インド向け円借款契約の調印:交通渋滞と公害の緩和に向けた公共交通機関の整備を支援

2016年3月4日

署名式の様子

国際協力機構(JICA)は、3月4日、ニューデリーにてインド政府との間で、2事業、総額1,024億1,500万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

インドは、2005年から2007年にかけて9パーセントを超える高い経済成長率を達成し、2000年代以降成長著しいBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の一員として注目を浴びてきました。2008年以降は世界的な景気後退の影響を受けて経済成長は減速しましたが、2014年に入り、経済重視の姿勢を掲げるモディ政権が成立して以降、再び7%を超える高い経済成長を続けています。

インド政府は、国家開発計画である第12次5ヵ年計画(2012〜2016年度)において、「Faster, Sustainable and More Inclusive Growth」を目標として掲げています。また、今次5ヵ年計画内の対象期間内に約1兆ドルのインフラ整備を進める予定です。

今回調印した円借款の特徴は以下のとおりです。

(1)環境に優しい都市交通網の整備と環境改善
インド西部のグジャラート州アーメダバード市および周辺地域も含めたアーメダバード都市圏、インド国内で第4の人口規模を持つインド南部のタミル・ナド州チェンナイ市および周辺地域を含めたチェンナイ都市圏では、人口の増加及び産業の発展に伴い、年々自動車、二輪車の数が増加し、市内の交通渋滞が悪化しています。また、両都市圏では、交通渋滞の悪化に伴い、大気汚染や騒音、振動等の交通公害も深刻化しており、早急な対策が必要となっています。本両事業では、両都市圏に大量高速輸送システムを整備することにより、上記の問題の抜本的な対策に貢献します。

(2)利用者に優しい設計
両事業では、駅部へのエレベーターや点字ブロックの設置、車内での車椅子スペースの確保など、高齢者・障害者に配慮したユニバーサルデザインを取り入れた設計としているほか、女性専用車両や監視カメラの導入など、女性が安全に利用できる環境づくりを目指しています。

(参考)借款金額及び条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利
(%/年)
償還期間(年) 据置期間(年) 調達条件
本体 コンサルティング・サービス
アーメダバード・メトロ事業(第一期) 82,434 1.40 0.01 30 10 一般アンタイド
チェンナイ地下鉄建設事業(第四期) 19,981 1.40 0.01 30 10 一般アンタイド

(1)アーメダバード・メトロ事業(第一期)
Ahmedabad Metro Project (I)

(a)事業の背景と必要性
1960年のグジャラート州発足時に州都となったアーメダバードは、1970年にガンディナガールに州都が移されてからも経済活動の中心地として発展し、同州最大の都市となっています。2001年に現インド首相のナレンドラ・モディ氏が州首相に着任してからは積極的なインフラ投資と外資誘致政策を展開し、2015年1月時点で日系企業だけでも220社進出するなど、全州の中でも顕著な経済成長を成し遂げています。経済成長による都市化の進展に伴い、アーメダバード市の人口は1991年の342万人から2011年時点で559万人へと約63%増加し、車両の登録台数も2002年の129万台から2014年には336万台と3倍近くに急増しています。一方で、市内の用地不足により既存道路網の拡張余地は少なく、交通渋滞が深刻化し、経済損失の増大と深刻な大気汚染が問題となっています。今後も人口や自動車の増加は続く見込みであることから、大量高速輸送システムの整備が喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的及び概要
本事業は、インド西部グジャラート州アーメダバード市において、大量高速輸送システムを建設することにより、増加する輸送需要への対応を図り、もって交通渋滞の緩和と交通公害の減少を通じた地域経済の発展及び都市環境の改善に寄与するものです。

(c)事業実施機関
ガンディナガール・アーメダバード都市鉄道公社(Metro Link Express for Gandhinagar and Ahmedabad: MEGA)
住所: Block No. 1, First Floor, Karmayogi Bhavan, Sector – 10/A, Gandhinagar – 382 010, Gujarat
TEL: +91 (79) 2680 0000, FAX:+91 (79) 2685 9766

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
1.事業の完成予定時期:2020年11月(施設供用開始時をもって事業完成)
2.コンサルティング・サービス(施工監理等):雇用済
3.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:車両調達パッケージ(Design, Manufacture, Supply, Installation, Testing and Commissioning of Rolling Stock)
予定時期:2016年1月に公示済

(2)チェンナイ地下鉄建設事業(第四期)
Chennai Metro Project (IV)

(a)事業の背景と必要性
チェンナイ都市圏の人口は870万人(2011年)と、ムンバイ、デリー、コルカタに次ぐインド第四位の規模であり、インド南部最大の都市圏として南インドの政治・経済の中心となっています。同市では、インド国鉄がチェンナイ中心部と郊外地域を結ぶ郊外鉄道及びチェンナイ市周辺部における都市鉄道を運営していますが、増大する需要に応じたネットワークが形成されていないなど都市内の移動手段としての利便性が確保されておらず、道路交通に依存する状況が続いています。また、チェンナイ都市圏の人口増加及び所得向上に伴い、自動車登録台数の伸びが著しいことに加えて、急速に商業・工業地区が分散・拡大していることから、交通渋滞は著しく悪化しており、市内での車両の平均走行速度は時速15km程度にとどまっています。このような状況の下、インドの他の大都市同様、渋滞による経済損失、大気汚染や騒音といった自動車に起因する公害による健康被害が問題となっており、大量高速輸送システムの整備が必要となっています。

(b) 事業の目的及び概要
本事業は、インド南部タミル・ナド州チェンナイ都市圏において、大量高速輸送システムを建設することにより、増加する輸送需要への対応を図り、もって交通渋滞の緩和と交通公害の減少を通じた地域経済の発展及び都市環境の改善に寄与するものです。本事業に対しては、第一期(2008年11月貸付契約調印、217.51億円)、第二期(2010年3月貸付契約調印、598.51億円)、第三期(2013年3月貸付契約調印、486.91億円)の円借款を供与済みです。また、2015年6月に2号線のコヤンベドゥ駅〜アランドゥール駅間が部分開業済みです。

(c)事業実施機関
チェンナイ交通公社(Chennai Metro Rail Limited: CMRL)
住所: Poonamallee High Road, Koyambedu, Chennai -600 107
TEL: +91 (44) 2379 2149, FAX:+91 (44) 2379 2202

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
1.事業の完成予定時期:2016年8月(施設供用開始時をもって事業完成)
2.コンサルティング・サービス(施工監理等):雇用済
3.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:契約済