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―ミャンマーにおける麻薬対策・貧困削減の取り組み
2007年12月12日
公開セミナーの様子(写真右、吉田実専門家)
JICA公開セミナー「ミャンマーにおける麻薬対策・貧困削減の取り組み」が12月6日、東京広尾の地球ひろばで開催され、1999年から今年10月までの8年間、JICA専門家として活動した吉田実氏が、北シャン州コーカン特別自治区でのケシ栽培撲滅の経緯や、ケシ代替作物としてのソバ栽培の取り組みなどを報告しました。セミナーには、ミャンマーでの麻薬対策や貧困削減、ソバ栽培に関心の高い市民、NGO関係者、マスコミ関係者ら約50名が参加しました。
吉田専門家が派遣されたコーカン特別区は、中国との国境に位置し、コーカン族を含め複数の少数民族が居住し、150年以上にわたり、アヘンの原料となるケシが栽培されていました。しかし、ミャンマー中央政府と紛争状態にあったコーカン族は1989年、政府との和平協定に合意。特別区として一定の自治が認められた後、ケシ栽培の撲滅を約束し、麻薬生産取締まりの法的規制を実施しました。吉田専門家は「麻薬に依存しない社会を作るためには、法的規制と代替作物開発が、車の両輪のように働かなければならない」と、麻薬撲滅の道筋を説明しました。
公開セミナーでの展示(ソバ焼酎、ソバクッキー、コーカン靴など)
代替作物の導入を切望していたミャンマー政府の強い期待を受け、冷涼な気候に適し、技術的に栽培が容易なソバの栽培事業が始まったのが1997年。吉田専門家は、ソバ栽培事業が麻薬撲滅に果たした役割について、「農家にとって手間とリスクの少ない現金収入源であっただけでなく、政府にとっても住民と麻薬撲滅の交渉を進め、彼らのコミットメントを引き出すのに役立った」と話しました。国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、ミャンマーでのアヘン生産量は1993年の約1800トンをピークに、2003年には約800トン、2007年には約400トンと減少傾向にある中、コーカン特別区は2003年にケシ栽培の撲滅を達成しました。
しかし、「麻薬撲滅を達成した一方で、そこには貧困があった」と当時を振り返る吉田専門家。2003年には、深刻な食料不足に加えて、4000人以上のマラリア患者が発生し、270人以上が死亡、小学校の3分の1が閉校を余儀なくされる事態が生じました。吉田専門家は、「ソバ栽培事業を中心に活動していたが、さらに現地の様々なニーズに対応した地域開発的支援が必要」と認識し、新たに立ち上げられた「コーカン特別区麻薬対策・貧困削減プロジェクト」の形成調査に携わりました。
2005年に開始されたこのプロジェクトの特徴は、危機的な貧困状況を緩和するための緊急支援と、住民の自立的発展を支援する中長期支援の2つのコンポーネントがあることです。緊急支援として、食料不足を解消するために陸稲やトウモロコシの種子と肥料の配布、保健分野では蚊帳の配布やモバイル(移動)クリニックの実施、さらに43kmに及ぶ幹線道路改修などのインフラ整備が行われ、「危機的な状況は緩和されつつある」ということです。
「コーカン地区では麻薬僕滅の状態を維持している。しかし、ケシ栽培再開を抑制するには努力が必要です。これからが正念場」と吉田専門家は今後のプロジェクト活動へ強い期待を示しました。