パキスタン向け無償資金協力贈与契約の締結:教育におけるジェンダー格差是正や電力安定供給の改善に向けた取組を後押し

2016年3月1日

署名式の様子

国際協力機構(JICA)は、3月1日、パキスタン・イスラム共和国政府との間で、総額19億6,700万円(計2件)を限度とする無償資金協力の贈与契約(Grant Agreement:G/A)を締結しました。

これらの協力は、パキスタンが進める女子教育の推進及び前期中等学校進学率の向上や、電力セクター改革に向けた努力を支援するため、同国の教育環境の整備やアクセス改善、また送電線ロス率の逓減に対する支援を実施するものです。

今次締結した無償資金協力案件は以下のとおりです。

(1)シンド州北部農村部女子前期中等教育強化計画(供与限度額9.73億円)
Project for Upgrading Primary Girls Schools into Elementary Schools in Northern Rural Sindh

(事業の背景と必要性)
パキスタンの教育指標は、南アジア諸国の中でも最低水準に位置し、全国の純就学率(2013/14年度)は初等教育(1〜5学年)で57%、前期中等教育(6〜8学年)では21%に留まっています。シンド州全体における前期中等教育の純就学率は34%と全国平均より高いものの、女子の純就学率(2013/14年度)は17%に留まっています。また同州内でも都市部と農村部の格差が大きく、農村部女子の前期中等教育の純就学率はわずか6%と非常に低い割合です。

同国では多くの学校が男女別に設置されています。女子については、現地の習慣上、長距離の通学が困難であることが多いため、男子校に比べても多くの学校が必要とされていますが、農村部では女子児童が通学可能な距離に前期中等学校が存在しないことが多く、進学を阻害する要因となっています。また、一部の初等学校は老朽化により施設の安全性が低下しているため、建替えが必要な状態となっています。

(事業の目的と概要)
シンド州政府は、同州教育政策の中で、農村部女子の前期中等教育へのアクセス改善に重点的に取り組むことを目指しており、2018年までに男女共に純就学率50%の達成を目標として20,455教室の建設を計画しています。

本計画は、シンド州北部農村地域の既存初等学校(5〜9歳を対象)において、女子前期中等学校(10〜12歳を対象)用に教室・施設の増築と建て替えを行い、女子の基礎教育へのアクセスを容易にするとともに、学校環境を整備し、女子の就学率向上に貢献することを目的としています。

なお、JICAは本案件の先行案件「シンド州南部農村部女子前期中等教育強化計画」として、シンド州南部においても同様の案件を実施し、同州全体における農村地域の女子中等教育の改善を支援中です。

(実施機関名)
 シンド州教育・識字局(Education and Literacy Department, Government of Sindh)

(事業実施予定期間)
 工期約30ヵ月(入札期間含む)

(対象地域・施設)
シンド州北部6県(ハイプール県、サッカル県、ゴートキ県、シカルプル県、ラルカナ県、ダードゥ県)

(事業スコープ)
既存女子初等学校(25校程度)の拡張、うち初等学校の建替え6校程度(一般教室、多目的室、校長室、生徒・教員用便所棟(合計約7,000平方メートル)及び外周塀、教育用家具(椅子、机、キャビネット等)の整備等)

(2)送変電設備運用・維持研修所強化計画(供与限度額9.94億円)
Project for Strengthening Training Center on Grid System Operations and Maintenance

(事業の背景と必要性)
パキスタンでは、電力不足による不安定な電力供給が深刻な問題となっており、特に近年の電力需給ギャップは全国で4,500〜5,500 MW規模にも達し、1日当たり12時間から16時間にわたる計画停電を余儀なくされています。

また、送配電網についても、老朽化や技術者の能力不足による非効率な運用維持管理の結果、送配電系統の事故の多発や、高い送配電ロス率(約25%)などの問題が生じています。加えて、慢性的な電力不足により、国民生活はもとより産業の発展も大きく阻害されており、停電や非効率な送配電系統運用による経済損失等は経済活動の最大の課題となっています。これを受けて、パキスタン政府による電力セクター政策「National Power Policy 2013」(NPP 2013)では、2017年までに需給ギャップをゼロにすること、送配電ロスを16%まで下げることなどを目標に掲げ、安定した電力供給を可能とすべく、送変電設備の強化とともに、送変電系統の運用保守技術者の能力強化を進めることとしています。

(事業の目的と概要)
本計画は、国営送電会社(National Transmission and Despatch Company Ltd., NTDC)の研修部門において、送変電設備の運用訓練・事故対応の訓練用シミュレーター及び研修施設を整備することにより、送変電設備の適切な運用にかかる研修機能の向上を図り、送変電維持管理の改善を通じた電力安定供給の改善に寄与することを目的としています。

(実施機関名)
 国営送電会社(NTDC:National Transmission and Despatch Company Ltd.)

(対象地域・施設)
 パンジャブ州ラホール市

(事業スコープ)
【施設】送変電訓練用シミュレーター研修施設1棟(2階建て、約1,039平方メートル)
【機材】送変電訓練用シミュレーター1式、付属リレー1式、交換部品、消耗品等
 
(実施予定期間)
 工期約23ヵ月(詳細設計・入札期間を含む)