ジョブコーチが障害者の就労を支援(マレーシア)

−ユニクロでの雇用もスタート−

2012年10月11日

企業と障害者をつなぐジョブコーチ

ジョブコーチ養成の講習の様子。作業を細かな動作に分析する「職務分析の方法」を学ぶ

マレーシア政府は1980年代から「地域に根ざしたリハビリテーション(Community Based Rehabilitation: CBR)」の概念を取り入れ、学校に行けない障害のある子どもたちを支援するなど、地域障害者福祉サービスに取り組んでいる。障害者が置かれた状況は改善されつつあるが、法整備の遅れや自立支援の制度が十分でないといった理由から、いまだ多くの障害者が、就労の能力があるにもかかわらず、社会参加の機会を得られずにいる。

JICAは2009年9月から3年間、マレーシア社会福祉局と共に「障害者の社会参加支援サービスプロジェクト」を展開してきた。障害者の雇用を支援するためのジョブコーチの養成やジョブコーチ養成研修の講師の育成、制度の設計・整備などを通じ、障害者の雇用・自立を支援し、社会参加を促進することが目的だ。

「わかりやすい作業指導」の演習で、理解しやすいマニュアルや作業の補助具を作る

ジョブコーチとは、障害者が円滑に就労できるよう、仕事を見つけてから定着するまでを個別に支援する専門家のこと。職場の上司や同僚と障害者の間に入り、職場内での課題を見つけて改善し、障害者が職場に適応できるようになった段階で、支援を終了する。プロジェクトではジョブコーチを養成するために5日間の講習を実施し、3年間で453人のコーチを養成した。ジョブコーチの多くは、障害者を支援するNGOに所属しており、受講後は障害者支援の一環として、コーチの業務に当たっている。こうしたジョブコーチの支援で、これまで126人の障害者が就労を果たしている(注1)。

「ユニクロ」への就労が助成金制度適用第1号に

ジョブコーチの支援による障害者就労をさらに促進し、継続的にサービスを提供するため、マレーシア政府は2011年12月にジョブコーチ助成金制度をスタートさせた。これは、障害者の就労を支援するジョブコーチのサービスに対して、社会福祉局が助成金を支給するというもの。その助成金適用第1号となったのが、日本の株式会社ファーストリテイリングが展開するカジュアル衣料品店「ユニクロ」マレーシア店のケースだ。

軽度知的障害と半身まひの障害を持つAさんは、試用期間を経てユニクロのワンウタマ店のスタッフに

ユニクロは障害者の雇用に積極的で、障害者雇用率は7パーセント以上を達成するなど、日本国内でも飛び抜けている(注2)。プロジェクトでは昨年、ジョブコーチの講師を育成するために研修を日本で実施し、ユニクロの店舗を視察し取り組みを学んだ。それがきっかけとなり、マレーシア国内の5店舗のうち4店舗に、ジョブコーチの支援で知的障害者4人が就労した。

マレーシアでは近年、CSRの一環として障害者雇用を始める民間企業が増えている。中には、社員にジョブコーチ養成の講習受講を推奨する企業もあるなど、ジョブコーチの支援による障害者就労への期待は高まっている。ジョブコーチ助成金制度の支援を受ける企業数は、制度スタートから10ヵ月を経た現在、日系2社、日系以外の外資系3社を含む13社に増えている。

同プロジェクトは今年8月でいったん終了となったが、9月から3年間の第2フェーズがスタート。第1フェーズでは首都近郊が中心だったジョブコーチのサービスを、今後、全国へ展開していく。


(注1)労災で障害を負った人の職業復帰のために労災機構が実施したジョブコーチの支援は含まれない。
(注2)現行法で義務づけられた民間企業の障害者雇用率は1.8パーセント。


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