現在の場所はホーム > JICA東北 > 地域の皆さんへ > JICAボランティア > 派遣中ボランティア現地レポート > 鈴木國昭 「Samoa Report」

鈴木國昭 「Samoa Report」

Kuniaki Suzuki

【写真】Kuniaki Suzuki

宮城県仙台市出身
シニア海外ボランティア

【地図】

職種
電気・電子機器
配属先
サモア/ドン・ボスコ技術訓練センター(Don Bosco Technical Centre)
カトリック系の4年制職業訓練校であり、同校には電気・電子、自動車、木工などのコースが設けられています。
活動概要
ドン・ボスコ技術訓練センターはサモア国立大学と連携して、当国における優秀な技術者の育成に力をいれています。電気・電子機器コースは、学生に人気のあるコースですが、その技術レベルは満足のいくものでなく、質の高い授業が出来ていないようです。また、十分な教材も揃っていない状況です。このコースを底上げするため、同校での授業及び実習を担当、授業用教材及びテキストを開発、コース運営の指導、教師への技術指導などを行います。
派遣期間
2010年10月〜2012年10月
プロフィール
2010年3月に会社を定年退職しました。会社ではオートメーション設備の設計・製造・施工を行う総合エンジニアリングに長年携わってきました。今後は、この私の経験や得た知識、先輩達から引き継いだ多くの技術を社会へ還元するのが、私の役割だと思っています。可能ならば国際社会への人道的な貢献の一助として、発展途上国の技術者育成のお手伝いをし、自立支援、貧困改善に繋がるようなことに自分を生かしたいと願い、シニア海外ボランティアに応募しました。

第18回:「活動期間の4分の3を経過」(2012年5月1日)

筆者が、ドンボスコ・テクニカルセンター:Don Bosco Technical Centre(以降、DBTCと略称します)の電気電子機器科:Electric and Electronic Appliance Course(以降、EEA科と略称します)に赴任してから早くも1年と7ヶ月たち、活動期間の4分の3を過ぎました。

サモアでのボランティア活動は、“未知との遭遇”体験がたくさんあり、冷や汗をかきながらも、わくわくする毎日を過ごしています。生徒たちや同僚教師たちとの交流では、教えるよりも教えられることの方が多く、とても楽しくてあっという間に時が過ぎて行きます。今回は、活動場所の風景を紹介してみます。

教室と教師

【写真】

電気電子機器科の専任教師と筆者(右)

【写真】

実習用教材として利用するテレビやDVDコンポ類。教室の後ろに山積みされている。

EEA科の教室が筆者の主な活動場所です。EEA科では教室を2つ使って授業をしています。これらの教室は、2階にあり、部屋の両側が透明ガラスのルーバー窓となっていて窓全面が開き、爽やかな風が通り抜けます。教室内は明るく快適です。

教室は実習室と機材庫を兼ねているため、教室の後ろ側には実習教材として使われる壊れた古いテレビやDVDコンポなどが積み上げられ、一見、古道具屋の店内のようです。筆者が昔、電気大好き少年だったころ、東京秋葉原のジャンク屋を覗き見し、その店内に積まれている古い電気機器や電子部品類が欲しくて仕方が無かったことを思い出します。筆者にとって、ここは宝の山のようです。

専任の教師は1人です。マネという38歳の男性で、この学校の卒業生でもあります。彼は南太平洋島嶼国地域のベスト5に選ばれてフィリピンへ国費留学をしたことがある優秀な人物で、若いながらも教養課程の責任者も担っています。

また、JICAが主催する日本でのマネージャー研修に参加したこともあり、日本文化に対して理解と好感を持っています。この彼が筆者のカウンターパートです。活動をするうえで様々に助けられています。

理論教育

【写真】

電気電子機器科の授業風景

生徒たちへの理論教育では、オームの法則から始まり、直列/並列抵抗回路の計算、抵抗カラーコードの意味、接頭辞/科学的表記の変換、表示値と現実誤差、キャパシタなど電子部品類の特徴、工具類の扱い方法、測定機器の操作方法、テレビ/ラジオのブロック図などを主に説明しています。

