トピックス

日本も元気にする青年海外協力隊

−国際協力トークイベント開催−

2011年09月13日

東日本大震災からの復興支援で活躍する青年海外協力隊。そこに国際協力の現場での経験はどう生かされているか―。JICAは、9月4日、日本教育会館一ツ橋ホール(東京都千代田区)で国際協力トークイベント「日本も元気にする青年海外協力隊」(読売新聞社共催)を開催した。東日本大震災の発生から間もなく半年。国際協力の重要性について、パネリストと会場の約240人の参加者が共に考えた。

マラソンがつないだ国際協力への道

【写真】

マラソン選手としての経験が、国際協力、被災地支援へと広がっているという有森さん

第1部では、オリンピック女子マラソンメダリストの有森裕子さんが、「希望と勇気を分かち合う−未来を担う若者へのメッセージ−」をテーマに基調講演を行った。有森さんは「スポーツを通じて希望と勇気を分かち合うこと」を目指し1998年に設立されたNPO法人「ハート・オブ・ゴールド」の代表理事。ゲストとして、カンボジアで開催されたマラソン大会に参加したのをきっかけに、マラソン選手としての経験を生かせることがあると気づき、それが、「ハート・オブ・ゴールド」の設立を後押ししたことを披露した。

設立以来、カンボジアを中心に活動。毎年、「アンコールワット国際ハーフマラソン&アンコールウォーク」を開催し、参加費を対人地雷被災者のための義手や義足の作製や自立支援に充てているほか、小学校の体育科教育指導書の作成、障がい者スポーツの振興などに取り組んできた。

カンボジアでの活動の経験は、東日本大震災でも生かされたと有森さんは言う。例えば、震災直後の3月20日に「ハート・オブ・ゴールド」が運営協力した大阪・淀川のチャリティーマラソンでは、「マラソンだからこそできる支援を」と、参加賞のTシャツをランナーに寄贈してもらい、被災地に送った。

その後も、被災地に在住する会員が中心となって被災者のニーズをリサーチし必要な物資を送ったという。「自分たちだけで解決できることは少ないが、人とつながることで、できることが増えていく」と強調。国際協力を目指す若者に対しては、「他人の人生にかかわる仕事なので、自分の人生をしっかり持っていないと続けることは難しい。まずは、自分と向き合う時間を持ち、自分がどういう人間なのか、どんな生き方をしたいのかを考えてほしい」と訴えた。

協力隊の活動によって得られた気づき

【写真】

被災地の漁業再生プロジェクトに取り組む西城さん

第2部では、パネルトーク「今、日本に求められる『グローバル人材』−東日本大震災の支援・復旧・復興に取り組む協力隊経験者の姿を通して−」が行われた。パネリストは青年海外協力隊OGの西城幸江さん(NPO法人ピースウィンズ・ジャパン 東北事業 事業調整員)、同じく青年海外協力隊OBの河内毅さん(社団法人中越防災安全推進機構 地域防災力センター チーフコーディネーター)、荒木田勝さん(財団法人都市防災研究所 アジア防災センター 主任研究員)の3人。読売新聞東京本社論説副委員長の野坂雅一さんがコーディネーターを務めた。

西城さんは、東日本大震災の被災地、宮城県南三陸町の出身。震災発生時はパラグアイで村落開発普及員として活動していたが、震災発生のニュースを聞いてすぐに帰国し、被災地の惨状を目の当たりにした。その後、いったんパラグアイに戻ったものの、「ふるさとのために何かしたい」という思いが強くなり、任期途中で日本に帰国。ピースウィンズ・ジャパンのスタッフとして、南三陸町の漁業再生のためのプロジェクトに取り組んでいる。西城さんは協力隊での経験について「日本では気づかないことに気づかされることが多く、そこからアイデアが広がっていくこともあった」と振り返る。

【写真】

「グアテマラでの協力隊の経験が、日本の農村が抱える問題に気づかせてくれた」という河内さん

河内さんは、森林経営と村落開発の隊員として2回にわたってグアテマラの農村に赴任。貧しいけれど豊かな暮らしを経験し、「日本の農村の方が危機的な状況にあるのでは」と思うようになり、帰国後は、新潟中越地震で被災した農村の再生・復興に携わってきた。その経験を生かし、現在は岩手県陸前高田市で被災者の支援に携わっている。そうした経験について、「いろいろなところで勉強させてもらっていると感じている。グアテマラでも日本でも、自分ができることよりも学ぶことのほうが多く、それがその後の活動に生きている」と語った。

協力隊経験者の可能性を生かして

【写真】

「コミュニケーションを図ろうとする努力が信頼関係の構築につながる」と荒木田さん

荒木田さんは、幼少期に十勝沖地震を体験したことからこの道に入ったという防災のプロ。これまで、スマトラ島沖地震によるインド洋津波やジャワ島中部地震の被害調査などを行う一方、中米6ヵ国を対象にコミュニティーの防災力を養うプロジェクトにも携わり、中米に派遣されている隊員とも連携しながら、防災の技術や知識を伝える活動にも取り組んだ。

開発途上国や東日本大震災の被災地で、隊員や協力隊経験者を間近に見てきた荒木田さんは、「被災地で大切なのは腹を割って話し、お互いを知り、ニーズを引き出すこと。協力隊経験者の皆さんは、異文化の中でコミュニケーションをしてきた経験が生きているのではないか」と話した。

「国際協力にチャレンジするときに何が背中を押すのか」という会場からの質問に対し、西城さんは「応募書類の記入は自分と向き合い、面接はたくさんの人と出会う機会。とにかく挑戦してみてほしい」、河内さんは「海外であれ国内であれ、現場ではいろいろなことを学び吸収できる。大切なのはそれを次にどう生かすかということ。一歩踏み出さなければ何も吸収できない」と回答した。また、海外で活動する上で必要なスキルとして、荒木田さんは「まずは対応力。すぐに結論を出さなくてもいいので、対話、コミュニケーションを辛抱強く繰り返してほしい」と訴えた。

【写真】

「協力隊の経験が、個人のみならず日本の貴重な財産になっている」と野坂さん

最後にコーディネーターの野坂さんは、「西城さんからはチャレンジ、河内さんからは学びの循環、荒木田さんからは対応力を学んだ」とトークを振り返るとともに、被災地で活動する青年海外協力隊OB・OGの姿を紹介し「海外での経験を持つ隊員は、それを財産として日本に還元している」とまとめた。