所長あいさつ

太平洋のハワイとニュージーランドとイースター島を結んだ広大な地域は、「多くの島々」を意味するポリネシアと呼ばれています。サモアはポリネシア地域のハワイとニュージーランドの中間に位置する、南太平洋の島国です。1962年、大洋州の島嶼国として最初に独立を果たしました。
以降、サモアは政治的な安定や政府機能の有効性を背景に、漁業、農業や観光業などを中心に、順調に経済発展を遂げました。また、基礎的な教育や保健、衛生、港湾・道路・電力などの経済インフラも進展しました。
しかしながら、小島嶼国であるサモアは、国土が狭く、人口も約20万人と限られます。そのため、マーケットとしての魅力に乏しく、輸出できる資源もほとんどないことから、産業開発は容易ではありません。主要な市場や生産拠点から離れているため、輸送コストが高く、自国産品の競争力確保が容易でない上に、国の開発には巨額の費用を要します。そのため、海外からの援助や個人送金への経済的依存からの脱却が困難な状況です。また、気候変動や自然災害に脆弱で、独立から今日に至るまで、津波やサイクロンで甚大な被害を受けてきました。麻疹の流行で多くの人たちが命を失う苦難にも見舞われました。現在もまた、新型コロナウイルスの世界的流行の影響で、主要産業である観光業が壊滅的な打撃を受け、未だ回復には至っていません。

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JICAは1968年、研修員受け入れを通じて、サモア(当時は西サモア)への協力を開始しました。以降、海外協力隊派遣、資金協力、技術協力、日本の自治体、大学、市民団体、企業との連携事業、緊急援助など、その協力の幅を広げ、サモアの経済・社会開発や環境・気候変動対策、防災・復興など多岐にわたる分野での協力を展開してきました。日本と長年の協力関係にあるサモアは親日国で、これまで国際場裏で日本の立場を支持するなど,良好な二国間関係が築かれています。
サモアは伝統的な社会や文化を守りながら開発を進めており、日本の明治時代の「和魂洋才」と共通したものがあるといえます。開発に不利な条件にある上に、気候変動や自然災害、感染症への脆弱性を持つサモアが、これからも平和で安定した国として成長することは、同じ太平洋に面する島国である日本にとっても大切なことです。
私どもは、日本の皆さまとともに、これからもサモアの開発と両国の友好関係の深化・発展のため、尽力する所存です。

JICAサモア支所長 朝熊 由美子