日本とベトナムを結ぶハノイ工科大学プロジェクト1期生が起業

2012年11月6日

ITイベントの会場で、開発中のゲームアプリについて説明するトゥンさん(中央)

日本とベトナムを結ぶITエンジニアを育成するJICAの「ハノイ工科大学IT高等教育人材育成プログラム」。第1期生のタ・ソン・トゥンさん(24歳)ら4人が4月、ソフトウエア開発会社「リッケイソフト」(本社・ハノイ市)を設立した。

10月10〜12日には、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されたITイベント「ITpro EXPO2012」に出展。トゥンさんは「日本企業とのビジネスで成功を収め、将来的には、欧米の企業とも取引できるグローバルな企業へと成長させたい」と意気込んでいる。

日本の発展にも貢献するITエンジニアを育成

ハノイ工科大学IT高等教育人材育成プログラム(2006〜2014年)は、日本語や日本の商習慣を理解し、ITの開発現場で日本人エンジニアと専門用語でコミュニケーションできるエンジニアを育成するのが目的。技術協力「ハノイ工科大学ITSS教育能力強化プロジェクト」と円借款事業「高等教育支援事業(ITセクター)」の二つで構成され、技術協力では、経済産業省が策定したIT技術者の実務能力指標「情報処理技術者スキル標準(ITSS)」を基に、同大学のカリキュラム、シラバス、教材を開発するとともに、教授法を移転している。また、円借款事業では、機材の購入や日本語教育、日本の大学(立命館大学、慶應義塾大学、会津大学)への留学生派遣を行っている。

トゥンさんは、同プログラムの第1期生として、2006年9月にハノイ工科大学に入学。2009年4月から、立命館大学情報理工学部に留学し、立命館大学の学位を取得した。帰国後、ベトナム最大手のIT企業「FPT株式会社」に入社。日本への留学とFPTでの経験を生かし、「リッケイソフト」を創業した。

若さと日本語力を生かして

リッケイソフトのスタッフ。平均年齢は23歳と若い

社名の「リッケイソフト」は、起業メンバーが留学した立命館と慶應義塾にちなんで命名。主な事業は、スマートフォンやウェブのアプリケーションの開発、ウェブサービスだ。ウェブサービスでは、ハノイのレストランやスポーツ施設、観光スポット、イベント情報などを紹介するオリジナルサイトを開発、運営。ユーザーの属性や好みなどを基にお薦めのレストランなどの情報を提供する「推薦システム」を導入。これは、立命館大学への留学で身に付けた知識と技術を活用したものだ。また、8月には、スマートフォンの電子辞書アプリ「Rapidict」をリリース。電子辞書にはベトナム語、日本語をはじめ、英語、ドイツ語、フランス語、韓国語など、20言語が収容されており、約1万人がダウンロードしている。現在、スマートフォンのゲームアプリも開発中だ。

同社の強みは、従業員のうち、3人が日本語能力試験の最高レベル「N1」に合格していること。「N2」にも5人合格しており、日本語能力にたけたスタッフが多い。国家ITコンテスト、同数学コンテストなどに入賞し、無試験でハノイ工科大学に入学した優秀な人材も多く、すでに日本企業8社と取引をしている。従業員は創業半年で28人にまで増えた。

オフショア開発の有力国

今回のITイベントでは、海外委託先として注目されるベトナムパビリオンが設けられた

『IT人材白書2012』(独立行政法人情報処理推進機構刊)によると、ベトナムは、日本からの発注先として、発注件数ベースで中国に次いで第2位となっており、日本語教育が進んでいることなどから、オフショア開発(海外委託)の有力国として注目が高まっている。

今回のITイベント出展にあたり、トゥンさんは一人で来日。3日間、ブースを守り、約70人と名刺を交換した。イベント後の1週間は、約10社を回って商談に臨んだ。トゥンさんは「手応え十分。リッケイソフトの事業は、現在、8割が受注で、2割がオリジナルのアプリやシステムの開発ですが、アジアきっての先進国、日本から学んだ勤勉さや強い責任感、確かな技術を武器に、その比率を逆転させ、世界に通用する企業にしていきたい」と話している。