バングラデシュ向け円借款契約の調印:さらなる経済成長と社会脆弱性の克服のため、6事業に過去最大規模の円借款を供与

2015年12月14日

署名式の様子

国際協力機構(JICA)は12月13日、バングラデシュの首都ダッカにてバングラデシュ人民共和国政府との間で6件、総額1,332億6,500万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

世界第8位の人口約1億6,000万人を擁するバングラデシュは、縫製、衣料関連産業の発展などにより、過去10年間で年平均6パーセントの経済成長を続けています。安価で豊富な労働力とその潜在的な市場規模などから、近年、有望な生産拠点、投資先となり得る新興国として、日本をはじめとする海外の企業から注目を集めています。しかし、急速な経済成長や都市化の進展に対して、電力の安定供給や道路ネットワークの構築などに必要なインフラ整備が追い付いておらず、投資環境も大幅な改善が求められ、さらなる経済成長を求めていくうえでの課題となっています。さらに、社会・行政サービスへの不均衡なアクセス環境による都市・地方の間の経済格差の拡大や、地震等自然災害に脆弱な建物が密集する都市部で災害が起きた場合の被害拡大への対処も重要な課題となっています。今回貸付契約に調印した6事業は、バングラデシュの更なる経済成長に向けた課題への取り組みや社会的脆弱性の克服に貢献することを主な目的としています。

これらの円借款事業の特徴は以下のとおりです。

(1)産業の多角化を促しさらなる経済発展を支援−投資環境改善による外国直接投資の促進−

バングラデシュは近年経済成長が著しく、過去10年にわたり年間6%を超える経済成長を実現しており、その原動力は輸出の8割を占める縫製業の存在にあります。しかしながら、縫製業は近年においてはますます国際競争にさらされ、また関連産業への波及効果も限られていることから、今後は縫製業のみに頼った産業構造では持続的な経済発展を実現することが困難になると考えられます。

このような状況から脱却し、さらなる経済成長を実現するためには、外国からの技術の導入を伴う投資を積極的に呼び込み、輸出競争力のある製造業の育成を通じた産業構造の多角化を図る必要があります。しかし、バングラデシュ国内で事業を操業する際の金融アクセスの悪さや基礎インフラの不足、煩雑な行政手続きなど、同国の投資環境には改善の余地があり、現在の外国直接投資は同国の潜在力から見れば十分な額とは言えない状況にあります。このような状況に対応するため、「外国直接投資促進事業」では、ツーステップローンやプロジェクトセクターローンなどのスキームを活用するほか、エクイティバックファイナンスの導入により、金融アクセスの改善や工業団地等の大型インフラ開発に関連したPPP事業の支援や、投資に関する行政手続きの簡素化への支援により、投資環境を改善することで外国直接投資を促進し、バングラデシュの経済発展に貢献します。

(2)ダッカ首都圏への電力の安定供給−ダッカ-チッタゴン基幹送電線の強化−

バングラデシュでは、国全体の電化率が約62パーセント(2013年)と低く、近年の高い経済成長に伴って、潜在的な電力需要は伸びているものの、供給能力はその約8割に留まり、恒常的に計画停電が実施されています。今後、電力需要は年率約8.5パーセントの増加が見込まれていますが、現在の発電燃料の約7割を占める国産天然ガスでは供給が追い付かないため、発電燃料の多様化による供給能力の増強が求められています。こうした状況に輸入石炭を利用した発電によって対応するため、バングラデシュ政府は「マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業(I)」(円借款、2014年度承諾)にて、チッタゴン管区に石炭搬入用の深海港を整備するとともに、その輸入石炭を活用する発電所の建設を計画しています。今回、貸付契約を締結した「ダッカ-チッタゴン基幹送電線強化事業」は高圧基幹送電線及び変電設備を敷設し、上記発電所で発電された電力をダッカへ送ることで、電力需要の約50パーセントを占めるダッカ首都圏への電力の安定供給を実現し、バングラデシュの経済発展に寄与します。

