「Suica」の技術がバングラデシュへ

−都市交通をより快適に−

2013年2月21日

非接触ICカード技術方式(Felicaシステム)は、ソニー株式会社が開発した、読み取り端末にICカードをかざすだけでデータがやりとりできる技術。日本ではSuicaやPASMOなどに採用され、都市部の公共交通機関などで使われている。このシステムが、JICAの「ダッカ都市交通料金システムICT化プロジェクト」により、このほどバングラデシュの国営バス会社に初めて導入された。

ICカードが交通混雑解消にひと役

ICカード導入前のバス乗り場。乗車時にチケット確認や運賃支払いをするため、出発までの時間がかかり、混雑の一因に

バングラデシュは、1990年以降、安定して比較的高い経済成長を続けているが、それに伴い人口が都市部に集中し、都市化も急速に進んでいる。特に首都ダッカを抱えるダッカ県の人口増加は著しく、近年は交通混雑が深刻な社会問題となっている。バングラデシュ政府はこの交通混雑を軽減するため、鉄道やバス路線、地下鉄など、大量輸送を可能にする新たな都市交通の整備を進めている。さらに、既存の公共交通機関の利用を促進するため、バスの乗降、バスからバスへの乗り換えをスピーディーに行える公共交通機関共通の料金徴収システムを導入することを決めた。

JICAはバングラデシュ政府の要請を受け、2012年4月にFelicaシステムをバングラデシュの国営バス会社の2路線に導入。2万6,000枚のICカードを供与し、運用をスタートさせた。同時に、ICカード技術の導入はバングラデシュでは初めての試みのため、新聞広告やテレビコマーシャルによるPRのほか、日本とバングラデシュの国交樹立40周年(2012年)の記念事業の一環としてICカードのセミナーを開催するなど、カードの知名度アップと利用者の獲得にも力を入れた。

カードを端末にかざすだけ。スムーズに乗車でき、時間の節約にもつながった

当初、ICカードがダッカの人々に受け入れられるのかという不安もあったが、導入後は、「カードを見せればどの路線にも乗車できるので、非常に便利」「これまでのように乗車前に列をつくってチケットを買う必要がなくなった」「現金のやりとりがなく、時間の節約にもつながる。時間通りに勤務先に行けるようになった」など、利用者から肯定的な意見が数多く寄せられた。利用者の数も、プロジェクトが終了する10月末には1万8,000人に達した。

運賃収入大幅増の成果も

ICカード導入前のチケット売り場。チケット売り場であることがわかりにくく、不便だった

ICカードを導入した成果としては、これまで横行していた不正乗車がなくなり、運賃収入が大幅に増加したことが挙げられる。また、特に女性のICカード利用が進んでいることを確認できたことも大きな収穫だ。バングラデシュは国民の約9割がイスラム教徒であり、女性は見知らぬ男性との接触を嫌う社会的な傾向がある。しかし、ICカードを使えば、チケット購入の際に見知らぬ男性に囲まれて並んだり、現金のやりとりをする必要がないため、女性の精神的な負担が軽減し、公共交通機関を利用しやすくなると予想される。バングラデシュでは最近、政府の指示で女性専用バスが実現し、公共交通機関を利用する女性が増えているが、ICカードも、そうした女性の社会進出を後押しするものとして期待されている。

ICカード導入後のチケット売り場。ひと目で売り場とわかるため購入しやすくなった。ICカードの発行、料金のチャージもこうしたチケット売り場で行われている。

国営バス会社はこの結果を踏まえ、今後もICカードによる料金システムを継続し、ダッカ首都圏のほぼ全バス路線で、ICカードが利用できるバスの走行を目指すことを決めた。バングラデシュ政府は、いずれは公共交通機関として円借款での整備が予定されている高速鉄道(MRT)にもICカードを導入し、利便性の向上を図る予定だ。