平山さんと友好協会の森さん
日本ブータン友好協会は2008年12月中旬、東京・市谷でGNH研究会を開いた。GNH(国民総幸福量)とは、GDP(国民総生産)という物差しに対して、お金よりも幸福さに国家目標を置くという考え方で、近年、先進国でも注目を浴びてきた。
ブータンはヒマラヤ山脈の東部中心にある人口約70万人の山岳国。1976年12月に、当時21歳だった国王がGNHを唱えた。旅行者には秘境だが、日本は援助額でインドに次いでNo.2。農業開発で貢献したJICA専門家、西岡京治さん(故人)は、GNHを唱えた国王に重用され、日本の教科書に取り上げられている。
平山さんが修理したプナカの王宮(青木撮影)
GNH研究会には80人程のブータンファンと会員が集まり、副会長の森靖之さん(JICAブータン所長OB)が司会。平山修一さん(元JICA専門家)がGNH研究所代表として、2時間近く語り、質疑を受けた。平山さんは、青年海外協力隊(JOCV)などJICA業務にかかわり計5年間ブータンで暮らした。一級建築士として大手の住宅建築会社に勤めた後、JOCVとして古都プナカの王宮の修復にあたり、シニア隊員として学校建設や環境保全、また、専門家として地方自治に尽すなかで、GNHに魅かれ、国際的な研究に加わった。
GNHというと、経済開発に反対して、秘境の文化や環境を守る、近代化の流れを留めるという印象を与えていたが、平山さんによると、調和のとれた開発のもとで、個人が幸福を感じることができる社会環境整備をするという国の方針だ、という。4つの柱は「健全な経済成長と開発」「環境保全と持続的な利用」「文化の保護と振興」「良い統治」と、聴き手に解説した。
筆者は2000年、ブータンを訪問したが、途上国なのに停電がない、買物用のビニール袋が少ない、照葉樹林が保たれている、と感じた。ヒマラヤ水系を利用した発電で、電力をインドに輸出、財政の40%をかせぎ、国土の60%を森林として保つという政策。チベット仏教の文化が保たれて、もの静かな人びとで出稼ぎ者も少ない社会だ。
ブータンの首都ティンプーにあるGNH事務局で、和服のような民族衣装「ゴ」(青木撮影)
良い統治の王家が、08年に国王のリーダーシップで、民主的な選挙による立憲君主国家に変身した。不安定な近年のネパールとは対照的だ。
GNHは、政策なのか、生き方なのか、仏教的な発想か――平山さんら国際的な研究者は、四回も国際会議を開いて探究している。「ブータンの知識層や国民も、実はよく分っていないのではないか」と平山さんは率直に語った。
しかし国民総幸福という言葉は、魅力的だ。東京・荒川区は3人の職員をブータン調査に派遣した。欧米のNPOや研究者も、「幸福」とは何か、青い鳥を探している。物質的な幸福ではない、何かを求める人や国は少なくないだろう。
「生まれ故郷のブータン王国を離れて、GNHが語られるのは良いこと。幸せを真剣に語り合うのは、未来にプラスになる」と、地方行政に関するJICA専門家となった平山さんは思っている。
※GNH研究所のホームページはhttp://www.gnh-study.com
(文・写真)ジャーナリスト/前JICA東京国際協力サポーター 青木 公