(3)西部橋梁の架け替えと新設−域内輸送網の安全性の向上と効率化−

近年の堅調な経済発展に伴って、過去30年間でバングラデシュの貨物取扱量は約8倍、旅客数は約6.5倍に増加し、今後も年率6パーセント程度の増加が見込まれています。また、全輸送モードの8割をトラック等による道路輸送が占めており、国内のみならず、周辺地域にとっても重要な流通ルートとなっています。しかし、全国の道路に架かる約3,800橋のうち約4割は、老朽化、維持管理不足、初期欠陥等により、通行不能なほどの構造的欠陥もしくは重大な損傷があるとされており、雨季には通行不能となる損傷橋梁や、大型・重量貨物車両の通行が困難な橋梁などが流通のボトルネックとなっています。「西部バングラデシュ橋梁改良事業」では、主に西部地域約60橋の架け替え及び新設を行い、西部地域における渡河の安全性、道路ネットワークの効率性を向上させることで、同地域の社会・経済発展の促進に貢献します。

(4)地域レベルから高次医療機関までの保健サービス向上を支援−母子保健の改善と早期診断体制の強化−

バングラデシュの母子保健分野では、これまでの取り組みによって妊産婦死亡率や5歳未満児死亡率などに一定の改善が見られる一方、熟練介助者による出産介助率、妊婦健診の受診率については低い割合に留まっています。そのため、保健サービスのさらなる改善の他、保健システムの強化が必要とされていますが、保健システムの核となる保健人材は恒常的に不足しており、特に看護師の量・質の改善が急務とされています。また、近年受診ニーズが高まっている心臓病や、がん、糖尿病などの生活習慣病については、公立病院における早期診断・早期治療のための医療サービス提供が十分ではありません。特に貧困層や社会的弱者によるアクセス向上のためには、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(注1)実現に向けた公的医療サービスの改善が課題とされています。これらの課題に対応するため、「母子保健および保健システム改善事業」では、各レベルの医療施設における保健サービスの改善と人材育成への支援を通して、バングラデシュ国民の保健改善に貢献します。

(5)都市圏の公共・民間建物の安全性強化を促進−初の本格的な耐震工法の導入による防災都市づくり−

政治・経済の中心地であるダッカとチッタゴンは、GDPの約50パーセント、総人口の約15パーセントを占めるバングラデシュの二大都市です。両都市には約50万戸の建物が集中していますが、そのうちの約7割はバングラデシュの建築基準を満たしていないと推定されています。バングラデシュでは、過去150年間にマグニチュード7以上の地震が7回発生しており、今後同規模の地震が発生した場合、ダッカでは建物の約30パーセント、チッタゴンでは約80パーセントが全壊・半壊すると予測されていることから、世界でも有数の地震等の災害に脆弱な都市環境となっています。また、2013年には、縫製工場が入るテナントビル「ラナプラザ」が自重で崩壊し、1,135人が死亡するなど、違法建築に伴う人為災害も問題となっています。「都市建物安全化事業」では、地震等の災害時の人命救助を行う消防・市民防衛局の本部及び消防署の耐震化を行うとともに、民間金融機関を通じて民間建物の安全性の強化を目的とした中長期低利融資の資金を供与することで、民間建物の耐震化を促進します。これらの都市における公共・民間の建物の安全性を強化し、災害リスクを軽減することによって、社会脆弱性の克服や着実な経済発展に貢献します。

