世界の子どもたちを守る、世界の技術と仕組み その1〜ポリオ、麻疹(はしか)、風疹から世界の子どもたちを守れ!〜

実験室診断実習でコースリーダー清水先生より説明を聞く研修員

国立感染症研究所(感染研)(*1)の協力の下、感染症の中でもワクチンで防ぐことのできる疾患―ポリオ、麻疹、風疹―を世界的になくすため、ウイルス診断技術を学ぶ研修〜「ポリオ及び麻疹を含むワクチン予防可能疾患の世界的制御のための実験室診断技術」〜を実施しており、これまで実に36か国、計224名の研修員の方々に参加いただいています。今年も、1月14日から2月14日の間、4か国から8名の研修員が来日。主に、感染研でのウイルス診断技術実習や関連の講義、その他、WHO専門家による講義、ディスカッション、大阪府立公衆衛生研究所、阪大微生物病研究会ポリオ研究所への訪問を行いました。

世界の子どもを守る“技術”〜(1)ウイルス診断技術

モザンビーク研修員バラテさん、実験室診断実習中

実験室診断実習の様子

エボラウイルス疾患の流行が依然として収束を迎えておりませんが、日本にもそのウイルスが持ち込まれたか否か?話題になったことは記憶に新しいと思います。その際、何の病原体なのかをきちんと見極めて、的確な予防・治療に繋げるためにもその精度の高い鑑別診断が必要であり、判断をするための方法がウイルス検査診断です。正確、迅速に診断して適切な感染拡大措置をとることが重要なのです。各国の研修員の皆さんは、精度の高い実験室診断を目指し、その技術を身に着けたり、さらにブラッシュアップさせたり、実験室のマネジメントについて学んだり、それぞれの国の状況、課題や対策についての意見、情報交換を行いました。

世界の子どもを守る“技術”〜(2)ワクチン製造、品質管理の技術

「ワクチン品質管理における最も重要な技術とは?」という研修員からの質問へ回答

阪大微研の皆さんと

ポリオに対する有効な治療法はないことから、ワクチン接種によってポリオウイルスの感染を予防することが最も重要です。ポリオワクチンには、経口生ポリオワクチン(Oral polio vaccine:OPV)と不活化ポリオワクチン(Inactivated polio vaccine:IPV-注射による接種)があります。研修中、その製造、品質管理技術について理解を深めるために、阪大微生物病研究会ポリオ研究所へ訪問しました。OPVの効果は絶大であるけれども、生ワクチンであるところよりワクチン株によるポリオ様の麻痺が発生する可能性がきわめて稀ながらあるということ、IPVは不活化ワクチンであるため麻痺症状が現れることはないものの、経口感染して腸管で増殖するポリオに対しての局所での免疫は不十分となりやすく、またOPVよりも高価であることなど、それらメリットデメリットについて講義頂きました。質疑応答では、「品質管理における最も重要な技術は何か?」のような質問も研修員から挙げられるなど意見情報交換を深め、改めてその予防に必要な“技術”への理解を深めました。(*2)

世界の子どもを守る“仕組み”〜サーベイランス

副所長高橋氏よりサーベイランスシステムの地方衛生研究所の役割等お話を聞く

ラボ担当者同士の情報交換〜ベトナム研修員ヒューさんと衛生研倉田先生

ラボ担当者同士の情報交換〜モザンビーク研修員ジョーさんからの質問

日本におけるサーベイランスシステム(*3)をより具体的に学ぶために、全国にある地方衛生研究所の一つである大阪府立公衆衛生研究所を訪れました(*4)。国内のサーベイランスシステムにおける地方衛生研究所の役割と中央機関である国立感染症研究所との関連性、その中においてのサーベイランスシステム、実際の検査行程等、具体的事例を用いて説明、紹介頂き、サーベイランスシステムの大切さ、その効果的構築、運営を考える機会となり、同じラボ担当者同士の貴重な意見情報交換の場ともなりました。またそのシステムでは、研修員の担当する実験室診断が大きな役割を担っており、地方衛生研究所、中央機関、国、病院、そして彼らの実験室、のように、多様な立場同士の連携が大切であることを実感できる視察でした。

世界の子どもを守るための国際ネットワーク確立

WHOメディカルオフィサー遠田氏による予防接種拡大プログラムのためのサーベイランスに関する講義

WHO等国内外専門家とのディスカッション

ウイルス診断をする実験室と地方衛生研究所、中央機関、病院、そして、国際機関との連携の必要性への理解、国際ネットワーク確立のためにもこの研修があります。毎年、WHO(World Health Organization:世界保健機関)から専門家をお呼びして、WHOにおけるラボネットワークや、予防接種拡大プログラム(The Expanded programme on immunization (EPI))のためのサーベイランスに関する講義を頂き、研修員は専門家とのディスカッションを通してその理解を深めています。

モザンビーク研修員バラテさん

ナイジェリア研修員アイシャさんとモザンビーク研修員ジョーさん

サマリーレポートまとめの様子

さらに研修中は、研修員同士のディスカッションもあり、研修員のラボにおける事故やヒヤリハット事例を基に、問題点、改善点を議論したり、帰国後のアクションへの展望を語り合ったりしました。日本での研修は終了しましたが、研修員同士、感染研の先生方を始めとした研修にご協力いただいたみなさんとのネットワークができ始めた今、新たな始まりでもあります。ポリオまたは麻疹、風疹等、ワクチン予防可能疾患の世界的なコントロールのために、この友好関係、つながりが、長く活かされることを期待しています。

JICA東京 人間開発課 高橋依子