ルワンダは、アフリカの赤道近くに位置する、四国の1.4倍程度の小さな内陸国です。
途上国経験がある来訪者は「きれいな国ですね!」と驚きます。首都キガリの道にはゴミがなく、街路樹や花壇の花が並びます。安定した治安で、人々はスマホで音楽を聴きながら散歩を楽しんでいます。「千の丘の国」とも称されるルワンダは、平均標高が約1,600mと一年を通して気候が穏やかで、全国に美しい丘陵風景が広がります。来訪者の多くはこの国のファンになります。
約30年前、1994年にこの国で凄惨な虐殺が起きたことは、今の姿からは想像できないかもしれません。同じコミュニティの隣人が加害者、被害者となり、たった100日間で80~100万人、当時の国民の10%以上が亡くなったと言われています。

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悲しみは決して癒えることはありませんが、ルワンダ政府は「忘れない、だが赦しあおう」と、一丸となって国づくりに取り組んできました。2000年代以降、年平均7~8%の高い経済成長率を維持し、新型コロナ禍でも2021年の経済成長率は10.9%を記録しました。その成長は「アフリカの奇跡」とも呼ばれています。
 内陸国で目立った資源もない小国ですが、ルワンダ政府は不利な地理的条件を克服すべく、野心的な政策を次々と掲げています。「ICT立国」を目指し、行政手続きを電子化し、起業家を積極的に支援しています。世界銀行のビジネス環境調査「Doing Business」(2020)では、ルワンダは世界38位で日本(2019年38位、2020年29位)と同レベル、アフリカでは2番目の「ビジネスをしやすい国」を誇ります。2008年以降、ルワンダは女性下院議員割合が世界で最も高い国であり続け、2023年で約6割と世界で唯一女性議員が多数派を占める国会です(Inter-Parliamentary Union)。私はJICAルワンダ事務所で初めての女性の所長ですが、多くの女性の大臣から「JICAもやっと女性が来たわね!」と歓迎されました。
 その一方で、ルワンダは国民の過半数(世界銀行、2017)が絶対的貧困ラインより下の生活をしている、特に開発が遅れた後発開発途上国(LDC)でもあります。国民の8割は農村に暮らし、多くが気候変動に脆弱な小規模農家です。初等教育は中退・留年も多く、中等教育の就学率は周辺国に比べて非常に低いです。
 ルワンダの「奇跡」が真に人々の生活を豊かにし、持続的に発展できることが重要です。

また、JICAルワンダ事務所は、隣国ブルンジも担当しています。ルワンダと国土面積や自然条件などの類似点が多いブルンジですが、1993年に発生した内戦の2003年和平合意後も2015年にクーデターが起こるなど、不安定な時期が長く続き、国土は荒廃し人々は深刻な貧困状況にあります。2020年以降は治安情勢も改善していますので、国際社会が連帯して、ブルンジの国づくり・基盤整備にしっかりと取り組んでいきます。

JICAは、ルワンダとブルンジの人々が平和で安定した生活を送り、国・地域が持続的・自立的に発展できるよう、これまで築いてきた人とのつながりや信頼関係をベースに、民間企業、研究機関、市民団体など国内外の様々なパートナーの皆様とともに、国際協力に取り組んでいきます。

JICAルワンダ事務所 所長
塩塚 美那子