(6)地方行政サービスの向上− 生活基盤インフラの改善と行政能力の強化を支援−

バングラデシュは、近年急速に経済発展を遂げている一方、人口の約32パーセントが貧困ライン以下で生活しており、特に農村部の貧困率は35パーセントと都市部に比べ10パーセント以上も高くなっています。農村部を管轄する地方自治体は、開発予算の不足と職員の能力不足に起因する調整機能の脆弱さにより、地域の特性と住民ニーズに基づいた行政サービスを十分に提供できていません。そのため、貧困率の高い農村部の開発には、住民ニーズに沿った行政サービスの提供と開発事業を促進するための地方自治体の強化が急務とされています。「地方行政強化事業」では、郡開発計画策定及び実施のため、開発予算の供与により、農村道路、給水、教育、医療関連施設等住民ニーズに沿った生活基盤インフラ整備を支援します。また、地方行政官への研修・技術指導等を行うことによって、行政サービスひいては住民生活の向上、及び地方自治体の能力強化に貢献します。

(注1)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジは、「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払可能な費用で受けられること」を指します。

(参考)
借款金額及び条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利
(%/年)
償還期間(年) 据置期間(年) 調達条件
本体 コンサルティング・サービス
外国直接投資促進事業 15,825 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド
ダッカ-チッタゴン基幹送電線強化事業 43,769 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド
西部バングラデシュ橋梁改良事業 29,340 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド
母子保健および保健システム改善事業 17,520 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド
都市建物安全化事業 12,086 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド
地方行政強化事業 14,725 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド

(1) 「外国直接投資促進事業」
Foreign Direct Investment Promotion Project

(a)事業の背景と必要性 

バングラデシュは、近年、欧米や我が国の縫製品メーカーの進出及び海外労働者送金に支えられ、年率6パーセント以上の高いペースで成長を継続しており、今後も堅調な発展が見込まれています。輸出の8割を占める縫製業は、労働コストの低さが強みとなっており、そのほとんどが欧米市場向け委託加工です。輸出先市場の景気動向に左右される他、原材料を輸入に依存しているため、関連産業への波及効果が薄く地場製造業が育たないことから、経済的メリットは加工労賃所得に留まり、低賃金の国際競争にさらされる脆弱な経済構造となっています。さらなる経済成長を実現するためには、縫製品の高付加価値化や輸出競争力のある製造業の育成、ひいては産業構造の多角化を図る必要があります。そのためには技術の導入を伴う外国からの投資拡大が期待されますが、バングラデシュ国内で操業する際の金融アクセスの悪さや基礎インフラの不足、煩雑な行政手続きなど、不自由な投資環境は民間企業が進出を検討する際の大きなボトルネックになっており、外国直接投資額はGDP比で1.1パーセント、ストックベースでもGDP比6.1パーセントと南アジア平均10.9パーセントと比較しても低く、東南アジア平均44.1パーセントとは大きく差が開いています(2013年)。

このような状況に対応するため、外国企業向けの中長期低利融資の拡大やインフラ整備による投資環境改善の他、外国直接投資の受け皿となる工業団地などの整備に向けて、煩雑な行政手続きの簡素化、官民連携で取り組むPPP事業の環境整備等が喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的及び概要

本事業は、ツーステップローン、エクイティバックファイナンス、周辺インフラの整備等を通じて、金融アクセスの改善、工業団地等のインフラ開発に係る支援、煩雑な行政手続きの改善など、投資環境を改善することによって外国直接投資の促進を図り、バングラデシュの製造業の高付加価値化や産業の多角化による経済発展に資するものです。

借款資金は、金融機関を介した外国企業による設備投資・事業運転資金への融資の他、バングラデシュ政府等によるインフラ整備の促進のための出資金、事業地へのアクセス道路や電力・ガス供給等基礎インフラの整備、コンサルティング・サービス等に充当されます。

なお、本事業では、2015年から技術協力プロジェクト「経済特区開発調査およびBEZA能力向上プロジェクト」を開始し、同事業で経済特区開発を担う経済特区庁の能力向上を支援します。

