所長あいさつ

1954年、21名の研修員受け入れから始まったタイへの政府開発援助は60年以上の歴史があります。

これまで、タイ国社会経済の基盤となる、東部臨海開発、チャオプラヤ川にかかる多くの橋梁、かんがい開発事業、バンコクの上下水道、タイの玄関口であるスワンナプーム国際空港や都市高速鉄道といったインフラの整備、モンクット王工科大学ラカバン校等の工学系高等教育への支援、水・大気汚染や気候変動対策のための協力などの技術協力など、多岐にわたる事業をおこなってきました。

これらの協力は、タイの人びとの生活の豊かさだけでなく、日本との結びつきを深めることにも大きく寄与してきました。

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私のタイ駐在は今回が2回目となります。前回は2004年から2007年までの約3年間、バンコクに最初の地下鉄やスワナプーム空港が開業した頃です。バンコクの街を歩くとソムタムの甘酸っぱい香りがただよい、そして、成長しつづける活気、熱気を強く感じました。今回、再度駐在して、その活気、熱気は依然変わりませんが、経済や社会の状況には大きな変化があると感じています。

当時(2007年)、タイ国の一人当たりGDPは4,000ドル弱でしたが、現在はその2倍にあたる8,000ドルに近づこうとしており、また、我が国からタイ国に進出する日系企業は約7,000社となっています。

一方、経済発展に呼応する高度人材不足の解消、渋滞緩和のための交通インフラ、洪水被害等への脆弱性への対応、依然5倍以上であるバンコクと地方との収入格差の解消、そして、我が国以上のスピードで進行するタイ社会の高齢化への対応等、新たに生じる課題への対応も急務です。

メコン地域の結節点として地政学的にも重要なタイ国の社会経済の発展、タイ国の方々の微笑みが絶えない社会が継続することに貢献できるような協力を、皆様からの温かいご支援、ご理解をいただきつつ、丁寧に進めていきたいと考えていますので、よろしくお願い申し上げます。

2022年11月
JICAタイ事務所長
鈴木 和哉