北岡理事長がフィリピンを訪問:ドゥテルテ大統領やバンサモロ暫定自治政府の閣僚らと会談

2019年4月18日

北岡伸一JICA理事長は、4月8日から4月11日にかけてフィリピンを訪れ、首都マニラと、ミンダナオ島のダバオ市にて、政府要人との会談やODA事業の現場視察を行いました。

ドゥテルテ大統領や主要大臣と会談

ドゥテルテ大統領との会談

今回の北岡理事長とドゥテルテ大統領との会談は、2016年10月、2017年10月に続き3度目です。JICAは、ドゥテルテ政権発足後の約3年間で、鉄道や防災、人材育成等の分野に対し、約4,000億円の協力をしてきています。これらには、フィリピン初の地下鉄整備や洪水対策事業が含まれます。これらに加え、JICAは日本政府と協力して2000年代からミンダナオの平和と開発に貢献してきました。

ドゥテルテ大統領からは、「JICAの事業は、非常に意義が高く、順調に実施されている。また、ミンダナオの和平にも多大なる貢献をいただき感謝する。」と謝意が示されました。

北岡理事長は、「バンサモロ暫定自治政府(注)の設立及び活動をバンサモロの人々が真に歓迎し、彼らが和平の配当を享受できるよう、 JICAとしても人材育成等を通じ引き続き協力していく。」と約束するとともに「50年先を見据え、bigger, wider, strongerなインフラ・ネットワークがフィリピンに根付くよう、また、人間の安全保障の観点から災害リスク軽減、農業振興等も引き続き重視した協力を続けていく。」と述べました。

北岡理事長とドゥテルテ大統領は、自由で開かれたインド・太平洋の重要性についても意見を交わし、国際秩序の安定のためには良好な人と人との関係を尊重することが肝要であるとの価値観を共有しました。

バンサモロ暫定自治政府の閣僚らと面談

BTAイクバル教育大臣との会談

北岡理事長は、始動したばかりのバンサモロ暫定自治政府(Bangsamoro Transition Authority: BTA)の教育大臣であり、バンサモロの自治を求めてフィリピン政府と交渉してきたモロ・イスラム解放戦線(MILF)和平履行パネル議長でもあるイクバル大臣と会談しました。

北岡理事長は、今後もバンサモロ地域の人々に寄り添って、住民一人ひとりが平和の配当を実感できるような協力を実施していくことを伝えました。
イクバル大臣は、JICAの支援に感謝の意を表明するととともに、自治政府の透明性の高い運営、除隊するMILF兵士の社会復帰、そして人材育成が短期的な重要課題であるという認識を共有しました。

ダバオ市でバイパス道路建設事業の予定地や戦前戦後の日本人史跡などを視察

ダバオ市バイパス道路建設工事のアクセス道路を視察

北岡理事長はダバオ市において、円借款事業で建設予定のバイパス道路の予定地、戦前戦後の経済発展を支えた日本人社会に関連する史跡(ミンタル墓地等)、そしてフィリピン日系人会の高等教育機関であるミンダナオ国際大学を視察しました。

ダバオで亡くなった日本人や日系人に献花

ダバオ市は、第二次世界大戦時の戦地となった場所です。現在、ダバオ市は国内第3位の人口を有するミンダナオ島最大の都市で、同島の経済成長の牽引役として今後更に重要性が増すことが見込まれています。ダバオ市バイパス建設事業では、ダバオ市の経済成長に伴う市内の交通渋滞の緩和を図るために、本邦技術を活用したトンネル、橋梁を含むバイパス道路が整備される予定です。北岡理事長は、バイパス道路の建設予定地の視察を通じて、本事業の意義を再認識しました。道中、ミンタル墓地に立ち寄り、ダバオの地で亡くなった日本人や日系人に献花しました。

ダバオ市で最後に訪問したミンダナオ国際大学は、1980年代に日系人会による教育事業からスタートし、現在でも日系人により自律的に運営されている高等教育機関です。同大学ではフィリピン人学生が日本の大学生にオンラインで英語を教える取り組みがあることについて紹介がありました。これに対して北岡理事長は、JICAの開発大学院構想で提供するオンラインプログラムについても紹介しました。

マニラ首都圏の洪水対策事業と橋梁の耐震補強事業を視察

マニラ洪水対策案件の視察

北岡理事長は、マニラ首都圏の中心部を貫流するパッシグ・マリキナ川の河川改修事業とマニラ首都圏洪水予警報システム、今後耐震補強を行うガタルペ橋の現場を視察しました。

フィリピンは日本と同じく、台風や地震などの自然災害の脅威にさらされており、マニラ首都圏においても、例年、豪雨などによる被害が発生しています。
北岡理事長は、視察を通じて、経済成長の著しいフィリピンが質の高い成長を持続していくためには、日本の防災の知見を活用して強靭な社会を構築していくことの重要性を再確認しました。

熱帯医学研究所での狂犬病対策の共同研究事業を視察

熱帯医学研究所の関係者との集合写真

北岡理事長は1980年代に無償資金協力で建設・整備した熱帯医学研究所を視察しました。現在、熱帯医学研究所では、大分大学をはじめとする日本の研究機関とフィリピン保健省等のフィリピン側関係機関が共同で狂犬病対策のプロジェクトを行っています。
北岡理事長は、最先端技術を用いた画期的な診断キットを導入することにより、フィリピンで深刻な課題となっている狂犬病への対策がさらに進むことへの期待を述べました。また、戦後、狂犬病撲滅に成功した経験を持つ日本の知見を活かしながら、日本とフィリピンの研究者が共同で感染症対策へ取り組んでいくことに、大きな意義を確認しました。

(注)フィリピンでは、ミンダナオ南西部のバンサモロ地域の自治を規定する「バンサモロ基本法」が2018年7月に成立しました。この基本法をもとに、本年3月29日にバンサモロ暫定自治政府(Bangsamoro Transition Authority: BTA)が始動しています。