インド向け円借款契約の調印

−インドのさらなる発展のためインフラ整備を総合的に支援−

2014年4月2日

国際協力機構(JICA)は、3月31日、インド政府との間で計3件、総額1,830億7,900万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

2014年1月にニューデリーで実施された日印首脳会談においては、インドの社会・経済開発に向けた取り組みを促進すべく、わが国政府が政府開発援助(ODA)を活用して引き続き積極的に支援していくことが確認されました。今般調印された円借款は、こうした方針に基づき、首都デリーの地下鉄建設、世界遺産タージマハルを擁するアグラの水道整備、日本企業の進出が著しいハリヤナ州の電力安定供給を支援するものです。

インフラの整備は、インドの経済成長における最重要課題のひとつになっています。インド政府は、第12次5ヵ年計画(2012〜2017年)中に、約1兆ドルのインフラ整備を進める方針であり、その実施のために、日本や国際機関等に支援を求めてきています。今般供与された円借款はこうしたニーズに応えるものです。

今回調印した円借款の特徴は以下のとおりです。

(1)デリーの地下鉄(デリーメトロ)のさらなる拡充を通じ首都圏の交通需要に対応

1997年に建設が開始されたデリーメトロは、第1期および第2期事業により、デリーを東西および南北に走る190キロメートルの区間で運行されており(東京メトロの営業キロ数と同程度)、女性専用車の導入、初乗り8ルピー(約13円)という安価な運賃設定、運行の定時性等が評価され、市民の足として定着しています。毎年乗客数が増え続け、2013年8月には1日の乗客数が260万人に達しており(大阪地下鉄の乗客数と同程度)、環状線等のさらなる整備が第3期として計画され、2016年開業を目標に整備が進んでいます。「デリー高速輸送システム建設事業(フェーズ3)(II)」は、事業の第3期計画の実施を支援するものであり、本事業を通じて、経済成長とともに交通需要が続伸するデリー都市圏にて、交通混雑の抑制に寄与することが期待されます。

デリーメトロの建設に当たっては、これまでに本邦建設会社およびコンサルタントの参画によって日本式の現場管理が行われ、労働安全への配慮、工期遵守といった日本式の工事文化が定着しています。また本第3期区間においては、本邦企業の無線通信技術を利用した列車制御システムの導入が予定されています。本件は2007年に円借款貸付契約を調印した「デリー高速輸送システム建設事業(フェーズ3)」(承諾金額:1,279.17億円)に続く、第3期計画に対する2度目の借款供与となります。

(2)日本企業の進出が進むハリヤナ州で電力の安定供給を支援

インド政府は、国内エネルギーの効率的利用を通じてエネルギーを安定的に供給するため、省エネルギー政策の推進や再生可能エネルギーの利用拡大や、送配電設備の改善等に取り組んでいます。日本としても、日印エネルギーフォーラムや日印エネルギー対話等を通じて、インドの環境・エネルギー政策に対して積極的に支援していくことを表明しています。

「ハリヤナ州配電設備改善事業」は、工業団地を中心に本邦企業の進出が盛んなグルガオンやマネサールを擁するハリヤナ州において、配電設備の改善を行い、配電ロスの低減を通じた電力の安定供給を目指すものです。

(3)世界的観光地であるアグラ市に対する安全な上水の供給に寄与

インドは、第12 次5 ヵ年計画にて「インド全土での飲料水への持続的なアクセスの確立」を目標の一つに掲げているものの、人口増加や経済発展に伴う水道使用量の増加に対し、水源開発および上水道整備が追い付かず、1日平均給水時間は大都市でも数時間程度であり、日本で実現されているような24時間連続給水とは大きく状況が異なります。世界遺産タージマハルで有名な観光都市であるアグラ市は、インドの中でも水質汚染が著しいヤムナ川に水源を依存しているために、短い給水時間の問題に加えて、水質の問題も大きな社会問題になっています。

「アグラ上水道整備事業(II)」は、こうした状況を打開すべく、ガンジス川上流を水源とする灌漑水路からアグラ市とその周辺地域へ直接導水する施設を建設し、また、アグラ市の既存の上水道施設の改修・拡張を実施するものです。貧困層を含むアグラ市民の生活環境改善が期待されるとともに、世界遺産タージマハルを擁する同市を訪れる多くの観光客に対しても裨益が見込まれます。本件は2007年に円借款貸付契約を調印した「アグラ上水道整備事業」(承諾金額:248.22億円)の借款第2期分となります。

