要性)
ミャンマーは、経済改革を推し進めていく中で、特に都市部と地方部の経済格差が課題となっています。同国の貧困層の85パーセントは地方部に居住しており、また、インフラ整備の現状は、他のアセアン諸国と比べて低い水準にとどまっています。例えば、全国平均の道路舗装率は11.9パーセント、電化率は26パーセントであり、国民の3割は安全な水にアクセスできていません。加えて、地方のインフラ整備はさらに遅れており、例えば、地方部における電化率は16パーセント、安全な水にアクセスできない住民は4割に上るとされています。これらの低いインフラ整備水準は地方部における経済活動を妨げ、貧困削減の阻害要因となっており、生活基盤インフラの整備が緊急の課題となっています。

(事業の目的と概要)
本事業は、ミャンマー全国7地域および7州において、貧困層への裨益効果が高く、また緊急性の高い生活基盤インフラ(道路、電力、給水)の新設・改修を行うことにより、地方部の住民の生活向上を図り、もって地方部における開発・貧困削減に寄与するものです。

(事業実施機関)
〈1〉関係中央省庁・地方政府を取りまとめる総合監督を担う実施機関
国家計画・経済開発省対外経済関係局(Foreign Economic Relations Department, Ministry of National Planning and Economic Development)
住所:Building No.1, Nay Pyi Taw
TEL:+95-67-407027
〈2〉道路サブプロジェクトの実施機関
建設省公共事業局(Public Works, Ministry of Construction)
住所:Building No.11, Nay Pyi Taw
TEL:+95-67-4074701
〈3〉電力サブプロジェクトの実施機関
電力省地方配電公社(Electricity Supply Enterprise, Ministry of
Electric Power)
住所:Building No.53, Nay Pyi Taw
TEL:+95-67-431273
〈4〉給水サブプロジェクトの実施機関
国境省地方開発局(Department of Rural Development, Ministry of Border
Affairs)
住所:Building No.14, Nay Pyi Taw
TEL:+95-67-409408

(今後の事業実施スケジュール〈予定〉)
(i)事業の完成予定時期:2016年6月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス招請状送付予定時期:2013年6月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示予定時期:2014年8月

(2)インフラ緊急復旧改善事業(フェーズ1)
Urgent Rehabilitation and Upgrade Project Phase I

(事業の背景と必要性)
ミャンマーでは、水力発電の割合が発電電力量の7割以上を占め、水力発電偏重の電源構成であることから、乾期には、電力不足に陥りやすい状況です。そのため、乾期の水位低下時は、ヤンゴン地域ではガス火力発電所が発電電力量に占める割合が高まっているものの、経年劣化等により発電可能電力が定格出力の7割程度にとどまっています。また、既存送変電設備は建設時から数十年を経た設備も見られ、今後、経年劣化による設備不具合の顕在化や事故の頻発、電力ロスの増大等が懸念されます。

なお、ミャンマーの最大供給実績は約1,500メガワット(うち、ヤンゴン地域への供給は約700メガワット)ですが、輪番停電を恒常的に行っており、潜在需要は2,000メガワットを超えると推定されています。今後、経済発展により需要が伸びることが予想されているところ、電力不足への対応が緊急の課題となっています。

(事業の目的と概要)
本事業は、ヤンゴン地域の火力発電所および変電所の改修により、出力増強・効率化を通じた電力供給状況の改善を図り、もって同国の産業振興を通じた経済開発に寄与するものです。

(事業実施機関)
電力省ミャンマー電力公社(Myanma Electric Power Enterprise, Ministry of Electric Power)
住所:No.27 Building Nay Pyi Taw
TEL:+95-67-410202

(今後の事業実施スケジュール〈予定〉)
(i)事業の完成予定時期:2018年1月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス招請状送付予定時期:2013年6月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示予定時期:2014年8月

(3)ティラワ地区インフラ開発事業(フェーズ1)
Infrastructure Development Project in Thilawa Area Phase I

(事業の背景と必要性)
ミャンマーは、2011年3月のテイン・セイン政権発足後、管理変動相場制導入や貿易自由化推進等の諸改革を続けており、近年急速な経済成長を遂げています。特に、同国最大の都市であるヤンゴン市に隣接するティラワ地区はヤンゴン都市圏の拡大やティラワ経済特別区(SEZ)の開発に伴い今後急速な発展が見込まれています。しかし、同地区では企業活動や市民生活の妨げとなるインフラ整備が課題になっています。

今後、経済成長に伴い貨物輸送量は急増する見込みですが、現存するヤンゴン本港では将来の貨物需要を充たすことが困難であり、これに対応するため、ヤンゴン本港から南東部に位置するティラワ地区港の整備を通じた物流改善が急務となっています。また、ミャンマーでは、電力の供給不足による停電の頻発が続いており、特にティラワ地区では電力供給量不足や送配電網の未整備等、電力関連施設の整備がヤンゴン市に比べて遅れています。ティラワSEZの開発や周辺の開発が急速に進めば、さらに電力の供給不足に陥ることが見込まれます。これらの理由から、同地区では港湾、電力等の基礎的インフラの拡張・整備が喫緊の課題となっています。

(事業の目的と概要)
本事業は、ティラワ地区において、港湾ターミナルの設備および電力関連施設を整備することにより、港湾の輸送効率化および電力供給の安定化を図り、もって、同地区の直接投資の流入を促進し、ヤンゴン都市圏の発展および雇用創出を通じて、ミャンマーの経済成長に寄与するものです。

(事業実施機関)
(1)港湾サブプロジェクトの実施機関
運輸省ミャンマー港湾公社(Myanma Port Authority, Ministry of Transport)
住所: No.10, Pansodan Street, Yangon, Myanmar
TEL:+95-1-391310

(2)電力サブプロジェクトの実施機関
〈1〉電力省ミャンマー電力公社(Myanma Electric Power Enterprise, Ministry of Electric Power)
住所:No.27 Building Nay Pyi Taw
TEL:+95-67-410202
〈2〉電力省ヤンゴン配電公社(Yangon City Electricity Supply Board, Ministry of Electric Power)
住所:No.197/199, Lower Kyeemyintdaing Road, Ahlone Township, Yangon
TEL:+95-1-229144

(今後の事業実施スケジュール〈予定〉)
(i)事業の完成予定時期:2017年12月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス招請状送付予定時期:2013年6月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示予定時期:2014年8月