運輸交通

タンザニアはインド洋への玄関口として、タンザニアのみならず海岸線を持たない内陸の近隣国にとって重要な位置を占め、その役割を果たしています。東アフリカ共同体(EAC)や南部アフリカ開発共同体(SADC)などによる貿易自由化や地域統合化の進展とともに、地域の運輸インフラ整備を通じた経済競争力の強化が喫緊の課題となっています。

特に地域経済と密接な関係をもつ道路については、幹線道路の7割が舗装されているとはいえ、地方道路では舗装されている箇所は1割に満たないなど、社会経済への大きな制約となっています。

鉄道輸送については、旅客や重量貨物の輸送においてより重要な役割を果たすことが期待されています。しかしながら、現在は施設の適切な維持管理を含む資金や投資の不足、これにともない安定した列車運行など運営にも課題を有していることから、その期待に応えることができない状況です。これに対してタンザニア政府は、標準軌(SGR)鉄道網の整備による主要都市間の旅客輸送および物流の改善の取り組みを始めています。

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ムフガレ立体交差(【無償資金協力】タザラ交差点改善計画、ダルエスサラーム市

港湾輸送については、最大の港であるダルエスサラーム港はタンザニアのみならず近隣内陸国にとってインド洋への玄関口の一つとして重要な役割をしていますが、同港はその運営効率上の課題や限られた開発スペースのため、今後増加が予想される需要に対応していくことが困難な状況となっています。その他タンザニア西部にあるタンガニーカ湖を臨む内陸にあるキゴマ港はブルンジ、ザンビア、コンゴ民主共和国東部など内陸国、地域にとっても重要な港湾であり、老朽化した設備や施設の改善が必要とされています。

また、都市交通については、全人口の10分の1(665万人、2020UNほか推計)が暮らすダルエスサラーム市はタンザニアの経済活動の中心ですが、2030年には人口が1000万人に達すると予測され、車の急増にともなう交通渋滞が年々深刻な問題となっており、運輸サービスの強化と効率化へ向けた政策や計画づくりが緊急の課題となっています。一方、政治の中心、首都ドドマでは、近年、政府省庁や首都機能の移転が概ね完了し、今後大規模インフラ開発が必要となっています。

日本は、以上のような背景のなか、タンザニア政府の国家運輸政策「運輸・交通セクター投資計画(TSIP)フェーズ3」に沿い経済発展に資する幹線道路の整備を今後も実施していくとともに、近隣内陸国との貿易円滑化をも視野にいれた港湾施設の整備や、ダルエスサラーム市内の渋滞改善を目指した都市交通システムの改善やドドマ市の道路インフラの整備にも取り組んでいきます。