(参考)借款金額および条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利
(%/年)
償還期間(年) 据置期間(年) 調達条件
本体 コンサルティング・サービス
デリー高速輸送システム建設事業(フェーズ3)(II) 140,000※ 1.40 0.01 30 10 一般アンタイド
ハリヤナ州配電設備改善事業 26,800 0.80 20 6 一般アンタイド
アグラ上水道整備事業(II) 16,279 1.40 0.01 30 10 一般アンタイド

※2015年5月12日に148,887百万円へと8,887百万円増額変更。




(1) デリー高速輸送システム建設事業(フェーズ3)(II)
Delhi Mass Rapid Transport System Project Phase 3(II)

(a)事業の背景と必要性
インドでは近年急速な都市化が進み、自動車および二輪車の登録台数が急激に増加している一方で、公共交通インフラの整備が遅れています。特に、デリー、コルカタ、チェンナイ等の大都市では、道路交通需要の拡大に伴う交通渋滞が重大な問題となっており、経済的な損失だけでなく、大気汚染・騒音等の自動車公害による健康被害が深刻化しています。そのため、交通渋滞緩和および都市環境の改善を図るための公共交通システムの整備が喫緊の課題となっています。インド政府はこの課題に対応するため、第12次5ヵ年計画(2012〜2017年)において、公共交通システムの整備を重視しており、鉄道事業に対して5年間で1兆3,000億ルピーの投資を計画しています。

デリー首都圏の人口は、1991年の942万人から急激に増加し、2011年には1,675万人に達しており、さらに2021年には2,432万人に達すると見込まれています。それに伴い自動車登録台数も急増し、市内主要道路における平均時速は約15キロメートルとなり、東京(約20キロ毎時)、ニューヨーク(約30キロ毎時)といった各国の大都市と比べても深刻な状況となっています。一方、用地不足から道路網の拡充が難しいため、バスなどの既存の公共交通の輸送能力を増加させることができていません。このため、交通渋滞緩和および自動車公害対策を目的として、1997年以降「デリー高速輸送システム建設事業」および「デリー高速輸送システム建設事業(フェーズ2)」を通じて整備してきた大量高速輸送システムの路線網のさらなる拡張が、デリー準州政府の都市交通政策・都市環境問題対策の大きな柱となっています。 デリーメトロの建設に当たってはこれまでに、本邦建設会社およびコンサルタントの参画によって日本式の現場管理が行われ、労働安全への配慮、工期遵守といった日本式の工事文化が定着しています。また本第3期計画区間においては、本邦企業の無線通信技術を利用した列車制御システムの導入が予定されています。

(b)事業の目的と概要
本事業は、インドのデリー首都圏において、総延長約116キロメートルの大量高速輸送システムを建設することにより、増加する輸送需要への対応を図り、もって交通混雑の緩和と交通公害減少を通じた地域経済の発展および都市環境の改善、ならびに気候変動の緩和に寄与することを目的としています。本事業第3期計画に対しては、円借款を供与済みであり(2012年3月貸付契約調印、1,279.17億円)、今回は工事費や機材購入費等の資金需要に対応する2度目の円借款となります。

借款資金は、土木工事、電気・通信関連工事、車両調達などに充当されます。

(c)事業実施機関
デリー交通公社(Delhi Metro Rail Corporation Limited)
住所: Metro Bhawan, 13, Fire Brigade Lane, Barakhamba Road, New Delhi-110001, India
Tel: +91-11-2341-7910, Fax: +91-11-2341-8416

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2020年10月(全車両納入完了時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等):雇用済
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:契約済


(2) ハリヤナ州配電設備改善事業
Haryana Distribution System Upgradation Project

(a)事業の背景と必要性
インドは、近年の急速な経済成長に伴い世界第5位の日本を凌ぐ、世界第4位のエネルギー大量消費国となっていますが、電力の供給能力が需要の拡大に追いついていない状況が続いています。また、送配電のロス率が高く(2011年度のインド全国平均23.7パーセント)、貴重なエネルギー資源の浪費が大きい状況にあることに加え、電力供給インフラが十分でないために停電が頻発し、大きな問題となっています。

