第15回JICA「理事長賞」表彰式を開催

2019年10月23日

10月8日、「JICA理事長賞」の表彰式がJICA市ヶ谷ビル(東京都新宿区)国際会議場で開催されました。これは、途上国の経済・社会の発展や人々の福祉・教育の向上などに寄与するとともに、日本の国際協力の評価を高めるなど、他の模範となるような著しい功績を収めた団体、あるいは専門家などの個人の功績を称え、表彰しているものです。15回目を迎えた今年は、58の団体と個人(団体22、個人36人)が受賞しました。

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表彰式に参加した「JICA理事長賞」受賞者の皆さんと北岡伸一JICA理事長(前列中央・左から6人目)

謝意とともに質の高い開発協力への決意を表明   

表彰に先立ち受賞者に感謝の意を表する北岡伸一JICA理事長

「JICAおよび日本の国際協力が世界で高く評価され、信頼されているのは皆さまのおかげです」。表彰式の冒頭、北岡伸一JICA理事長は、一昨年に策定されたビジョン「信頼で世界をつなぐ」を紹介するとともに、深い感謝の意を表しました。また、専門家として国際協力に長年従事され大きな成果をあげた方々、日本国内で途上国の人々の研修等に長年ご協力をいただいた方々、国際協力を通じて地域活性化や地域における国際協力の理解促進に貢献された方々を紹介すると共に、その功績を高く評価する旨、述べました。

さらに、国際協力を規模で評価する時代は20年前に終わったとも話し、「JICAはこれまでの日本の近代化や発展過程での教訓も含め、開発途上国の課題解決に少しでも役立つ方策を提起していけるように、より一層の力点を置いていきたい」と決意を述べました。

南アジアにおける農業や畜産分野で多大な貢献 

「日本の開発協力が評価されるのはここにいらっしゃる皆様のご尽力の賜物であることはいうまでもありません」と話すJICA南アジア地域シニア農業アドバイザーの平島さん

受賞者紹介と賞状贈呈に続き、受賞者を代表して、長年にわたり南アジア地域でアドバイザーとして貢献されてきた平島成望さんと、愛媛を拠点に四国からの国際協力に携わる特定非営利活動法人・えひめグローバルネットワーク代表理事の竹内よし子さんがスピーチに登壇しました。

平島さんは1990年代前半、JICA国別援助計画のパキスタン部会の座長を務められて以降、南アジア地域で実施されてきた多くのJICAの農業・農村開発協力にアドバイザーとして従事。同分野の発展に大きく貢献されました。

そうした長年の経験からJICAの開発協力をふり返り、「先進国の援助は自国の開発経験や価値意識を押し付けるような傾向も散見されるなか、途上国の要請に寄り添った日本の開発援助は一貫して効果的、かつ世界に誇れる格調の高いものであると信じております」と語りました。

とくに「農業経済」が専門である平島さんは、貧困層による資産形成に着目し、貧困削減効果の持続性を高めるよう努められてきました。例えばパキスタンでは、牛や水牛、山羊などの家畜が小規模農家にとって貴重な資産であるとともに、日々の生活での栄養源や現金の収入源として重要な役割を果たしています。平島さんがアドバイザーを務めた「シンド州持続的畜産開発プロジェクト」は、殺処分されていた子牛を乳牛として貧困層の農家が入手できる制度を取り入れるなど、農家の所得向上の実現に貢献されてきました。

「近年は若くて使命感に満ちた有能なJICA職員と共同でプロジェクトにあたることも多くなりました。これからも私の知見や専門性が必要であるなら、可能な限り協力させていただきます。結果、援助国の人々から感謝され、これまで以上に世界に誇れる開発協力の一助となれば、望外の喜びでございます」と、関係各位への感謝とともに新たな決意も示されました。

四国から世界へ 市民による身近な国際協力 

「私どもはJICA四国とともに四国4県の大学で国際協力論のセミナーも開きました」と紹介する「えひめグローバルネットワーク」代表理事の竹内さん

「皆様とこうしてお会いでき、喜びがじわじわと増しています」。こうスピーチを始めた竹内よし子さんは、特定非営利活動法人「えひめグローバルネットワーク」(EGN)立ち上げの大きなきっかけがJICA四国支部でのセミナーだったと紹介しました。

JICA四国の当時の支部長の「国際協力とは相手の人権を認め、守ることだと思う」との言葉に触発され、EGNは「同じ人間として対等な立場でサポートを必要とする人々の社会的・経済的自立を援助するため、市民参加による国際協力活動を実践すること」を大きなミッションとして掲げました。

以来、EGNは愛媛県と世界の人々がつながる拠点として、四国におけるJICAとNGOの連携促進や、四国4県のいくつものNGOが連携して活動できる環境の整備などを20年以上にわたって取り組んできました。

モザンビークの内戦終結後に武器を市民が自ら回収し、生活物資と交換して平和教育とともに武装解除を進める「銃を鍬へ」プロジェクトに感銘を受けた竹内さん。NGOなどへ放置自転車を無償で譲渡できるように条例の見直しを松山市に提言し、銃との交換物資となり得る放置自転車を2000年から複数回、ミシンや文房具などといっしょにモザンビークへと送りました。

また、フェアトレードによる支援もスタートさせ、「四国フェアトレード商品開発研修」を企画立案。JICAのNGO等提案型プログラムにも採用されました。「栄誉あるJICA理事長賞をいただけたのは私一人の力ではなくNGOの仲間たちやご支援くださる方々がいらしてくれたからこそ。すでにこの商品開発研修は今年春に完了していますが、今回の受賞を機に、いっそうの活動に励んでいきたい」と意気込みを語りました。