国を良くするために働く普通の人たちを訪ねて−ベトナム・モルディブ−(2015年1月)

JICAオフィシャルサポーターの高橋尚子さん。アフリカの子供たちに運動靴を届ける「スマイル アフリカ プロジェクト」をはじめ、国際協力、国際交流を積極的に行っている。

その1:順調な発展へのサポートだけではなく、発展の陰にも光を

【画像】

ノイバイ空港国際線ターミナル入口にある記念碑と空港建設に携わった技術者の方々と記念撮影。

【画像】

ニャッタン橋を建設した株式会社IHIインフラシステムの皆さんと。奥に見えるのがニャッタン橋。

ベトナム・ハノイのノイバイ空港に到着し、道路を市街に向け進むと、大きな橋が見えてくる。
ニャッタン橋。通称 日越友好橋。『越』はベトナムを表す漢字だ。
空港ターミナル、連絡道路、ニャッタン橋、これはすべて日本の協力で建設された。ここを通り、私たちも皆市街地へ向かう。

日本人が造ったベトナム首都の大動脈。建設に携わった人たちの努力が今後たくさんの人をベトナム国内外の様々な地域に運ぶことになる。

経済発展を遂げるベトナム。しかし、人身取引問題は深刻だ。JICAが実施している「人身取引対策ホットラインにかかる体制整備プロジェクト」が支援するコールセンターを訪ねた。
24時間体制で相談を受けるセンターのスタッフと懇談した高橋さん。被害の現実と困難で地道な取り組みに大きなショックを受けたと言う。
「私たちにも身近な東南アジアでこの問題が起きていることを多くの人に知ってもらいたい。その撲滅に日本の人も関わっていることを広めたい。」

続いて、1994年にUNESCOの世界自然遺産に登録されたハロン湾を訪問した。大阪府堺市の提案で大阪府立大学がハロン湾管理局と取り組んできた環境改善の案件視察のためだ。
以前ここには水上生活を営む人たちが多数いた。今は政府の政策で陸上生活に移転しつつあるが、漁業と観光を同時に発展させながら海の環境を守るため、廃棄物の回収に取り組んでいる。95年から行われているベトナム政府の活動に日本の経験を取り込んでいくことで住民の意識が変わってきている様子を見ることができた。

村にどっぷり浸かって

【画像】

ドンラム村遺跡保存管理事務所に所属する青年海外協力隊員の石川裕也さんとお昼ごはん。

【画像】

トゥイアン障害児リハビリテーションセンターで活動する青年海外協力隊員の中村将也さんと。施設の子供たちはみな人懐っこく、中村さんを信頼している様子だ。

ベトナム滞在中2人の青年海外協力隊員を訪ねた。
ひとりはトゥイアン障害児リハビリテーションセンターで活動する中村将也さん、もうひとりはドンラム村遺跡保存管理事務所に所属する石川裕也さん。二人は同期隊員。
それぞれの配属先を訪問し、話を聞いた高橋さん。2人の環境は異なるが、ボランティアの原点であるコミュニケーションの大切さを感じたそうだ。
毎日地元の人たちと顔を合わせ仲良くする。相手を知って自分も知ってもらう。地域の一員として村の景色になじんでいく。この様子を間近に見ることができたという。

発展に沸くベトナム。経済発展や社会開発に目がいくが、その土台を支える人々に焦点を当てた活動が地道に続いている。

その2:インド洋の真珠で起きたこと・起きていること

【画像】

マレ島のビーチにて。後ろに防波堤が見える。

【画像】

マレ島を津波から守ったテトラポットのモニュメント。

続いて、インド洋の真珠に例えられるモルディブ共和国を訪ねた。
「白い砂、青い海」のリゾートイメージが強く、日本の国際協力があまり思い浮かばないかもしれないが実は、両国には国際協力が繋ぐ浅からぬ縁がある。

マレ島の南海岸にある「南離岸堤修復工事記念碑」。台座の上にテトラポットが乗せられている。
2004年のインド洋大津波はモルディブでも計108名の死者・行方不明者を出す未曽有の災害となった。しかし、マレは日本の協力で建設された護岸に守られ、1人の死者も出さなかった。この記念碑は護岸のテトラポットそのものなのだ。

そして2011年、東日本大震災に襲われた日本に、モルディブ国民は義捐金だけでなく、主な輸出品でもあるツナ缶を60万缶も被災地に寄付した。大きな自然災害に苛まれた両国がその経験を共有して縁を深めている。

体育館でも浜辺でも、ナショナルチームにも島の子供たちにも

【画像】

モルディブでバドミントンのジュニアナショナルチームを指導する三浦時央さん。選手たちが三浦さんの話を真剣に聞く。

【画像】

アリフアリフ環礁のウクラス島で体育指導をする久保里歩さん。校庭は砂浜だ。

モルディブでも二人のボランティアの活動を目にすることができた。
マレでバドミントンのジュニアナショナルチームを指導する三浦時央さん、マレからスピードボートで1時間半、アリフアリフ環礁のウクラス島で体育指導をする久保里歩さん。

三浦さんは2年間の活動を終える間際を迎えている。久保さんは、モルディブに来て半年、ウクラス島での活動はまだ3ヵ月だ。三浦さんはジュニアナショナルチームの指導、久保さんは島の小学校での体育の指導、とその内容も異なる。
三浦さんのチームでは、彼がひと言指示をすると選手がいっせいに目と耳を傾け、とても規律が取れていた。一方で久保さんが指導する生徒たちは、そもそも体育の授業を受けたことがない。

「ボランティアとは?」という高橋さんの問いに対する三浦さんの答えを紹介したい。
「"お互いにとってのチャンス"だと思います。知らない人同士が出会い、様々な刺激を互いに受けます。でもそこには金銭といった目に見える利益は発生しません。その中で見える価値感が今後一生続く大事なものになる気がします。難しいですが、そういうものだと思います。」
また、久保さんの活動を見た高橋さんは、「学校には体育の先生がおらず、彼女も日本で教師の経験がありません。彼女が教えることは生徒たちにとってすべて新しいこと。彼女が伝える何か一つでも今後続けば、それは彼女の大きな足跡です。」

高橋さんは「ボランティアは一方的に与える、支えるというものではなく、お互いに認め合い、成長し合う、そんなもの」と言っていたことがある。
今回出会った2人の青年海外協力隊員は活動も経験も異なる。しかし、様々な経験をし、成長して、いずれ日本にその経験を持ち込んでくれるのは同じだ。