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−研修員が富士山麓で学ぶ−
2010年03月05日
JICAでは2月から4月にかけて「(アジア地域)地元自然資源を活用するエコツーリズム展開のための研修」を実施しています。アジア地域の10ヵ国(カンボジア、スリランカ、タイ、ネパール、フィリピン、ブータン、ベトナム、マレーシア、モンゴル、ラオス)から各国15人ずつ、計150人の研修員が約1ヵ月間、日本各地で自然学校や地域振興の事例の視察などを通じて、地域の自然資源や文化を活用するエコツーリズムについて学びます。研修では、なるべく環境に負荷をかけずに、地域にある自然資源を観光資源として活用する際の効果と課題を分析し、実施に役立つ知見やアイデアを得て、持続可能なエコツーリズムの発展につなげることを目的としています。
それぞれが抱える問題点を書き出し、研修の目的について話し合う研修員
そのうちの一つ、ネパール向けの研修では、行政関係者だけでなくNGOやコミュニティーリーダー、旅行業関係者などから選抜された15人の研修員が、1月31日から2月26日まで、東京や、山梨県清里にある財団法人キープ協会に滞在し、研修を受けました。
ネパールには、世界最高峰のエベレストをはじめとする、標高8,000メートル以上の山が八つあり、登山やトレッキングなど、大自然の中で楽しめるアクティビティが盛んで、世界中から年間50万人もの観光客が訪れます。しかし、環境汚染や大規模な森林伐採などの問題が深刻となったことを受け、自然を保全しながら地域経済を活性化させようと、近年エコツーリズムが導入され始めました。
樹海の成り立ちや森にすむ生き物などについて説明をする「ごうりき」の池川さんと、熱心に説明を聴く研修員たち
2月17日、研修員は富士山北麓を訪れ、富士登山におけるエコツアーや体験学習プログラムを実施する団体「富士山登山学校ごうりき」の池川利雄さんによる案内で、白銀の世界となった青木ヶ原樹海のエコツアーを体験しました。
続いて、同団体代表の近藤光一さんによる講義「富士山北麓における地域振興の取り組み」が行われ、同団体の事業内容や、観光、環境教育への取り組みなどが紹介されました。近藤さんは「これまでにも、地元でエコツーリズムにかかわる活動を精力的に行っているが、一般的にまだその概念が浸透していない。今後はそれを、いっそう魅力的に伝えていくことが使命だと思っている」と語り、研修員に対して、ガイドとなる人材の育成や、地元の観光産業が発展して利益を得られるようなシステムを整備することが重要だと話しました。
旧外川家住宅では、いろりを囲んで昔の日本家屋のつくりや暮らしぶりについてさまざまな質疑応答がなされた
翌18日には富士吉田市を訪れ、富士御師(注)の御師宿坊の一つで、山梨県指定文化財となっている「旧外川家住宅」を訪問し、文化財を地域の観光資源として活用している様子を見学しました。
ネパール観光民間航空省のギャワリ・クリシュナ・プラサド氏とネパール・ツーリズム・ボードのバニヤ・リラ・バハドゥール氏は、「ネパールでは、観光産業に携わるガイドになるためには資格が必要。しかし、せっかく取得しても、他に収入の多い仕事が見つかると辞めてしまう人が多く、人材が不足している」「ネパールはインフラが未整備なところが多いため、環境保護だけでなく、開発も同時に進めていかなければならない」など、ネパールの観光産業が抱える問題点を挙げました。
帰国前日、滞在した山梨県清里で拾い集めた松ぼっくりを握りしめながら、研修での経験に思いを巡らせ、自国のエコツーリズムの発展のために活用することを誓い合った
研修員は、今般の来日で、地域の文化財や寺社などを活用することや、パンフレットやポスターなどの広報ツールを充実させて環境に対する意識を高めるなど、日本の団体の活動からさまざまなアイデアを吸収しており、自国でも取り入れたいという意欲を見せていました。
JICAは今後、研修員同士やネパール国内のみのネットワーク強化だけでなく、日本の企業と連携して研修を展開することも視野に入れています。
(注)富士山を信仰する人々と富士の神霊の仲介役を務め、祈祷(きとう)、おはらい、占いなどを行っていた人々。信仰登山をする人々に、自らの住宅を宿坊として提供し、参拝の案内や宿泊の世話もしていた。江戸時代の最盛期には約100軒の御師宿坊が軒を連ねていた。