(c)事業実施機関

ツーステップローン:財務省銀行局(Bank and Financial Institutions Division of Ministry of Finance: BFID)(執行機関:バングラデシュ銀行(Bangladesh Bank: BB))
住所: Bangladesh Secretariat, Dhaka-1000, Bangladesh
TEL:+88-02-9576017、FAX:+88-02-9513500

エクイティバックファイナンス:財務省財務局(Finance Division of Ministry of Finance: FD)(執行機関:バングラデシュインフラ融資基金(Bangladesh Infrastructure Finance Fund Limited: BIFFL)
住所: Bangladesh Secretariat, Dhaka-1000, Bangladesh
TEL:+ 88-02-7161431、FAX:+ 88-02-9570644

周辺インフラ整備:首相府(Prime Minister’s Office: PMO)(執行機関:バングラデシュ経済特区庁(Bangladesh Economic Zones Authority: BEZA))
住所:Old Sangsgad Bhaban, Tejgaon, Dhaka-1215, Bangladesh
TEL:+ 88-02- 9128526、FAX:+ 88-02- 9145038

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)

(i)事業の完成予定時期:2025年3月(ツーステップローン貸付完了時)
(ii)コンサルティング・サービス(詳細設計等)招請状送付済み:2015年11月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:未定
予定時期:未定

(e)JICA情報提供窓口

本事業の調達スケジュールに関する情報は、下記窓口にお問い合わせください。
国際協力機構バングラデシュ事務所 民間開発セクター情報窓口
(Contact Point for Private Sector Development, JICA Bangladesh Office)
住所:3rd Floor, Bay’s Galleria, 57 Gulshan Avenue (CWS-A19), Gulshan-a, Dhaka-1212
TEL:+880-2-9891897、FAX:+880-2-9891689

(2) 「ダッカ-チッタゴン基幹送電線強化事業」
Dhaka-Chittagong Main Power Grid Strengthening Project

(a)事業の背景と必要性 

バングラデシュでは、国全体の電化率が約62パーセント、国民一人当たりの年間電力消費量が一時間当たり約321キロワットと低水準にあります(2013年)。また、近年の高い経済成長に伴う潜在的な電力需要9,268メガワットのうち、2014年の電力供給能力はその約8割にあたる7,418メガワットに留まり、恒常的に計画停電が実施されています。一方で、今後電力需要は年率約8.5パーセントで伸び続け、2030年には33,708メガワットまで増加すると見込まれています(2010年時予測)。 

現在の発電設備の約7割がバングラデシュ国産天然ガスを燃料とする火力発電であり、国産天然ガスの需要が増加している一方、国産天然ガスの新規開発が進んでいないため、発電燃料の多様化による供給能力の増強が求められています。このような国産天然ガスの需給ギャップに対応するため、バングラデシュ政府は石炭や天然ガス等の発電燃料を輸入することとし、チッタゴン管区には石炭搬入用の深海港を整備するとともに、輸入石炭による発電所の建設を計画しています。同管区における発電設備を拡大し、国内電力需要の約50パーセントを占めるダッカ首都圏へ電力を安定的に供給することは、バングラデシュの持続的な経済発展に不可欠です。また、低炭素社会の実現のために電力セクターの発電・送配電効率を高めうる施設の整備が求められています。

(b)事業の目的及び概要

本事業は、「マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業(I)」(円借款、2014年度承諾)において建設される火力発電所の電力を、ダッカ‐チッタゴン間に高圧基幹送電線及び変電設備を敷設してダッカへ安定的かつ効率的に供給することによって、バングラデシュの経済発展および気候変動の緩和に寄与するものです。

借款資金は、400キロボルト送電線の敷設の他、400キロボルト/230キロボルト変電所の新設、230キロボルト/132キロボルト変電所の増設、コンサルティング・サービス等に充当されます。

(c)事業実施機関

バングラデシュ送電会社(Power Grid Company of Bangladesh Limited: PGCB)
住所: IEB Building (3rd & 4th floor), Ramna, Dhaka-1000,Bangladesh
TEL:+880-2-9553663、FAX:+880-2-7171833

