ベトナム社会主義共和国向け円借款契約の調印

−制度改善支援を通じた国際競争力強化と脆弱性への対応−

2014年3月6日

国際協力機構(JICA)は、3月6日、ベトナム社会主義共和国政府との間で、総額250億円(計2件)を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

調印式の様子

ベトナムは、1990年代以降順調に経済成長を続けており(参考1)、国家目標であった2010年までの低中所得国入りを達成するとともに、貧困削減の実績を挙げてきました(貧困率は1998年の37.4パーセントから2010年には14.2パーセントまで低下)(注)。2015年にはASEAN域内関税の撤廃が予定される中、引き続き持続的な経済成長を遂げるためには、インフラ整備を通じた投資環境の整備に加え、金融システムの改善等の経済構造・行政制度の改革を通じて中長期的にマクロ経済の安定化を図り、国際競争力を強化する必要があります。他方で、都市部に比べて貧困率が高く全人口の約7割を占める農村住民の所得向上や、都市化に伴い悪化する公衆衛生環境の改善、世界で最も影響を受けやすい国の一つといわれる気候変動の影響緩和・適応といった、経済・社会面や環境面などの脆弱性への対応も必要です。

(注)出所:General Statistics Office “Vietnam Living Standards Survey”

このような状況のもと、今次円借款では、国際競争力の強化および脆弱性への対応の両面から、財政支援と政策対話等を通じて政策制度改善を支援します。主な特徴は以下の通りです。

(1)第2次経済運営・競争力強化借款は、今後、労働集約型の産業構造から脱却し、産業の高付加価値化を図る上で必要な、公共政策・経済分野における政策制度改革について、財政支援と政策対話等を通じてその着実な実行を支援するものであり、世界銀行等との協調融資を予定しています。具体的には、金融システムの改善、国営企業の経営効率改善、公共財政管理の強化、ビジネス環境の整備等の分野で政策制度の改善を支援するものであり、ベトナムに進出する日本企業への裨益も期待されています。

(2)気候変動対策支援プログラム(IV)は、約3,400キロメートルに及ぶ長い海岸線、広大なデルタ地帯を有し、気候変動の影響を最も受けやすい国の一つに挙げられているベトナムにおいて、気候変動の緩和、適応、分野横断的課題に対し、財政支援と政策対話等を通じてその着実な実行を支援するものであり、世界銀行やフランス開発庁等との協調融資を予定しています。具体的には、省エネ推進や水資源管理体制強化、気候変動対策に対する公共投資を促進するための資金メカニズム構築といったベトナム政府の取り組みへの支援を通じ、災害リスク低減による持続的な経済発展に加え、地球全体の気候変動対策に寄与するものです。

JICAは今後とも、円借款、技術協力や無償資金協力などの多様なODAスキームを一体的に運用しながら、ベトナムの開発課題に対して機動的に取り組んでいく方針です。

<参考1> ベトナム:成長パフォーマンス

【画像】

<参考2>借款金額および条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利
(%/年)
償還期間(年) 据置期間(年) 調達条件
本体 コンサルティング・サービス
(1)第2次経済運営・競争力強化借款 15,000 1.4 - 30 10 一般アンタイド
(2)気候変動対策支援プログラム(IV) 10,000 0.3 - 40 10 一般アンタイド

(1)第2次経済運営・競争力強化借款
Economic Management and Competitiveness Credit(II)

(事業の背景と必要性)
ベトナムは、マクロ経済安定化を重視する政策により、2011年から2012年は年平均5.5パーセント程度のGDP成長率にとどまったものの、1990年から2010年にかけては年平均7.0パーセントを超えるGDP成長率を達成し、これまで順調な経済発展を遂げています。また、2010年には一人当たりGDPが1,000ドルを超えて低中所得国入りを果たし、貧困率も1998年の37.4パーセントから2010年には14.2パーセントまで低下しています。しかしながら、経済成長を支えてきた労働集約型産業を中心とする産業の生産性停滞が懸念されているほか、2015年に完全発効するASEAN域内および対中国貿易における関税撤廃や後発ASEAN諸国の台頭により、ASEAN域内での競争激化が想定されており、今後ベトナムが国際競争力を強化していくためには、労働集約型の産業構造から脱却し、産業の高付加価値化を図ることが不可欠になっています。また、短期的には改善していますが、ベトナムは、恒常的な貿易収支赤字、自国通貨安、インフレ、外貨準備高不足、財政赤字など構造的なマクロ経済上の課題を抱えています。ベトナムが、中長期的にマクロ経済の安定化を図りつつ競争力を強化し、持続的な経済成長を実現するためには、産業構造の転換に加えて、公共財政管理の強化、脆弱な金融システムの改善、国営企業の経営効率向上など抜本的な経済構造改革および改革を支える行政制度の改善が必要とされています。