生徒たちは教科書を持っていません。教師によりホワイトボードに教示される内容を一生懸命にノートへ書き取ります。このノートが生徒たちの大切な教科書になります。ホワイトボードには英語で書きますが、説明は英語とサモア語の両方で発音されます。

カラーコードの説明で毎回繰り返される、サモア語での数字の発音が耳に焼きつきました。タシ(1)、ルア(2)、トル(3)、ファ(4)、リマ(5)、オノ(6)、フェトゥ(7)、バル(8)、イバ(9)、セフル(10)…。

この授業は1つの教室で行うため、筆者は後ろの席に陣取ってカウンターパートの授業内容と生徒たちの様子を見ます。計算をするときに、生徒たちが数台の電卓を使い回し、それが自分のところにくるまで問題に手をつけられずに順番を待っているのが見えます。筆記用具さえもちゃんと書けるものを持ってなく、他の生徒が使い終わるのを待っている生徒がいます。これはまずい…。

筆者が日本へ一時帰国したときに、電卓とボールペンを数十個ずつ仕入れてきて、授業のときに生徒たちへ貸し与えることにしました。“安易な援助は被支援国の人たちのためには良くない”と言われていますが、安い文房具でさえ買えない現実が目の前にあります。事情を知る者が目をつむることは出来ません。

実習授業

【写真】

電気電子機器科の実習風景。指導中の筆者(左)

【写真】

電気電子機器科の実習風景。指導中の教師(右)

実習は、カウンターパートの教師と筆者とが手分けして生徒を半分ずつ、2つの教室に分けて同じ内容の実習授業を行うことにしています。

実習は、ハンダ除去作業(主に壊れた機器のプリント基板から電子部品を抜き取る)から始まり、ハンダ溶接作業(主に裸電線をハンダでつなぎとめる)、電子機器の修理作業までを行います。この授業の間は、生徒たちが目の前にしている教材に対して、「この抵抗素子の識別塗料を削れば抵抗値が変化するのか」とか次々に奇問をぶつけてくるため、彼等の間を巡回するのはスリリングであり、面白くもあります。

実習に使う工具類や測定器類は損傷していてうまく機能しないものが多いため、初めに説明した実習の手順通りにはならないことがよくあります。このような場合は、生徒たちがお互いにシェアしながら工夫して実習をうまく進めてくれ、道具の不備で立ち往生することはありません。これには感心します。

一番困るのは、生徒が自分の動かなくなった古いオーディオ機器を持ってきて、これを自分たちの実習の教材として使いたいので、この修理方法を教えてくれと言われることです。持ってくる機器のメーカーと型式は様々で、生産国も様々です。内部回路図などは当然なく、取扱説明書もありません。

リペアーキットが無いのでどうにもならないのだと思いつつ、とりあえず外箱を外して中身を分解してみなさいと言って、彼等の作業を見守ります。一通り点検をした後に、再度電源を入れて動作確認をしてみますが、やはりうんともすんとも言いません。指導する立場の者として判決を言い渡さなければなりません。「ICが不良の可能性があり、回路基板が入手できないのでこの国では直せない!」と。このときの落胆した生徒の目を見るのは辛い瞬間です。日本でなら中古機器の修理などはせずに、早々に新製品に買い代えてしまうのですが、この国ではそれが出来ません。それゆえに、EEA科が必要なのだと思います。

実習機材

【写真】

ハンダゴテ。右側5本は、先端部がほとんど消失している。

【写真】

戸棚に大事に保管されている工具類

【写真】

オシロスコープ。JICAが入手してくれた。

EEA科の実習工具は、ドライバー類、プライヤー類、ハンダごて、ハンダ吸引器などがそれぞれ十数台ずつ備わっています。赴任当初は、プライヤー類のほとんどが錆付いていて満足に使えなく、他のワークショップからスプレー潤滑油を借りてきてこれら全部を動くようにすることが、筆者の初仕事でした。ドライバーの先端が磨耗していたり、プライヤーが変形して噛合わせが悪くなったりはしていますが、貴重な工具として鍵の掛かる収納棚へ大事に保管されています。

