ネパール向け円借款契約の調印:地震で被害を受けた学校、住宅の再建を支援し早期復興を後押し

2015年12月21日

署名式の様子

国際協力機構(JICA)は12月21日、ネパールの首都カトマンズにてネパール連邦民主共和国政府との間で2件、総額260億円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。2件の円借款は、2015年4月のネパール地震で被害を受けた学校や住宅の再建、耐震化を支援するものです。

2015年4月25日、首都カトマンズより北西約80キロのゴルカ郡において、マグニチュード7.8(米国地質調査所)の地震が発生しました。その後も5月12日にマグニチュード7.3の余震が発生するなど、本震及び余震被害により、死者が8,702名、負傷者が22,303名、全壊家屋が498,852戸、半壊家屋が256,697戸となるなど、激甚災害となりました(災害後ニーズ調査)。

ネパール政府が世界銀行、EU、国連開発計画、JICA等の支援を受けて行った災害後ニーズ調査(Post Disaster Needs Assessment:PDNA)によれば、総被害額は、7,065億ネパールルピー(約8,689億円)、総復旧復興額が6,695億ネパールルピー(約8,235億円)となり、また、アジア開発銀行(ADB)もネパールの2014/2015年度(2014年7月〜2015年7月)の実質GDP成長率予測値を0.8%下方修正し3.8%とするなど、同国経済への影響も報告されています。

今回の地震被害に対し、日本政府は、第3回国連防災世界会議(2015年3月、仙台)で採択された「より良い復興(Build Back Better:BBB)」のコンセプトに基づき、単に震災前の状態に戻すのではなく、震災前に比してより強靱な復興を実現する支援を行っていく方針です。今回貸付契約を調印した2事業は、このような日本政府の方針の下、もっとも被害の大きかった人々の住宅と、人々の生活に大きな影響を与え、多くの地域でコミュニティーの中核を成している学校を対象に、より良い復興(BBB)の実現を目指し支援を行うものです。

これらの円借款事業の特徴は以下のとおりです。

(1)学校の早期復興−耐震性を考慮した学校の再建支援−

今回の地震によって全壊あるいは大きな被害を受けた教室数は31,000以上、それ以外の被害を受けた教室は16,700以上とされ、震災後1ヶ月後に授業が再開された後も、教室の修繕・再建が遅れていることから、100万人近い生徒が震災の影響により学ぶ場を失っています。現在も、仮設の教室やテントなどで授業をせざるを得ない学校が多く存在し、早急に学校環境の改善をしていく必要があります。加えて、今回の震災は土曜日の日中に発生したため、学校での生徒や教員等への被害は限定限でしたが、今後も発生しうる地震に対して安全な場所としての学校の環境整備が急務です。

こうした状況に対して、「緊急学校復興事業」では、ネパール地震により特に甚大な被害を受けた14郡において、地震被害を受けた学校施設等の再建・耐震化を行うことにより、教育環境の復興及び支援対象校の耐震性強化を図り、もって同地域の持続的な社会・経済成長及び「より良い復興(Build Back Better)」に寄与します。なお、本案件はADBとの協調融資案件です。

(2)最大被害の一般住宅の早期復興−耐震性を考慮した一般住宅の再建支援−

今回の地震による建造物被害のうち、総被害額の約半分が一般住宅となっており、特に地方部において深刻な被害となっています。今回被害を受けた地方部では一般住宅建設にあたって、レンガや石を泥で接合した伝統的工法で建設することが一般的であることから、より耐震性を考慮した住宅建設が課題となっています。こうした状況に対して、「緊急住宅復興事業」では、「より良い復興(Build Back Better)」を実現するために、ネパール地震により特に甚大な被害を受けた地方の郡において、地震被害を受けた住宅所有者を対象に、一定の耐震基準を満たす一般住宅を再建することにより、被災者の住環境の回復・改善を実現し、被災地の持続的な社会・経済成長及び「より良い復興(Build Back Better)」に寄与します。なお、本案件は世界銀行との協調融資案件です。

関連リンク:

(参考)
借款金額及び条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利
(%/年)
償還期間(年) 据置期間(年) 調達条件
本体 コンサルティング・サービス
緊急学校復興事業 14,000 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド
緊急住宅復興事業 12,000 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド

(1) 「緊急学校復興事業」Emergency School Reconstruction Project

(a)事業の背景と必要性 
前述のPDNA(災害後ニーズ調査)によれば、教育セクターの総被害額は313億ネパールルピー(384億円)、総復興額は397億ネパールルピー(488億円)となり、住宅に次いで2番目に復興ニーズの高いセクターです。今回の地震で何らかの被害を受けた教室は47,700教室以上にのぼっており、そのうち3分の2は全壊あるいは大きな被害を受けています。また、その他トイレ、給水設備、学校家具などの損壊を合わせ、甚大な被害が発生しています。今回の地震は学校が休みの土曜日の日中に発生したため、生徒、教員等の被害は最小限に抑えられたと言われていますが、学校は本来であれば災害時に住民が避難可能な安全な場所である必要があります。

ネパール政府はこれらの学校再建にあたって、「より良い復興(Build Back Better)」の方針に基づき、耐震性を考慮した学校を再建することを推進しており、本学校再建は地震からの早期復興にあたって喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的及び概要
本事業は、ネパール地震により特に甚大な被害を受けた14郡において、地震被害を受けた学校施設等の再建・耐震化を行うことにより、教育環境の復興及び支援対象校の耐震性強化を図り、もって同地域の持続的な社会・経済成長及び「より良い復興(Build Back Better)」に寄与するものです。

借款資金は、学校施設等の再建、耐震化及びコンサルティング・サービス等に充当されます。

(c)事業実施機関
復興庁(予定)

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2019年10月(対象学校施設等の完工時)
(ii)コンサルティング・サービス(詳細設計等)招請状送付予定時期:2015年12月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:未定
予定時期:未定


(2) 「緊急住宅復興事業」Emergency Housing Reconstruction Project

(a)事業の背景と必要性 
PDNAによれば、住宅セクターの総被害額は3,503億ネパールルピー(4,305億円)、総復興額が3,277億ネパールルピー(4,027億円)となり、被害額・復興額ともに全体の49%を占めています。今回の地震で被害を受けた住宅のうち、その多くが地方部の伝統的な住宅建設形態である組積造・石造(泥モルタル)であり、これは全壊住宅の95.0%、半壊住宅の67.7%を占めています。組積造・石造(泥モルタル)による住宅被害の大きな原因としては、異なる部材同士の弱い結合力、脆弱な資材の品質などがあげられています。

ネパール政府はこれらの住宅再建にあたって、「より良い復興(Build Back Better)」の方針に基づき、耐震性を考慮した住宅を再建することを推進しており、本住宅再建は今回の地震からの早期復興にあたって喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的及び概要
本事業は、ネパール地震により被害を受けた地方部の郡において、一定の耐震基準を満たした災害に強い住宅の再建にかかる資金を供与することによって、被災地住民の生活の早期復興を目指し、同地域の持続的な社会・経済成長を目指すものです。
借款資金は、住宅再建に必要な資金(住宅再建資金)の供与及びコンサルティング・サービス等に充当されます。

(c)事業実施機関
復興庁(予定)

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2020年12月(住宅再建資金の貸付完了時)
(ii)コンサルティング・サービス(詳細設計等)招請状送付予定時期:2015年12月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:なし