(事業の目的と概要)
本事業は、金融セクターの安定化、財政規律の強化、行政改革、国営企業の運営改善、公共投資の改善、ビジネス環境整備などの各種政策制度改革について、財政支援と政策対話等を通じてその着実な実行を支援することにより、同国の経済運営・競争力の強化を図り、もって持続的成長および貧困削減に寄与するものです。

なお、2013年3月に本事業の第1期に当たる「第1次経済運営・競争力強化借款」(150億円)に係る円借款を供与しています。第2期に当たる本事業は、2013年2月から2014年1月の間の各種政策改革に係る良好な達成状況を評価し、ベトナム政府のさらなる取り組みを後押しするために供与するものです。JICAは、本事業が支援する各種政策制度改革について、技術協力や無償資金協力を通じて、政策制度の策定や執行強化に関する支援を同時に実施しています。

本事業は、世界銀行等との協調融資であり、借款資金は一般物資の輸入に要する外貨の決済資金に充当されます。

(事業実施機関)
ベトナム国家銀行(State Bank of Vietnam)
住所:47-49 Ly Thai To, Hanoi, Viet Nam
TEL:84-4-3934-3361 FAX:84-4-3825-0612

(今後の事業実施スケジュール 〈予定〉)
(i)事業の完成時期:2014年3月(貸付完了時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス:本事業においてはコンサルタント雇用を予定していません。
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:本事業においては、入札を伴う工事は想定されていません。


(2)気候変動対策支援プログラム(IV)
Support Program to Respond to Climate Change(IV)

(事業の背景と必要性)
1986年のドイモイ(刷新)政策導入以降、ベトナムでは急速な経済成長により、エネルギー需要(最終消費量)の増加が続いており、エネルギー分野からの温室効果ガス(GHG)排出量の増加率(1990年-2006年)は、アジア主要諸国の中で最上位となっています。従って、GHG排出削減に向けた、再生可能エネルギー開発・利用の促進、省エネルギーの振興、森林面積の減少抑制等の対策の具体化が急務となっています。

また、ベトナムは約3,400キロメートルに及ぶ長い海岸線と、広大なデルタ地帯を有しており、気候変動の影響を最も受けやすい国の一つに挙げられています。世界銀行の“The Impact of Sea Level Rise on Developing Countries:A Comparative Analysis”(2007)によると、今後、仮に1メートルの海面上昇が起こると、人口の約11パーセントが影響を受けるとともに、GDPの約10パーセントを失うと予測されており、将来の気候変動に伴う災害の発生頻度の増加・深刻化は、同国の持続的な開発にとっての大きなリスク要因となることが懸念されています。

(事業の目的と概要)
本事業は、ベトナム政府の気候変動対策について財政支援と政策対話等を通じて支援することにより、〈1〉GHGの吸収・排出抑制による気候変動の緩和、〈2〉気候変動の悪影響に対する適応能力強化、〈3〉気候変動に係る分野横断的課題への対応を図り、もって同国の気候変動に伴う災害等リスク低減による持続的経済発展に寄与すると同時に、地球全体の気候変動緩和にも寄与するものです。

なお、2010年6月には本事業第1期(100億円)、2011年11月に本事業第2期(100億円)、2013年3月に本事業第3期(150億円)に係る円借款を供与しています。本事業第4期は、上記〈1〉から〈3〉の3項目における各種政策制度整備について、2012年8月から2013年8月の間の良好な達成状況を評価し、ベトナム政府のさらなる気候変動対策を後押しするために供与するものです。

本事業は、世界銀行やフランス開発庁等との協調融資であり、借款資金は、一般物資の輸入に要する決済資金に充当されます。

(事業実施機関)
天然資源環境省 (Ministry of Natural Resources and Environment)
住所:10 Ton That Thuyet, Cau Giay District, Hanoi, Vietnam
TEL:84-4-3773-2731  FAX:84-4-8-359-211

(今後の事業実施スケジュール〈予定〉)
(i)事業の完成予定時期:2014年3月(貸付完了時をもって事業完成)
(ii)本コンサルティング・サービス招聘状送付予定時期:本事業においてはコンサルタント雇用を予定していません。
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:本事業においては、入札を伴う工事は想定されていません。