大西 結加さん「行事を楽しむ」

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職種
小学校教育
派遣国
ミクロネシア
派遣期間
2015年6月〜2017年6月
出身
香川県

こちらに赴任してから一年が経とうとしています。初め驚いていたことも当たり前になったり、行動範囲や人間関係が広がったりしてすっかり生活に慣れましたが、それでも刺激的な毎日には変わりありません。紹介したいことはたくさんありますが、今回は、私が体験した三つの行事についてお伝えします。

国際女性デー(ウーマンズデー)

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おそろいの衣装でダンス

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大人顔負け、少女のダンス

まず、毎年三月八日の「国際女性デー(ウーマンズデー)」についてです。それに合わせてここポンペイでは、三月十三日、女性による女性のためのダンス大会が催されました。そのイベントを知ったのは、その一か月前、配属先の先生方がダンスの練習を始めたからです。各地の学校から有志が参加するそのチーム(エデュケーションチーム)に私も入れてもらい、一か月間ほぼ毎日、放課後に練習を行いました。

ダンスは三部構成で、フラの要素が入った「入場」、アメリカンポップな「メイン」、手を振りながら「退場」。「入場」はダンスの得意な先生が振り付けをしたのですが、「メイン」を教えてくれたのはなんと、近所の小学生の女の子たちでした。ポンペイの子どもたちは普段からアメリカンポップを聴いたり、ネットで動画を見たりして、歌ったり踊ったりするのが遊びの一つになっています。

チームの仲間と一緒に踊っていると、普段感じる言葉の壁も関係なく、自然に笑い合ったり励まし合ったりすることができました。

それにしても、どんなに練習しても習得できなかったのは、ポンペイの女性たちのなめらかな腰の動きです。動画でお見せしたいぐらいですが、どんなに体の大きな女性でも、腰の可動範囲が広く、つい見惚れてしまうほど美しい動きができるのです。

イベント当日は平日でしたが、学校は休み、女性の先生も休み、男性の先生だけ草刈りのため出勤!ぜひ男性の先生方にも見に来てほしかったのに、これはちょっと残念でした。朝から夕方まで二十九ものチームが順番に踊りましたが、どれも個性的で飽きることがありませんでした。私たちも練習の成果を出し切って楽しく踊ることができました。

イースター(キリスト復活祭)の音楽コンテスト

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少し緊張していた本番前

次に、イースター(キリスト復活祭)の音楽コンテストについてです。公立小学校には音楽の授業がありませんが、配属先には、日本から寄贈していただいた鍵盤ハーモニカがあります。日本ではなじみのある楽器ですが、こちらの子どもたちは見たことがありません。初めて見たとき、息を吹き込むだけで出る大きな音に目を丸くしていました。校長の提案で、音楽コンテストに向けて私が鍵盤ハーモニカを教えることになりました。

対象は五年生、課題はイースターにちなんだポンペイ語の短い曲です。鍵盤に触れるのは初めての子ばかりですが、一か月間の練習でみるみる上達しました。新しいことができるようになるのが楽しそうで、毎朝教室に行くと「早く練習しよう!」と声をかけてくれました。コンテストの代表児童は一人だけなので、二十人全員をオーディションして女の子を選びました。どの子もとても努力したので心苦しかったのですが、みんな、その女の子を心から応援してくれました。

三月三十日のコンテスト本番では、女の子の家族と一緒に、緊張しながら見守りました。当の本人は堂々としたもので、笑顔であいさつをして、のびやかに歌って、そして完璧に演奏しました。他二十名ほどの出場者もウクレレ、ギター、電子キーボードなどを上手に演奏していて、観客としても楽しい時間を過ごせました。目の不自由な少女がウクレレを見事な指使いで弾いていたのが印象的でした。

コンテストの結果、我が教え子は「初めての楽器で賞」を受賞しました!それもそのはず、その場にいた全ての人が、鍵盤ハーモニカを初めて見たのですから。「金賞」や「銀賞」ではなく、一人一人に何かしらの賞があったようです。そういうところがポンペイ人らしくて、ほのぼのとしました。

ところで、鍵盤ハーモニカ学習には意外な効果がありました。朝練習をすると、一時間目の算数の授業への集中力が増すのです。そういえば日本の学校でも朝の会で歌を歌いますが、それは理にかなっているのだと実感。そして何より子どもたちにいろいろな経験をしてほしいので、これからも続けたいと思います。

卒業式

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ポンペイ式生け花

最後に、卒業式についてです。ポンペイでは五月に学年末を迎えます。卒業式は一年で一番大切な行事。二週間ほど前から、卒業生(八年生)は入場や歌の練習をしていました。

小学校に先駆けて、五月二十一日には幼稚園の卒業式がありました。高校の体育館を借り、前日に先生方が華やかに飾り付けをしました。日本で卒業式というと紅白のイメージですが、こちらでは「スクールカラー」を前面に押し出します。コロニア小学校のスクールカラーは白なので、飾りはなんと「白黒」でした。風船も、来賓席を彩る紙テープも、白黒!日本人の感覚では違和感のある光景でした。ちなみに卒業生が着るガウンも女の子は白、男の子は黒でした。

「威風堂々」に合わせた入場から始まり、プログラムは日本と似ていましたが、欧米スタイルなので、角帽のひも(タッセル)を、向かって右から左へ切り替える儀式がありました。式を通して、ぎこちなくも練習通りに動こうとする子どもたちがかわいくて、顔がほころびました。また、我が子の成長に思わず涙するお母さんの姿は世界共通でした。

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幼稚園卒業生、最後はこうなります。

驚いたのは式後の風習です。退場を終えた子どもたちを家族・親戚が取り囲み、首にさまざまなものをかけ始めたのです。花輪、お菓子、おもちゃ、一ドル札…。そしてハグやキスをして盛大に祝福をしていました。

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小学校卒業生、おめでとう!

25日、小学校の式前日。隣にある短大の体育館を借り、一日かけて準備をしました。風船や紙花は定番ですが、メインは自然素材で作るフラワーアレンジメントです。竹の上部を割り、そこに輪切りにしたバナナの幹をはめ込みます。このバナナが生け花のオアシスにちょうどよくて、そこに葉や花を挿していくのです。先生方は手慣れたもので、あっという間に見栄えのよいオブジェを完成させました。私も挑戦したけれど、センスのなさを痛感。でもとてもおもしろい作業でした。

26日、式当日。「かわいい」幼稚園と違い、八年生ともなるとみな「凛々しく」見えます。直接教えてはいない子どもたちですが、それぞれの八年間を終えて胸を張って巣立っていく姿にはやはり感動しました。

ところで、ここでも驚きの習慣が。証書授与の際、名前を呼ばれると、後ろの席の家族・親戚・友達が「ヒュー!」と声を上げて盛り上げるのです。本人は照れながらもうれしそうな顔。「厳かに、静粛に」がモットーの日本の式とあまりにも違っていました。

そして式後の恒例。幼稚園で一度見たけれど、やっぱりすごい。壁際に一列に並んだ卒業生に向かってバーゲンセールのように人々が突進し、プレゼント渡し、ハグ、キスの嵐でした。私はもみくちゃにされながらその光景を目に焼き付けたのでした。

その土地の行事にはその土地の人々の気質、考え方が表れるものだと思います。私は行事を通して、ポンペイについての理解を深めながら、カッペレン(楽しい)!な日々を送っています。

<このレポートは、香川県青年海外協力隊を育てる会「会報誌りる65号」に掲載された記事です。>