【10月4日~10日は世界宇宙週間】JAXAと連携! 東南アジアを中心に“宇宙人材”を育成

2021年10月5日

10月4日から10日は、宇宙技術の発展を進めていこうと国連が定めた世界宇宙週間です。

途上国開発支援のJICAと宇宙…なんだか縁遠いと感じる方も多いかと想像されますが、実は、現在、JICAが取り組む途上国へのさまざまな協力にも、宇宙技術が使われています。

例えば、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携し、人工衛星を活用して、南米ブラジルなどで違法伐採といった森林変化を監視するシステムの構築・運用をしています。また、東南アジア諸国連合(ASEAN)での洪水や火山噴火などの災害対策にも人工衛星からの情報が欠かせません。

【画像】

(左)JAXAの陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)のCG画像(画像提供: JAXA)
(右)衛星からのデータを活用して明らかになったブラジルの違法伐採現場を調査

JAXAの筑波宇宙センターを見学する途上国の宇宙技術関連の研究者ら

途上国でのさまざまな課題解決に向け、宇宙から昼夜・天候を問わず継続的に地上を観測している地球観測衛星からのデータ利用をはじめ、今後さらに宇宙技術の活用が増加すると見込まれており、いずれの国においても宇宙技術の担い手となる宇宙人材の育成が急務となっています。そんななか、JICAは東南アジアを中心に、宇宙人材の育成支援に取り組み始めました。

途上国で宇宙技術の開発を担う研究者に、日本の知見を伝える

宇宙人材の育成に向け、2019年から始まったのが、宇宙技術活用ネットワーク構想JJ-NeST(JICA-JAXA Network for Utilization of Space Technology)です。

JAXAと連携して、宇宙技術開発や利用を担う実務者・研究者の学びを支援

具体的には、JICAとJAXAが連携し、東南アジアを中心に、将来、自国で宇宙技術開発や利用を担う実務者・研究者の学びを支援しています。衛星の開発や観測データの利用、宇宙利用関連政策といったテーマでの研修を実施。日本の大学教員やJAXAの研究者、民間企業の実務者、政策担当者ほかから、最先端の技術や政策について学ぶ機会を提供しています。

また、研究を通じて宇宙技術関連の理解を深めるため、東京大学や政策研究大学院大学、慶應義塾大学、九州工業大学などの大学院への留学を支援しています。さらに、アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)や、その他の交流機会を通じ、研修や留学の支援対象国の関係者に日本の関係者を加えた人材のネットワーク構築・拡充も推進しています。

JAXAバンコク駐在員事務所でJJ-NeSTの実施に携わる小野敦所長は、「JICAとの連携により実現できたこのJJ-NeSTを通じ、我が国の衛星開発技術、衛星データ利用技術および宇宙政策などを参加者は学んでいます。そして、その学びが参加各国の宇宙利用のさらなる促進と定着につながり、地域の社会課題解決への貢献になればと考えています。また将来的には、我が国と参加各国の互いに利益をもたらす宇宙分野における研究開発協力にもつながることを期待しています」と語ります。            

日本との懸け橋になる宇宙人材が育つ

東京大学で人工衛星の活用などを研究するチャールストン・アンバタリさん

「日本での宇宙技術の活用はとても実践的で、フィリピンが目指すものと一致しています。フィリピンと日本は、台風や地震、火山の噴火といった気象事象や地理的な条件が似ています。防災などの面でも、日本の宇宙技術の学びはフィリピンでも応用できると考えます」

そう語るのは、JJ-NeSTの留学プログラムで今年6月に来日し、東京大学で学んでいるチャールストン・アンバタリさん。防災対策や産業のスマート化に向けた人工衛星の活用などを研究しています。「フィリピンに戻ったら人工衛星プロジェクトを主導し、宇宙技術利用に関する政策にも関わっていきたいです。将来は東南アジアの国々が協力して宇宙開発を行うためのネットワーク構築に貢献していけたら」と今後の抱負を話しています。

また、8月にベトナムから来日し、慶應義塾大学で衛星開発プロジェクト管理を学ぶグエン・ディン・チョウ・ミンさんは、「習得した知識や技術を活用してベトナムのさまざまな人工衛星開発プロジェクトを実施していきたいです。日本とベトナムの宇宙産業における協力関係の促進も目指します」と力強く述べています。

各国の宇宙機関、大学、民間企業とタッグを組む

世界を見渡すと、米航空宇宙局(NASA)が民間企業のSpaceX社と連携し、超大型ロケットや有人宇宙船の開発を成功させるなど、政府関連の宇宙機関のみならず、民間企業や大学、宇宙関連技術の利用機関との連携も今後の宇宙技術開発では不可欠です。そのため、JJ-NeSTでは、宇宙機関や各分野の省庁、大学、さらに民間企業の関連者による持続的な人的・組織的なネットワークの構築・拡充を目指し、途上国を含む多様なパートナーとも連携して国際会議やシンポジウムなどのイベントを実施する予定です。

人工衛星からのデータを活用した森林監視システムの運用について指導する日本人専門家(右)

JICA平和構築・ガバナンス部STI・DX室のJJ-NeST担当者は「衛星開発やロケット打ち上げに携わる宇宙機関やアクターのみならず、衛星データの活用推進や利用システムの開発に携わる人材の育成や交流が、SDGs等の地上の社会課題解決には大切です」と述べます。そして、JICAが目指す宇宙分野での協力について、「宇宙関連技術はJICAにとって地上の課題を解決する際の有用なツールです。森林・自然環境保全、防災、都市開発、農林水産振興をはじめ、多様な社会経済活動に従事するさまざまなバックグラウンドをもつ人材が、宇宙関連技術の活用も視野に入れ、取り組みを展開していくことが、SDGsの達成ほか、多様な課題解決には重要と考えています。宇宙関連技術の活用が容易にできるようJJ-NeSTを通じ、人材の育成と人的ネットワークの形成を推進したいです」と意気込みを語ります。