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)

(i)事業の完成予定時期:2021年3月(施設供用開始時)
(ii)コンサルティング・サービス(詳細設計等)招請状送付済み:2015年7月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:変電所パッケージ(Substation Package)・送電線パッケージ(Transmission Line Package)
予定時期:2016年2月

(3) 「西部バングラデシュ橋梁改良事業」
Western Bangladesh Bridge Improvement Project

(a)事業の背景と必要性 

バングラデシュでは、近年の堅調な経済発展に伴い、1975年から2005年までの過去30年間で貨物取扱量が約8倍、旅客数が約6.5倍に増加しており、今後も年率6パーセント程度の増加が見込まれています。また、道路輸送への依存度が高く、全輸送手段の8割を占めています。バングラデシュの道路ネットワークは、国内のみならず、周辺の内陸国・地域にとっても重要な流通ルートとして認識されていますが、全国の国道、主要地方道、県道に位置する約3,800橋のうち約4割については、老朽化、維持管理不足、初期欠陥等により、通行不能なほどの構造的欠陥もしくは重大な損傷があるとされています。実際に、雨季の期間(約2か月間)に通行不能となる損傷橋梁や、大型・重量貨物車両の通行が困難な橋梁もあり、流通のボトルネックとなっています。すでに同国東部地域の中・小規模橋梁については「東部バングラデシュ改修事業」(円借款、2008年度承諾)により改修されましたが、依然として西部地域における渡河の安全性向上、および道路ネットワークの効率化が急務となっています。

(b)事業の目的及び概要

本事業は、主にバングラデシュ西部地域において約60橋の橋梁の架け替え及び新設を行うことにより、道路ネットワークの安全性及び効率性の向上を図り、同地域の社会・経済発展の促進に寄与するものです。借款資金は、約60橋の架け替え・新設およびアプローチ道路の建設の他、コンサルティング・サービス等に充当されます。

(c)事業実施機関

運輸省道路・国道部(Roads and Highways Department, Ministry of Road Transport and Bridges: RHD)
住所: Sarak Bhaban, Tejgaon, Dhaka, Bangladesh
TEL:+8802-8879299、FAX:+8802-8879199

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)

(i)事業の完成予定時期:2021年3月(施設供用開始時)
(ii)コンサルティング・サービス(詳細設計等)招請状送付済み:2015年6月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:本体工事パッケージ(Construction Package)
予定時期:2017年1月

(4) 「母子保健および保健システム改善事業」
Maternal, Neonatal and Child Health (MNCH) and Health System Improvement Project

(a)事業の背景と必要性 

バングラデシュの保健セクターでは、これまでの母子保健分野での取り組みによって、ミレニアム開発目標の指標である乳児死亡率、5歳未満児死亡率、妊産婦死亡率については順調な改善が見られていますが、熟練介助者による出産介助率、妊婦健診の受診率については他の南アジア諸国と比べて低い割合に留まっており、目標達成が困難とされています(2013年)。これらの指標改善には、妊産婦に対する保健・栄養・人口に関するサービス提供と妊産婦のサービス利用の促進について一層の改善が求められます。サービス提供の改善のためには保健システムの強化が必要ですが、保健人材の不足がボトルネックとなっており、特に看護師については量・質ともに改善が急務とされています。また、近年では生活習慣病と外傷が国内の全死亡の68%を占め、受診ニーズが高まっていますが、公的病院での早期診断、早期治療のための医療サービス提供が十分ではありません。私立病院での高額な治療費や検査料は家計の圧迫要因となるため、特に貧困層や社会的弱者による医療サービスへのアクセスが限られており、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ実現に向けた公的医療サービスの改善が課題とされています。

