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「マニラ港 航路及び錨泊地」海図改版いよいよ完成へ
2008年04月14日
海上保安庁測量船による実習など研修員受け入れも長年実施してきました
7000以上もの島からなる群島国家フィリピンでは、船は重要な交通手段です。しかし、複雑に入りくむ沿岸線の航行には常に座礁の危険性がともないます。
その航行の安全を守るために、23年前、JICAはフィリピンで海図作製の技術協力を開始し、今日までその時代の求めに応じた協力を行ってきました。専門家は、代々海上保安庁海洋情報部職員が務めましたが、この3月、最後の長期専門家・坂本平治さん(青森県三沢市出身)の帰国をもって本協力を終了しました。数か月後には日本の海図/電子海図技術を受け継いだフィリピン政府製「マニラ港周辺の電子海図改版」が東アジア水路委員会を通じて間もなく国際社会にお目見えする予定です。
2年間の活動について語る坂本平治専門家
海図は、経緯度線や水深、岩礁、浅瀬、海岸線、潮流・海流、港湾航路等々、様々な情報を集約した海の案内図です。水面下の目に見えない危険物や障害物を回避するために欠かせません。このため、航海用海図は世界中の航海者が共通利用できるよう各国政府機関が国際基準に準じて作成し、責任をもって発行しています。
しかし、フィリピンでは、50年も前に他国の協力で作成された海図が更新されずに利用されてきました。このため誤差が多く、旧式のヤード・ポンド法が使われるなど航海者にとり不便で時には危険をもたらすものとなっていました。そこで、JICAはフィリピン周辺の海図の精度向上を支援しようと、1984年から人材育成を柱とした技術協力を開始。手作業による潮汐観測や水路測量法を伝授する専門家派遣より始まった協力の集大成として2006年に海図/電子海図の補正に関する技術能力向上を目的とし「航行安全のための水路業務能力強化プロジェクト」が開始された。
地図上のわずかな歪みが海上では100メートル以上もの誤差となります。今回のプロジェクトの長期専門家として派遣されていた坂本さんは現地の技術者とともに、年間を通じて朝晩の潮汐の変化の観測、水路の水深や障害物の測量を行い、そのデータをもとに現行の海図を丹念に修正する編集作業にとりかかってきました。プロジェクト開始からわずか半年後、測量艇の座礁事故により水路測量システムの主力機器マルチビーム音響測深機が破損し、約7カ月間、水路測量が中断するという事態に陥りました。
「事故を知ったときはしばらく言葉が出ませんでした。でも事故のことを責めても状況は好転しない。皆で解決策と事故防止策を必死で考えました」と坂本さん。破損した測深機の鉄製カバーに代わる類似品を現地でつくり、また割れた部品を複数の接着剤を組み合わせて海水や水圧に耐えられるよう貼りあわせるなどの工夫を重ね、性能を当初と同レベルまで回復させました。坂本さんは「互いの信頼感が深まり、事故対応をバネに同僚たちのモチベーションが急激に高まっていくのを感じた。結果としていい技術移転になった」と言う。その後の彼らの奮起によりプロジェクトは7カ月間の遅れを取り戻し、当初目標を上回る測量成果を上げることになったのです。
坂本さんは「海図作製ほど地味で根気のいる仕事はない」と言います。地道ながら、フィリピン周辺の海図作製の仕事はこの国の経済発展にとり不可欠なもの。とはいえ、プロジェクトが手がけた改版は全178の海域図のうちわずか5枚。「経験こそ力なり。そこから学ぶことのできる仕事です。彼らの頑張りに期待したい。今後私は、彼らを研修員として受け入れる側になります。違った形で彼らと関われるのが楽しみです」と笑顔を見せた。