インド北部ハリヤナ州では、工業団地を中心に本邦企業を含む国内外の企業が進出していますが(2014年1月時点でハリヤナ州の日系企業拠点数は325で、タミル・ナド州、マハラシュトラ州に次ぐ第3位)、進出日本企業においては停電の回避、電圧の安定等の理由により、自社による専用線(変電所から事業所・工場等まで直接敷設される配電線)の導入や自家発電の保有を選択し、電力供給の安定を図る企業も多数ありますが、コストが高く、進出日本企業の収益を圧迫する要因となっています。加えて、同州では盗電やメーターへの不正細工等もあり、送電量から販売電力量を差し引いた配電ロス率が50パーセントを超える地区も多いことから、自動検針電力計(AMR)やメーターボックスを導入するなど既存の配電設備への追加的対策を講じる必要性が生じています。

(b)事業の目的および概要
本事業は、ハリヤナ州において、配電設備の改善を行うことにより、配電ロス低減および同州の電力安定供給の達成を図り、もって地域の経済発展および生活水準向上に寄与するものです。

借款資金は、特に配電ロスの低減効果が高いと見込まれる地域を対象として、配電ロス率の低減および高需要地域の配電設備整備のために、配電線の新設および張替、変電所の新設および増設、AMRメーターの導入、メーターボックスおよびメーターの設置、変圧器等予備品の購入に充当されます。

(c)事業実施機関
北部ハリヤナ配電公社(Uttar Haryana Bijli Vitran Nigam Ltd.)および南部ハリヤナ配電公社(Dakshin Haryana Bijli Vitran Nigam Ltd.)
住所: (北部ハリヤナ配電公社)Vidyut Sadan, Plot No.: C16, Sector-6,Panchkula, Haryana, India(南部ハリヤナ配電公社)Vidyut Sadan, Vidyut Nagar, Hisar, Haryana, India
TEL:(北部ハリヤナ配電公社)+91-172-2572-535, FAX: +91-172-3019-100
(南部ハリヤナ配電公社)+91-1662-2233-92, FAX: +91-1662-223098

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2019年6月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス:本事業においては、円借款によるコンサルタント雇用を予定していません。
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
本事業では、国際競争入札による調達は想定されておらず、国内競争入札などによる調達が行われる見込みです。


(3)アグラ上水道整備事業(II)
Agra Water Supply Project(II)

(a)事業の背景と必要性
インドでは、人口増加や経済発展に伴う上水使用量の増加に対し、水源開発および上水道整備が追い付かず、需要に対して供給が大幅に不足しています。インドと同様に経済発展の著しいブラジルや中国では、主要都市で24時間連続給水を達成している一方、インドでこれを実現した都市はいまだなく、不連続・不均等な給水(主要都市においても1日平均給水時間は1〜6時間程度)が恒常化しています。また、高い無収水率(約40パーセント以上)、低い料金設定、技術者不足等、運営・維持管理の面での技術的・財務的な課題を抱えています。

インド北部ウッタル・プラデシュ州アグラ市と周辺地域では、急激な人口増加(アグラ:2006年142万人、2021年290万人)に伴い、上水使用量が2021年には493MLD(百万リットル/日)に増加する事が見込まれるのに対し、現在は262 MLDの供給しかなされておらず、給水量の増加が喫緊の課題となっています。また、アグラ市と周辺地域への給水源であるヤムナ川は、上流に位置するデリーなどの大都市からの未処理下水流入によって水質汚濁が進んでいるため(インド政府の定める環境基準の2〜9倍以上の汚濁)、その浄化のために多量の塩素が使用されています。これにより浄化コストが高くなっていることに加え、健康面への影響が懸念されること等により、ヤムナ川は飲料水としての利用が避けられる傾向にあることから、新規の水源開発を通じた水質の改善も必要とされています。

(b)事業の目的および概要
本事業は、ウッタル・プラデシュ州において、ガンジス川上流を水源とする灌漑水路からアグラ市とその周辺地域への導水施設の建設、アグラ市の既存の上水道施設の改修・拡張等を行うことにより、安全かつ安定的な上水道サービスの提供を図り、もって同地域の貧困層を含む住民の生活環境の改善に寄与するものです。

(c)事業実施機関
ウッタル・プラデシュ州水道局(Uttar Pradesh Jal Nigam)
住所: 6, Rana Pratap Marg, Lucknow - 226001, India
TEL: +91 (0522) 2620172, FAX:+91 (0522) 2620173

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2017年12月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等):雇用済
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:契約済