(b)事業の目的及び概要

本事業は、母子保健にかかる人材育成及び機材整備の他、看護師の教育設備改善にかかる活動、高次医療機関における生活習慣病の早期診断体制強化への支援を実施することにより、母子保健サービスの改善及び保健システム強化を図り、バングラデシュ国民の保健改善に寄与するものです。

借款資金は、保健分野の包括的プログラムに資する一次・二次医療施設及び看護大学教育にかかる施設整備、母子保健及び看護大学教育に資する機材を含む医療機材の調達、母子保健にかかる研修実施の他、高次医療施設における早期診断体制を強化する画像診断用機材の調達、施設の整備、研修の実施、さらにこれらに対するコンサルティング・サービス等に充当されます。

なお、本事業では、2006年から実施してきた技術協力プロジェクト「母性保護サービス強化プロジェクト」で構築した行政と医療施設、住民が社会全体で母子保健を支える仕組みと、保健サービスの品質管理手法の全国展開を支援するとともに、2015年から開始する技術協力プロジェクト「看護サービス人材育成プロジェクト」 の協力サイトとなる看護大学において、機材整備などの教育環境の改善を支援します。

(c)事業実施機関

バングラデシュ保健家族福祉省(Ministry of Health and Family Welfare: MOHFW)
住所: Bangladesh Secretariat, Dhaka-1000
TEL:+880-2-8113088、FAX:+880-2-8113088

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)

(i)事業の完成予定時期:2020年3月(施設の供用開始時)
(ii)コンサルティング・サービス(詳細設計等)招請状送付予定時期:2016年3月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:医科大学病院への画像診断棟建設(New Construction of Diagnostic Imaging Centers in Medical College Hospitals)
予定時期:2017年4月

(5) 「都市建物安全化事業」
Urban Building Safety Project

(a)事業の背景と必要性
 
政治・経済の中心地であるダッカ首都圏及びチッタゴン市は、全人口の約15パーセント、全国のGDPの約50パーセントを占めるバングラデシュの二大都市です。ダッカには約30万戸、チッタゴンには約18万戸の建物がありますが、その多くがバングラデシュの建築基準(Bangladesh National Building Code)を満たしておらず、地震等の災害に脆弱な環境となっています。バングラデシュは地震が頻発するヒマラヤ山脈を含むユーラシアプレートとインドプレートに属し、過去150年間にマグニチュード7以上の地震が7回発生しています。世界銀行及びUNDPの調査によれば、今後同規模の地震が発生した場合、ダッカ首都圏では建物の約30パーセントが全壊・半壊、死者が約4〜15万人、チッタゴンでは建物の約80パーセントが全壊・半壊すると予測されています。2013年には、縫製工場が入るテナントビルが崩壊し、1,135人が死亡するなど違法建築に伴う人為災害も問題となっています。特に政治経済機能が集中する両都市には高層ビルや縫製工場等が集中しており、災害に脆弱な建物の安全性強化は喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的及び概要

本事業はバングラデシュの主要都市圏において、財務省から参加金融機関への転貸を介した民間建物耐震化促進に資するツーステップローンや公共建物の耐震化を行うことにより、都市圏の建物安全性の強化を図り、災害被害の軽減を通じた社会脆弱性の克服に資するものです。

借款資金は、参加金融機関(PFI)を通じた縫製工場等の民間事業者への建物安全化に対する中長期資金供与の他、バングラデシュ消防・市民防衛局本部庁舎建設、消防署耐震補強、機器調達、コンサルティング・サービス等に充当されます。

なお、本事業では、2011年から実施している技術協力プロジェクト「自然災害に対応した公共建築物の建設・改修能力向上プロジェクト」において行ってきた、ダッカ市の公共建築物インベントリデータの整備、構造実験による建物の特性、建築基準に沿った耐震診断・耐震設計・改修マニュアル、耐震化技術を習得した人材を公共・民間建物の耐震化に活用していきます。

