プレスリリース
〜世界最大の貧困人口を抱えるインドの貧困削減・経済開発・環境保全を支援〜
新聞発表/2006-4
2006年4月3日
国際協力銀行(総裁:篠沢 恭助)は、3月31日、2005年度円借款として、インド政府との間で9件を対象に合計1,348億2,900万円を限度とする貸付契約及び地方電化公社との間で1件の206億2,900万円を限度とする貸付契約(インド政府保証)、合計10件、総額1,554億5,800万円限度の貸付契約を調印しました。今次供与額は、昨年度のインド向け円借款に比べて約15.6 %増となりました。
インドは、人口約11億人の35%が1日1ドル以下で生活する貧困層であり、世界の貧困人口の3分の1を抱えています。同国が最重要課題としている貧困削減を進めるためには、経済成長を促進し、雇用・所得の機会を増加させることが必要となりますが、電力、運輸、灌漑及び上下水道等のインフラ不足が、産業振興や経済成長のボトルネックになっています。また、インド国内では、森林減少及び都市化による河川の水質汚染や大気汚染といった環境問題が深刻化しており、その規模の大きさゆえに、地球規模問題に直結するインパクトを持っています。インド政府は第10次5ヶ年計画(2002年4月〜2007年3月)において、衡平かつ持続可能な成長を目標として掲げ、現存する貧困の削減に加え、経済成長を通じた長期的な貧困削減、さらにこれを持続可能なものとする環境保全を重点開発課題と位置付けています。
インドは、アセアン諸国や米国等との経済・貿易関係の強化や、隣接する中国・パキスタンとの政治経済関係の改善など戦略的取組みを進めており、国際社会の中で存在感を増して来ています。日本にとっても、同国は伝統的な歴史・文化・宗教的つながりに加え、近年のIT大国としての台頭や、アセアンを上回る3億人の中間層を含むことから、今後の有望な貿易・投資市場として一層注目が集まっています。当行が毎年実施している「わが国製造企業の海外事業展開に関する調査報告」においても、同国は日本企業にとって「中期的に有望な事業展開先国」として年々順位を上げており、2005年度は中国に続いて第2位でした。2005年4月の小泉首相の訪印時には、マンモハン・シン首相との間で、日印グローバル・パートナーシップを戦略的に強化していくことに合意するなど、両国間関係の一層の緊密化が期待されます。
今次調印する円借款は、こうした背景の下、経済インフラの整備、貧困層に裨益する地方開発及び環境改善といった分野を支援するものであり、事業の特徴は、以下のとおりです。
(1) 経済インフラ整備
首都デリーと、インドのシリコンバレーと呼ばれ急速に発展しているバンガロールにおいて、地下鉄を含む都市鉄道の建設を通じ、交通混雑の緩和と共に、世界の主要都市の中でも特に深刻な大気汚染の緩和を支援します(「デリー高速輸送システム建設事業(フェーズ2)(T)」及び「バンガロール・メトロ建設事業」)。全線開業時には、デリーで、都営地下鉄の乗客規模を超える259万人/日の乗客が、バンガロールでは名古屋市営地下鉄と同規模の107万人/日の乗客がそれぞれ見込まれています。なお、当行はデリー高速輸送システム建設事業(フェーズ1)に対しても支援をおこなっており、既に約59kmの輸送システムがほぼ完成しています。
港湾分野では、インド最大の年間貨物取扱量の港の設備増強を行います(「ビシャカパトナム港拡張事業(E/S)」)。同港は、世界有数の鉄鉱石産出国であるインドの主要な鉄鉱石鉱山(バイラディラ鉱山)の重要な積出港であり、同鉱山から産出された鉄鉱石の約3割を日本が輸入しています。本事業への支援は日本に対する安定的かつ効率的な鉄鉱石の輸入に繋がります。なお、同鉱山及び同港の外港は、70年代に円借款で建設されています。
上下水道分野では、バンガロール都市圏において、上下水道施設を整備すると共に、水道経営の包括的改善に向けた取り組み、スラムにおける上下水道整備を行うことにより、産業の活性化と貧困緩和を引き続き支援します(「バンガロール上下水道整備事業(U-2)」)。バンガロールには、日本最大手の自動車会社の工場を含め日本企業約60社が進出しており、本事業は、こうした日本企業を含む多くの企業にも裨益します。
電力分野では、電力不足の著しいインド東部西ベンガル州に、設備出力900MW(225MW×4基)のインド最大の揚水式水力発電所を建設することにより、同州の電力不足の緩和を引き続き支援します(「プルリア揚水発電所建設事業(V)」)。また、本事業では、日本の経験に基づく総合品質管理の推進等の経営改善も行われることになっています。
