平和で愛される緑と黄金の都市づくり(ミャンマー)

−ヤンゴン都市圏開発マスタープランの最終成果を報告−

2013年4月2日

ミャンマーの旧首都ヤンゴン市は、人口約510万人を抱えるミャンマー最大の商業都市だ。周辺の六つのタウンシップ(行政区)を含めた1,500平方キロメートルに及ぶヤンゴン都市圏の人口は、2040年には1,000万人を超えることが予想されている。

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公園都市といわれたヤンゴン市の中心部に輝くスーレー・パゴダ(寺院)。奥に見えるのがヤンゴン川

しかし、ヤンゴン市では、長期にわたる諸外国からの投資や技術支援の制約により、経済や社会開発が停滞。都市生活を支える社会基盤インフラの老朽化が進んでいる。また、都市計画に関連する法令の整備や、統計資料、地形図データの更新なども進んでおらず、早期の整備が不可欠な状況となっている。

ヤンゴンの発展はミャンマーの発展

「ヤンゴンの発展はミャンマーの発展といっても過言ではない」と黒柳理事

こういった背景を受け、JICAでは、2012年8月から「ヤンゴン都市圏開発プログラム協力準備調査」を開始し、2013年3月までヤンゴン都市圏の中・長期的で包括的な開発ビジョンの提案と、ヤンゴン都市圏開発マスタープランの作成を進めてきた。

3月21日、このマスタープランの完成に当たり、日々変化するヤンゴン都市圏の現状と開発構想の紹介を目的に、JICAは、セミナー「ヤンゴン都市圏開発を構想する」をJICA市ヶ谷ビル国際会議場(東京都新宿区)で開催した。ヤンゴン地域政府開発担当大臣も兼任するラ・ミン・ヤンゴン市長をはじめ、ミャンマーからヤンゴン都市圏開発にかかわる各セクターの関係者12人が来日。日本の関係省庁や開発関係者、企業の関心は高く、会場は200人近くの参加者の熱気に包まれた。 

開会のあいさつに立った黒柳俊之JICA理事は「JICAとミャンマーの交流の歴史は非常に古い。従来は、緊急援助や人道的支援が中心だったが、ミャンマーの民主化が進むとともに、援助の質・量も急拡大し、インフラ整備をはじめ非常に幅広い援助を展開している」と述べた。

東京の都市開発の教訓を生かす

「セミナーが、日本の投資家の皆さんとのさらなる協力関係構築につながると確信している」と語るラ・ミン市長

続いて、ラ・ミン市長による基調講演「ヤンゴン市開発の課題と展望」が行われた。駐日ミャンマー大使を務めた経験もある同氏は、親日家としても知られている。講演では、ヤンゴン市建設の歴史的過程に触れた上で、現在のヤンゴン市が抱える問題について説明。インフラ整備や都市開発など7項目に及ぶヤンゴン市開発委員会の努力目標を挙げ、「より大きな経済都市圏の形成に向け、ヤンゴンの都市環境整備に向けたインフラ整備や社会開発は喫緊の課題となっている。中でも優先すべきは、ヤンゴン地域の上下水道の整備だ」と訴えた。

次に、JICAのヤンゴン都市圏開発プログラムの国内支援委員会の委員長を務めている、日本学術会議会長の大西隆東京大学工学研究科教授が「ヤンゴン都市圏の発展と東京の教訓」と題した講演を行い、東京の都市開発の成功と失敗を例に、都市の膨張の抑制、開発圧力の誘導、保存と再開発(都市開発の戦略)などについて説明した。

東京の都市開発を紹介する大西教授(左)と、マスタープランの概要を説明する山田総括

続いて、ヤンゴン都市圏開発プログラム協力準備調査団の総括を務める日本工営株式会社開発事業部の山田耕治事業部長代理がマスタープランの概要を説明。2040年に向けた開発ビジョンについて、民主化が進むミャンマーの平和と、市民から愛されるヤンゴンの都市像を目標に、緑豊かな自然環境と市の中心部に輝く寺院、シュウェダゴン・パゴダの黄金の光をイメージしていることを紹介した。また、これを支える4本の柱として「国際ハブ都市」「快適に暮らせる都市」「インフラの充実した都市」「良好な統治された都市」を挙げ、中心ビジネス地区(CBD)と、複数の副都心や緑の島(公園緑地)を配置する分散型都市を整備する構造が最適と述べた。

シュウェダゴン・パゴダの仏塔の高さは100メートル、基底部は周囲433メートルと巨大だ

セミナーの後半では、ラ・ミン市長も喫緊の課題として挙げた上下水道・都市排水セクターの現況と課題を、上下水道改善プログラム協力準備調査団の総括を務める、株式会社TECインターナショナルの百瀬和文特任理事が紹介。また、廃棄物セクターの現況と課題については、ヤンゴン市開発委員会の汚染管理・清掃局長であるタン・ルウィン・ウー氏から、都市交通セクターの現況と課題については、ヤンゴン都市圏開発プログラム協力準備調査団(交通計画)の総括を務める、株式会社アルメックの庄山高司代表取締役から発表があった。

ミャンマーの発展に貢献

セミナー終盤の質疑応答では、会場から、ヤンゴン市南東部に位置するティラワ経済特区に新しく建設される港湾の詳細や、取水地の選定などについての質問があり、担当者が丁寧に対応した。最後に、JICA経済基盤開発部の三浦和紀部長が参加者全員に謝辞を述べるとともに、「JICAとしても、皆さまと共に、日本全体としてミャンマーの発展に貢献していきたいと考えています」と締めくくった。

ラッ氏は、副都心の候補地についてはポテンシャルを踏まえて協議を重ねる必要があると語った

既に、3月から「ヤンゴン都市圏開発プログラム協力準備調査」のフェーズ2が始まっている。上下水道・都市排水、都市交通などのマスタープラン調査が進められている一方、緊急性の高い優先事業については、資金協力案件としての準備も進めている。5月には同様のセミナーをミャンマーで開催することが予定されており、JICAは、ヤンゴン都市圏が持続的により良い都市環境を形成できるよう、引き続き協力を行っていく。

ヤンゴン市開発委員会で都市開発アドバイザーを務めるチョー・ラッ氏は、JICAとのプロジェクトについて「日本と共に、ここまでとてもいい仕事ができて光栄だ。マスタープランの策定の過程で双方の意見が食い違うことはあったが、すべてはヤンゴン市のさらなる発展のため。引き続きプロジェクトに取り組んでいきたい」と意欲を見せた。