(c)事業実施機関

民間建物安全化促進ローン:財務省銀行局(Bank and Financial Institutions Division of Ministry of Finance: BFID)(但し、事業実施はバングラデシュ銀行(Bangladesh Bank: BB))
住所: Bangladesh Secretariat, Dhaka, 1000
TEL:+88-2-9559109、FAX:+88-2-9559109

公共建物安全化:公共事業局(Public Works Department: PWD)
住所: Purta Bhaban, Segunbagicha, Dhaka, 1000
TEL:+88-2-9562795、FAX:+88-2-9562795

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)

(i)事業の完成予定時期:2022年4月(ツーステップローンの貸付完了時及び施設供用開始時)
(ii)コンサルティング・サービス(詳細設計等)招請状送付予定時期:2015年12月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:消防本部建設パッケージ(Mirpur New Headquarters of Fire Service and Civil Defense Package)
予定時期:2017年9月

(6) 「地方行政強化事業」
Upazila Governance and Development Project

(a)事業の背景と必要性 

バングラデシュは、近年急速に経済発展を遂げている一方、人口の約32パーセントを占める約4,700万人(2010年)が貧困ライン以下で生活しており、特に人口の約71パーセントを占める農村部では、貧困率が35パーセントと都市部に比べ10パーセント以上も高い状況です。

バングラデシュの地方行政は上位レベルから、管区、県、郡、ユニオンが設置されており、中でも全国に約500ある郡自治体は、住民に最も近いユニオン自治体の意見を調整・統合し、中央官庁が縦割りで提供する教育・保健・農業等の普及局を取りまとめ、住民ニーズに合った行政サービス提供や開発事業の実施を行うことが期待されています。しかし、郡自治体の開発資金が不十分であること、普及員や行政職員の能力不足、住民ニーズを十分に把握し調整するメカニズムが機能していないこと等によって、行政サービスが十分に住民へ行き届いていないことが課題となっています。貧困率の高い農村部の開発には、住民ニーズに沿った行政サービスの提供と開発事業を促進するための郡自治体の強化が急務となっています。

(b)事業の目的及び概要

本事業はバングラデシュの農村部において、住民ニーズに沿った生活基盤インフラ(農村道路、給水、医療関連施設等)の整備と地方行政官への研修・技術指導等を行うことにより、住民への行政サービスデリバリーの向上のための行政能力の改善を図り、住民の生活向上及び地方自治の強化に寄与するものです。なお、借款資金は、生活基盤インフラの整備・補修の他、ガバナンス改善支援・実施体制の強化、コンサルティング・サービス等に充当されます。本事業では全500郡に対し行財政のパフォーマンス指標に基づく行財政能力の計測と順位づけを行い、初年度は100郡、二年度以降は毎年100郡ずつ対象郡を増やし、最終年度で全500郡規模まで段階的に拡大する仕組みになっています。また、郡の全体的な行政能力を向上させるための研修や、生活基盤インフラ整備事業が効率的に実施されるよう支援を行います。

なお、本事業では、2015年以降に実施予定の技術協力で、郡自治体による郡開発計画の策定及び実施能力を強化し、以て地域の特性と住民のニーズに基づく行政サービス提供の向上を包括的に支援します。また、同技術協力と「地方行政強化事業」との深い連携を通じて、事業成果を関係政府機関の政策レベルへ反映させ、モデルの普及拡大の道筋を明確にします。

(c)事業実施機関

地方行政農村開発組合省・地方行政総局(Local Government Division, Ministry of Local Government Rural Development & Cooperatives: LGD)
住所: Building #7 Bangladesh Secretariat, Dhaka-1000, Bangladesh
TEL:+880-2-9540194、FAX:+880-2-9575574

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)

(i)事業の完成予定時期:2021年6月(施設の供用開始時)
(ii)コンサルティング・サービス(詳細設計等)招請状送付予定時期:2016年1月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
本事業では、本体工事に係る国際競争入札はありません。