(2) 貧困層に裨益する地方開発
全人口の7割、貧困人口の8割が住む農村部における電化の拡大は、貧困削減と経済活動の活性化が期待されることから、インド政府は農村における世帯電化の推進を重点課題の一つにしています。こうした背景の下、当行は、インド南部アンドラ・プラデシュ州、西部マディア・プラデシュ州、マハラシュトラ州の3州において、配電網の整備を通じて未電化世帯の電力へのアクセスの改善を図り、農村部と都市部の格差是正を支援します(「地方電化事業」)。本事業を通じて、約279万世帯の電化に寄与し、約1,500万人に裨益する予定です。
また、ヒマラヤ山脈の麓に位置するスワン川流域において、植林、砂防ダム建設、堤防建設、段々畑の整備を含む総合的な流域保全事業を支援します(「スワン川総合流域保全事業」)。本事業は、農林産物の安定的な増産を図り貧困層を含む地域住民の生活水準の向上に貢献するものです。インドの中山間地域における総合的な流域保全事業のモデルとして、類似地域への展開も期待されています。
(3) 環境改善
インド6大都市のうち3都市において、衛生環境改善への取り組みを支援します(「バンガロール上下水道整備事業(U-2)」、「フセイン・サガール湖流域改善事業」、「コルカタ廃棄物管理改善事業」)。「フセイン・サガール湖流域改善事業」は、インド南部のハイデラバード中心部のシンボル的存在であるフセイン・サガール湖の汚濁が著しいことから、同湖及びその周辺地域において、下水道施設の整備、下水処理水の再利用促進、同湖の水質改善を行うものです。「コルカタ廃棄物管理改善事業」は、インド東部の経済・産業・運輸の中心であり、インド第3の都市コルタカ市を核とするコルカタ都市圏において、廃棄物飛散・悪臭・地下水汚染に配慮した最終処分場及びインドで初めての広域廃棄物処理システム整備し、同地域住民の生活・衛生環境の改善と環境保全に寄与するものです。
インド向け円借款では、これまで6州を対象に合計12件の植林事業を支援していますが、今回は、オリッサ州において、東京都とほぼ同じ面積の植林を地域住民の参加を得て行うほか、森林に依存する地域住民の生活改善に向けた職業訓練やマイクロ・ファイナンス(小規模融資)等を行うことにより、森林の再生及び地域住民の生活水準の向上を支援します(「オリッサ州森林セクター開発事業」)。また、本事業では、サイクロンによる被害が頻発している沿岸部でマングローブ等の海岸防災林の整備を行い、加えて、インド象等の野生動物の生息環境の改善も行います。
(4) 知的協力の推進
上記事業においては、事業効果の持続性を高めるために、様々な形で知的協力を推進する予定です。主要なものは以下の通りです。
「デリー高速輸送システム建設事業(フェーズ2)(T)」、「バンガロール・メトロ建設事業」においては、本事業に従事する多数の移動労働者のHIVの感染リスクを抑えるため、移動労働者への啓発等のHIV予防活動を実施します。また、「バンガロール上下水道整備事業(U-2)」、「フセイン・サガール湖流域改善事業」、「コルカタ廃棄物管理改善事業」においては、現地NGO等と協力して、市民の衛生環境改善の意識向上や取り組みを促すために、パンフレット作成、メディアキャンペーン、学校での課外授業等の啓発活動を行います。
また、既に事業の準備段階において、日本の地方自治体や大学が培ってきた経験や知見を、インド側の関係機関に提供するため以下の取り組みを実施しています。「フセイン・サガール湖流域改善事業」では、彦根市及び滋賀県立大学と連携し、琵琶湖の水質保全に関するノウハウを紹介。また、「オリッサ州森林セクター開発事業」では、サイクロンの被害が頻発している沿岸部での防災林整備が含まれていることから、1983年の日本海中部地震津波の被災経験のある秋田県及び自然災害の影響調査の分野で豊富な経験を有する秋田大学と連携し、日本の経験と知見を紹介。加えて、「コルカタ廃棄物管理改善事業」では、東京23区(東京23区清掃一部事務組合)と連携して、東京におけるゴミ処理の経験を紹介。
「フセイン・サガール湖流域改善事業」、「スワン川総合流域保全事業」、「コルカタ廃棄物管理改善事業」では、それぞれ下水処理水の再利用、総合的流域保全、環境に配慮した埋立処分場を含む広域廃棄物処理システムの構築という、インドで初めての取り組み若しくはほとんど実績がない分野における取り組みであり、インドにおけるモデルケースになるものです。
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