測定器は、数台のアナログテスターとディジタルテスターが備わっています。これらは抵抗値を測定したり、半導体素子の良否判定をしたりする実習に役立っています。しかし、テスターだけでは、テレビ/ラジオを修理する実習には不十分です。最低でも、電子回路の動作波形を測定するための測定器"オシロスコープ"を備えていなければ、基礎的な測定技術を教えてあげることが出来ません。

DBTC上部組織(以降、OSAと略称します。(注1)参照)とJICAにこの測定器を入手してくれるように依頼したところ、幸いなことにJICAが手配してくれました。現在は、電子回路の動作波形を確認したり、交流電圧と直流電圧の違いなどの基礎的なことを理解する実習に活用し、とても役立っています。

OSAからは、テスターを含むたくさんの測定機器や可変変圧器などが届けられ、これまで出来なかった交流理論の基礎的な実習が行えるようになりました。

説明(注1)OSA:The Organization of Salesians in Australia

企業見学

【写真】

企業見学で生徒たちと訪問したヤザキEDSサモア工場

EEA科の生徒たちが、いま自分が勉強している電気の基礎は社会でどのような形に結びつくのかを具体的にイメージする役に立てようと、サモア国内の企業へ見学に行くことを計画しました。

サモアに進出している日本企業の“ヤザキEDSサモア工場”(自動車の電気配線を専門に製造)が見学の申し込みを快諾してくれたので生徒たちと訪問しました。説明員に工場内を案内されながら製造ラインの特徴や日本式の厳しい品質管理の下で作業する社員たちの様子をサモア語で解説してもらえ、見学を終えた生徒たちは「とても勉強になり、大きな規模の工場なのでビックリした。」と言っています。

これからも機会があれば、他の工場や発電施設などへも見学に行き、生徒たちの勉強の動機を作ってあげたいと思っています。

ワークショップ建設工事

【写真】

電気電子機器科のワークショップの建設現場

【写真】

資金集め集会で巻き寿司を提供し、協力する筆者の随伴者(左)

GGP基金(第14回「草の根無償資金の授与」をご参照ください)により、EEA科ワークショップの建設工事が進行中です。4月末には、1階の外壁が組みあがりました。完成は5月下旬になる予定です。

これが完成すれば、今までスペースが無くて実現しなかった電気設備や電気配線の実習をすることができ、EEA科の課題である改革と発展が促進されます。

しかし、DBTC校長は困ったことに直面することになりました。OSAが、GGP基金以外に必要な資金を支援してくれる約束だったのですが、何故か全く支援がありません。建設工事が進むにつれて、建設会社経費と建設労働者賃金を請求され、この資金の手当てを迫られました。急遽、教師と生徒の親へ募金を要請したり、資金集め集会(Fund-raising)を設けて、父兄たちから寄付を募ったりしで四苦八苦です。このときには私の随伴者も巻き寿しを大量に作り、資金集め協力をしてくれました。

電気技術者の育成

今、サモアは本格的な電気設備を持つ建物が盛んに建ち、これに伴う電力供給施設の増強が必要になっています。これらのために電気技術者に対する需要が増大しています。DBTCのEEA科にはこの電気技術者を育成する役割があります。

筆者の任期は、残り5ヶ月ですが、“電気設備を教えられる教師の育成”や“ワークショップの実習設備の計画”など、やるべきことはまだまだあります。これらの仕上げを目標に精一杯の活動をして行きたいと思っています。

Manuia Leaso (マヌイア レアソ:皆さん良い一日をお過ごし下さい)

過去の記事